学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第二話 ① ~早朝の教室での読書の時間。詩織さんが激おこでした~

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 第二話  ①



『こんばんは。悠斗くん。あなたにお話したいことがあります。早朝の教室。いつもの時間に来てください。
 悠斗くんなら、なぜ私がこのようなメッセージをしたのか、わかっていると思います。
 あと、きちんと持ってくるべきものを持って来てください。よろしくお願いします。
 最後に、私はすごく怒っています。激おこです』

 ふふふ……
 どうやら俺の仕掛けたイタズラに詩織さんは引っかかったようだ。

 バイトを終え、雫の雑炊を食べたあと、お風呂を済ませた俺のスマホに、詩織さんからそんなメッセージが届いていた。

 その文章を読んだ俺は、自分の仕掛けたイタズラが成功したことに喜びを感じる。
 正直。何の反応も無かったらどうしようかと思っていたけど、このメッセージの内容なら、かなり効いたようだ。

 俺はニンマリと笑みを浮かべると、紙袋の中に詩織さんが求めているものを入れていった。

 朱里には先程電話で今朝の件は謝っておいた。

 あのニュースは彼女も見ていたようで、しかもそれは家族全員だったそうだ。

 ははは。そりゃあ気まずいな。

 今度の日曜日にデートをしようと誘うと、ケーキバイキングに行きたいと言われた。
 お詫びに全額奢るよ。と提案すると、いつもは奢りに対して躊躇うんだが、即答で喜んで受け入れる対応をした。
 もしかしたら期待してたのかもしれない。

 朝練は柔軟と体幹トレーニングを中心にやる。
 と話していた。
 一週間は両親に送って貰うから、俺と一緒の登校は松葉杖を使わなくなってから。
 と、言われた。

 ただ、意外だったのは、早朝の教室での読書は続けて欲しいと、彼女から言われたことだ。

 普通なら、仲違いの原因になった早朝の教室での読書。
 辞めて欲しいと言われると思っていたが、彼女としては

『私が何か言って辞めさせた。みたいなのは空気的に嫌だから』

 と、言っていた。

『それに、悠斗は私のことが大好きだし。詩織ちゃんが何しても大丈夫でしょ?』
『もちろん』
『ふふふ。信じてるよ、悠斗。じゃあおやすみなさい』

 ここまで言われたら、浮気なんかする気も起きない。


 しかし。まぁあの早朝の静かな教室で、のんびりと読書をする。そういう時間は、俺にとってもとても大切な時間になっているのも事実だった。

 だからと言って、その時間で朱里に内緒で詩織さんと蜜な行為に走る。なんてことはありえない。

 せいぜい、ライトノベルで感想を言い合って笑い合う。
 そんなくらいだろう。

 打算や策略を巡らせて、俺を陥れようとする詩織さんはちょっと願い下げだが、同じ趣味を持った気の合う大切な友達としてなら、ずっと一緒に居たい。そう思えるくらいには、彼女を大切には思っている。

 ……はぁ。我ながら最低な考えかもしれない。







 そうして、昨晩から考えていることを頭に思い浮かべていると、教室の扉が開いた。


「おはようございます。悠斗くん」
「おはよう。詩織さん」

 誰も居ない早朝の教室。
 二人だけの時間が始まる。

「メッセージは読んでくれましたね?」
「うん。読んだよ」

 俺はにこやかに答える。

「はぁ……最初の作品を、借りた分だけ読んだ時にはたまたまかな?と思いました」
「うん」
「そして、次の作品を、借りた分だけ読んだ時にはおかしいな?と思いました」
「うんうん」

 俺は楽しそうに頷く。

「そして、三作目と四作目、五作目と借りた分だけ読んだ時には確信しました!!」
「おー。わかった?」

 俺はニンマリしながら詩織さんに言う。
 詩織さんはキッ!!と俺を睨む。
 おぉ。その表情はなかなか可愛いな。

「悠斗くん!!なんで、全ての作品を『次の巻が最終巻』って所で貸し出しをストップさせてたんですか!!!???」

 このモヤモヤをどうしてくれるんですか!!

 地団駄を踏む詩織さん。
 いやーなかなか見れない反応だ。
 こういう素の行動って彼女はすごく魅力的だと思う。

「もちろん、今日は最終巻を持ってきてくれてるんですよね!!」

 そういう詩織さんに、俺は最終巻のライトノベルが詰まった紙袋を取り出す。

「くくく……これが欲しいのか?」

 俺はニンマリと悪い笑みを浮かべながら彼女に言う。

「ほ、欲しいです……っ!!読ませてください!!」

 と、懇願する詩織さん。

「なら、どうすればいいか、わかってるよな?」

 意地悪く言う俺に、詩織さんは『悪ノリして』答える。

「くぅ……恥ずかしいですが、仕方ありません……」

 そう言ってスカートの裾を少しずつ持ち上げて、

「そ、そのくらいにしようか!!詩織さん!!」

 俺はひよって詩織さんを止める。

「え、いいんですか?……昨日も言ったように、悠斗くんなら……」

 と、流し目で言う詩織さん。

「悪ノリしてごめんて。ほら、これが貸した作品の最終巻だよ」

 と、俺は彼女に紙袋を手渡す。

 詩織さんはその紙袋を大切そうに受け取ると、いつものように抱きしめる。

「ふふふ……悠斗くん。ありがとうございます。大切に読ませていただきます」

 そういう彼女を俺は優しい目で見る。
 あぁ、やっぱり。こういう彼女なら悪くないと思う。
 浮気しようとかそう言うのは思わないけど、やっぱりこうして自分の好きを分け与えるような関係なら続けて行きたい。
 俺はそう感じた。

 もしかしたら、俺のこれは浮気なのかもしれない。
 だけど、
 俺の中では
 朱里への『好き』
 と、
 詩織さんへの『好き』
 は明確に違っていた。
 だから、この時間を尊いと思う俺の心は許して欲しい。
 そう思った。


 これが、俺の心の『甘さ』というものだと言うんだって。
 この時初めて、俺は知った。
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