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8 新しい友達

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 叶矢とスコルピー、帰宅。ついでに、龍斗も瀬戸口宅に遊びに来た。
「お邪魔しまーす。」
「……お腹空いた。」
「もう?何食べる?」
「あの、あれ。白くて長いやつ。」
「バナナ?」
「それ。」
叶矢はスコルピーをテーブルに乗せ、台所からバナナを取りにいった。龍斗がソファに座る。
「俺は島田龍斗。自己紹介遅くなってごめんな。お前は、スコルピーだっけ?」
「うん。……きょうやは、嘘つき?」
「まぁ……そうだな。あいつは嘘つきだ。」
「嘘つきなのに友達なの?」
「悪いやつじゃないからな。それに、あいつは俺しか友達いないから。かわいそうだろ、ひとりぼっちは。」
「友達いないの?」
「いないねぇ~。」
「聞こえてるよ。」
叶矢が戻ってくる。龍斗の隣に腰を下ろした。
「あ、嘘つきだ。」
「嘘つきじゃないよ。どちらかと言えば、偽善者。」
「同じようなもんだろ。」
「ぎぜんしゃ?」
「良い人のふりしてる人。」
「えー、嘘つきだ。」
「失礼だなぁ。はい、バナナ。」
叶矢は、バナナを剥いてスコルピーに渡した。そのままかぶりつく。
「……バナナ食うんだな。」
「うん。なんでも食べるらしいよ。」
「すごいな、お前。……で、いつどういったシチュエーションで拾ったんだ?」
「買い物帰り。道端に倒れてるのを泉歌が見つけたんだよ。」
「ふーん。すげぇな。俺たちの幼稚園にもいたよな、人外生物。」
「居たねぇ。」
「……そうなの?」
「狼男だったっけ?昼間は人間と見た目変わらなかったねぇ。」
「いい奴だったしな。」
「おおかみ?」
「うん。大型肉食動物だよ。」
「肉食動物……?」
スコルピーの動きが止まり、目が遠くなる。
「だ、大丈夫か?」
「……。」
叶矢が、スコルピーのバナナを齧った。
「あ、何してんの。」
「食べないなら、僕が食べちゃうよ?」
「すーのだ。」
龍斗が笑った。
「お前ら、ちょっと似てんね。」
「そうかな?」
「似てない。」
スコルピーは、そっぽを向いてバナナを食べた。
「……いつまで猫かぶるつもりなんだよ、叶矢。」
「んー?……スコルピーが、心を開くまでかな。」
「相手が開くまで自分は開かねぇってか。相変わらずだな。」
「……その方が過ごしやすいからね。」
「ふーん……。」
スコルピーは、2人の会話を不思議な気持ちで聞いていた。
猫をかぶるで何だろう?
心を開くって何だろう?
地球は、難しいなぁ……。


To be continued…
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