傍観していたい受付嬢

湖里

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受付嬢としての仕事?

転生者が欲しい

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「ねぇ?何してくれんの?」
明らかに怒気をはらんだ声で私に声をかけて、炎の矢をチラつかせてくる。
こんなに怒っている人は久しぶりに見たなぁ。
普通じゃない大きさの炎の矢に口元が引きつるが、コチラもうまい具合に風の魔法を発生させて吹き飛ばせる用意をする。
そしてその間に外が真っ暗な体育館の魔法をどうにかしないといけない。
「【術破り】」

どんな魔法でも解くことのできる自分が作ったものである。
バチンッ___
かといって、すべての魔法に通用するわけではない。ヒビは入ったものの、解くことまでは至らなかった。

「ねぇ、もう、君邪魔だよ?」
フワリと私の前に来たかと思うと足で蹴られて、とばされそうになるがグイッと私のドレスを掴まれて、もう一発いれられる。
「ッカハ……。」

頭がグワングワンと揺れる中で、魔法の詠唱をしようとすれば口を抑え込まれた。
私が詠唱をしないと、魔法が使えないと思われているみたいだが舐めるなよ?

___炎
思いっきり私の周りに炎を灯せば、予想外だったのかかなりの距離を取った。
「ッチ、……腐っても受付嬢かよ。」
「【身体強化】」
動揺していることを感じて、体を強くして攻撃すれば案外近距離は苦手らしい。

「大体、貴方はなんの為に私達に害をなすのですかっ!桔梗を置いて消えるし!どこのどちら様ですのっ!?」
大きな声で怒鳴り散らせば、相手の動きがピタリととまった。

なんか言ったかな?
さっきまで殺気や怒気が体中から溢れ出ていたのにそれがなくなった。
「ふ、ふはは、ハハハハ……、けっさくだ。こんな事があるなんて…、人生捨てたもんじゃないよ。」
「は?」

先程の様子から一変して、愛おしいものでも見つめるかの様なとろける目で私のことを見てくるムラサキはなんだ?
変わりすぎて気持ち悪い。

もう一度、身体強化をして背後に回って蹴りを入れれば背中に当たったものの振り向きざまに魔法をみぞおちに入れられる。

___レオディオ!コーリド!まだ来れないのっ!?
胃の中のものを出しながら、念話をしてみる。

___大丈夫っ?!ミッシェルあともう少しだよ。
コーリドからの連絡をもらってあと一息だと前を向く。

「【転移】【氷の剣】」
2連チャンで魔法重ねて、ムラサキに当てれば相手もどこから出したのか炎の剣で対応してくる。

「【クレイジードール】」
聞いたことのない魔法の詠唱をされて、距離を取れば周りから人形が出てくる。
それぞれが何らかの武器を持っており、私に向かって攻撃してくる。

「【炎の柱】」
人形たち全てを炎で燃やしたが、出てきた炭からまた人形が構成されていく。
「無駄だよ、その人形は壊しても、壊してもまた元通り。」

ステージの上に立っているムラサキがニヨニヨしながらこちらを見つめてくる。腹立つ!
壊したら、元通りになるのならば壊さなければいい。

しかしこのままだと、ムラサキを狙えない。
動きを止める!
「【永久凍土】」
体育館全体を氷で覆ってしまえば、不意をつかれた人形はすべてが氷に覆われた。
ムラサキの足元も氷で固められている。

「終わりだっ!!」
力を振り絞ってムラサキに向かって一歩踏み出した
______いや、踏み出そうとした。


足が動かず下を見れば、今まで保っていた糸がプツリと事切れたように私の身体は地面に倒れた。
「…っ、カハッ………、ぅ。」
何かに縛られているわけではないのに、体が重い。だるい。
まさか、

「魔力切れ?みたいだね、ミッシェル。」
私の思考を妨げるように入ってきたムラサキは、私を抱き上げて俵持ちにする。
「僕は君が欲しいんだよ。……君たち、転生者がね?」

そこで、私の意識はプツリと切れた。

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