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21 アーモンドあげる

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 スコルピー、叶矢、帰宅。
「はあ……。」
「……きょうや、アーモンド食べる?」
「……食べる。」
ソファに寝そべる叶矢の上にアーモンドの袋を持って来た。
「あー。」
「はい、どうぞ。……すーも食べたい。」
「食べればいいじゃん。」
「あーん。」
「えー……はいどうぞ。」
スコルピーの小さな口にアーモンドを押し込む叶矢。
「あ、今日って何日だっけ。」
「#△%◎……26日。」
「あぁ、じゃあ、もうすぐテストだわ。」
「そなの?」
「うん。だから、明日から泉歌と居た方がいいかも。家にいても俺の部屋にこもるだろうし。」
「そうなの?うーん。分かった。」
「……泉歌と仲良くしてね。」
「すーとせんかちゃんは仲良しだよ。」
「そうだよね。うん。」
「きょうやぁ。」
「何。」
「アーモンドあげる。」
2人は、ひたすらにアーモンドを食べさせ合った。
「……自分で食べた方が早くね?」
「いやだ。すーがきょうやに餌をやりたいの。」
「餌をやるって言うな。」
「んふふ~。」
2人の心の距離が近付いているのは、紛れも無い事実だった。それが、家族としてなのか、友達としてなのかは、分からないけれど。
 家の扉が開く。
「ただい……ま。」
ソファで眠る叶矢と、その胸の上で眠るスコルピーを見て、泉歌は目を伏せた。電気を点ける。
「……。」
「ふ、わぁ……あ、泉歌。おかえり~。スコルピー、起きて。」
「んー。」
スコルピーをつまんで、机に置く。
「あ、泉歌。俺、もうすぐテストだからさ、明日から泉歌にスコルピーの世話を任せてもいいかな。」
「え、あ、わ、分かりました。」
「うん、よろしくね。じゃ、夜ご飯できたら呼んでね。」
叶矢は、自分の部屋に戻っていった。泉歌は、これはチャンスだと、一瞬だけ思った。今この間に、スコルピーと自分の間を埋めれば、兄から、奪い取れるかもしれない。そんな汚い感情と同時に、純粋な嬉しさも出てきた。これから数日は、長い時間を共にできる。一緒に居られる。
「すーちゃん。」
「ん?」
「何が食べたいですか?」
「うんとねぇ……鶏肉!」
「と、鶏肉?分かりました。」
「今日のお弁当に入ってたやつ、美味しかった!鶏肉のやつ。」
「そ、それでですか?」
「うん!」
「い、一生懸命、作りますね!」
「うん、ありがとう!!」


To be continued…
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