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53 もうひとりじゃない

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 スコルピーは、2人に近付いた。
「すーの、エヴァーラスティンでの家族は誰もいない。でもね、地球の家族は、ここに居るよ。そうでしょ?」
泉歌は大きく頷き、叶矢は微笑んだ。
「だから、もうひとりぼっちじゃない。」
「それは、私もです。私の本当の家族はここには居ません。でも、2人が私の家族です。」
「……うん。俺もそうだよ。」
3人は、静かな気持ちで寝室に入った。泉歌の、スコルピーと叶矢で寝て欲しいという言葉に素直に従い、2人はベッドに入った。いつもみたいに、お腹の上にスコルピーを乗せる。
「あのね、あと、他にも思い出したことがあってね。家族みんなのこと大好きだったんだけど、1番上のセルペンティスとは特に仲良しだったの。セルペンティスが大好きだった……セルペンティスときょうやが、よく似てる……。」
「……だから、俺の事が好きなんだ。」
「ううん。違う。……最初はそうだったかもしれないけどね。」
「……。」
「セルペンティスに似てるって本能が思って、きょうやに興味を持ったのは否定できないよ。でも、きょうやの事を好きになったのは、きょうやだからだよ。きょうやが優しくて、あったかいから、好きになったんだよ。それに、セルペンティスは家族として大好きだったけど……きょうやへの大好きは、家族としてじゃないと思うんだ。」
「……そう。」
「うん。すーが女の子だったら、きょうやの彼女になりたい。……家族じゃ、そんなこと思わないでしょ?」
「うん……思わないね。俺も、すーが女の子だったら、彼女にしたいと思うよ。」

もう、何も起こらない。
秘密は話した。
記憶は戻った。
あとは、思い出を積み重ねるだけだ。
楽しく笑って、みんなで平穏な日々を送ればいい。
好きっていう気持ちは、知っているのだから。
お互いが、お互いを好きだと自覚していれば、きっと幸せに過ごせる。
家族の幸せを願っていれば、きっと幸せに過ごせる。
これ以上、不幸を知らなくていい。


そう思っていたのに。


To be continued…
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