学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
188 / 292
第2章

第六話 ⑥ ~俺がやらかしてしまうのは、どうしようもないのかもしれない~

しおりを挟む
 第六話  ⑥



 詩織さんと読書をしていると、だんだんと教室に人が増えて行く。

 朝の教室で、俺と彼女がこうして並んで時間を過ごしているのは周知の事実なので、以前のような騒ぎはもう起きない。

 ただ、今日はそれとは別の話で騒ぎにはなっていた。

「桐崎、予算会議の動画見たぜ!!俺、会長のために生徒会に金入れるぜ!!」

 と、石崎が言ったのを皮切りに、俺のクラスのみんなは生徒会に募金をしてくれるような発言が溢れた。あの動画配信はやはり効果的だった。

 少しだけみんなを騙してるような罪悪感はあったけど、まぁ金が無いのは事実だし。蒼井さんが言った言葉も嘘ではない。

『少し大袈裟に拡大解釈をしただけ』だ。

 ……こういう所が、ペテン師だって言われる所以か。

「ありがとうな、石崎にみんなも!!」

 俺は笑顔でみんなにお礼をする。

 そうしていると、SHRまでは少し時間があるところで一人の先輩が教室にやって来た。

「生徒会の副会長の桐崎君はいる?」

 そう言って教室の中を覗いたのは、演劇部の部長だった。

「はい。居ますよ。演劇部部長の永瀬(ながせ)先輩ですよね。どうしましたか?」

 俺はそう言って教室の入り口へと歩いて行く。

 演劇部の部長らしく背筋がピンと伸びて、姿勢もよく、言葉もハキハキしてるのが特徴の女性だ。

「……え?私って名乗ったっけ?」

 と言う永瀬先輩。

「こうしてお話するのは初めてですが、予算会議の時に誰から質問を受けるか分かりませんので、各部の部長の顔と名前くらいは一致させてますよ」

 俺のその言葉が意外だったのか、永瀬先輩は少し驚いていた。

「君はすごいね。さすがに驚いたよね」

「……いえ。この位は普通ですよ。別に全校生徒の顔と名前を覚えてる訳では無いので。永瀬先輩の場合は、演劇部らしく姿勢も綺麗ですし、発音もしっかりしてて話が聞き取りやすいです。去年の自分がお手本にしていた先輩でもありましたからね」

 そう。言葉がどもってばかりだった去年の自分。
 姿勢の良さや発声を学ぶために、演劇部をこっそり覗いてたこともある。

 その時、印象に残って居たのがこの先輩だ。

 俺がそうしたことを話すと、永瀬先輩は少しだけ照れたように顔を赤くする。

「……君が怜音に、女たらしのハーレム王だと言われる理由が良くわかったよ」
「……え?何か言いましたか?」

 永瀬先輩にしては珍しく、良く聞き取れない発言をされてしまった。

「はぁ……君にこうして会いに来たのは理由があってね」

 と、今度は永瀬先輩の言葉が聞き取れた。

「はい。何となく予想は出来ますが、伺います」

 俺が聞く体勢を取ると、永瀬先輩は話し始める。

「今度の夏休みに定期公演があってね、そこで必要な衣装が五着あるんだ。それを買うとなると基本の活動費から出すと今後が厳しくなるのが目に見えているんだ。だから予算の追加を申請したいんだよね」

 普通に買うと三万円近くしてしまう。部員の数が六名だから半分もいきなり消えるのはキツいんだよね。

 と、言う永瀬先輩。

 俺は少しだけ思案して、先輩に提案する。

「夏休みまでまだ時間があります。『手芸部』に衣装の作成を依頼してみてはいかがでしょうか?」
「……え?」

 俺は自分の案を永瀬先輩に説明する。

「自分が設定した『出来高項目』に、『他の部活への貢献』というものがあります」
「そう言えば、そんなものがあったような……」

「主に吹奏楽部とかが、他の部活の応援で演奏したりした時に発生する出来高ですが、今回のように、演劇部の依頼する服を手芸部が作れば、手芸部の出来高にもなりますし、演劇部としても、材料費程度で済めば費用の削減にも繋がると思います」
「……なるほど。確かに良い案だね」

 と、永瀬先輩は前向きに考えてくれてるみたいだ。

「手芸部としても、自分たちが作った衣装が演劇部の公演でたくさんの人の目に映る。嬉しいと思いますよ。もしかしたら、演劇部の公演を見に来るかも知れません」

 観客が増える。そんなメリットもあります。

 と俺は補足した。

「うん。とても良いアイディアだね!!その方向で動いてみるよ!!」
「はい。お役に立てたようで光栄です」

 俺はそう言って頭を下げる。

「お礼を言うのはこっちだよ。ありがとう、副会長!!」

 永瀬先輩はそう言うと、笑顔で教室を後にした。


 それを見送った俺は、ある種の達成感を得て席に戻ろうとすると、

「…………じー」
「し、詩織さん……どうしたの?」

 ジトーとした目で俺を見てくる詩織さんが居た。

「また、一人堕としてしまいましたね。流石は悠斗くん。女たらしのハーレム王ですね」
「そ、そんなことは無いと思うんだけど……」

 と、俺は少しだけ焦ったように言うが、周りを見ると

 クラスメイトからもジトーとした目で見られていた。

「桐崎……今のは藤崎さんには黙っておいてやるよ」

 と、言う石崎。

「あ、ありがとう……」


 行動や言動に気をつけよう。

 そう思った矢先にやらかしてしまう。

 こればっかりはどうしようもないのかもしれない……




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

無実の罪で全校生徒から土下座を要求された僕は、逆に一人ずつ土下座をするように要求した。

葉月
恋愛
無実の罪で全校生徒から土下座を要求された僕は、逆に一人ずつ土下座をするように要求した。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...