14 / 96
14.街への入場門
しおりを挟む100/7/9(土)17:00
【所持金】17万2000ゴールド
森を抜け、街道を進み、ついに目の前に街が見えてきた。
高さ5メートル程の城壁に囲まれた大きな街で入口には門番がいる。
異世界にふさわしいファンタジックな外観の街だ。
近辺のモンスターは定期的に排除しているのだろう。
街が見えてきた辺りからモンスターの気配もない。
周囲を眺めながら街へ入場する列へと並んだ。
人々の服装も武器防具に身を固めた冒険者のような人や、馬車に乗った商人のような人、農具を担いだ農民など様々だ。
サマヨちゃんも村娘風の服装だから、特に違和感なく並んでいる。
スケルトンだとはバレていない。
そうこうするうちに俺の入場番がやってきた。
「身分証があるなら提示。ないなら1万ゴールドだ」
「身分証はありません。後ろの女性とあわせて2万ゴールドです」
野盗から10万ゴールドをいただいているのだ。余裕で支払う。
「確かに。しかし、その装備。まさか野盗ではあるまいな?」
野盗から奪った装備ではあるが、俺は勇者だ。
「いえ。違います。森で野盗に襲われたので退治しました。その戦利品です」
俺に後ろめたいことは何もない。堂々と正直に対応すれば問題ない。
だが、後ろめたいことがある奴も居るようだ。
「ふぇ? い、いえ、その、この装備は、えっと、襲ってきたモンスターを倒して、それで……」
「本当か? なんだか怪しい奴だな。名前は? どこから来た?」
別の列での騒ぎが聞こえてくるが、確かに怪しい。
「えっと、その、名前はカモナーと言って、東の方というか、記憶喪失。そう、記憶喪失なんです!」
「君のような少年が? モンスターを退治? 本当に?」
どう見ても、どう聞いても怪しすぎる。
確かに見た目は普通の少年だが、モンスターを退治するということは、それなりの腕前を持っているはずだ。
それなのに、とても強そうには見えない。だからこそ要注意だ。
っと、目の前の門番が何か言っているな。
「あとは、その女性のフードを外したまえ」
意外にしっかり調べるものだな。まあ、いずれバレルことだ。
門番の人にだけ見えるよう、サマヨちゃんのフードを外す。
「スケルトン? 君の使い魔か?」
ファンタジックな世界だし、やっぱりモンスター使いは居るよな。
「はい。私の相棒です」
「そうか。それなら使い魔と分かるように首輪をつけることだ。そうでなければ街には入れられない」
目印が必要ということか。
確かに、野生のモンスターと見分けがつかないと不便だ。
「首輪を持っていないのですが、どこで購入できますか?」
「ここで販売している。1つ10万ゴールドだ」
たっけえええ!
しかし、仮にもモンスターを街中に入れるわけだ。
万が一、街中でモンスターが暴れたなら死者が出る。
10万ゴールドすら払えない、その程度のゴールドに困る奴は、モンスターを管理できるか怪しいというわけだ。
「……1つお願いします」
さすがに余裕とはいかないが、サマヨちゃんを置いて俺だけ街に入るなどありえない。
【所持金】17万2000 → 5万2000ゴールド
しかし、世の中にはゴールドのない連中も居るものだ。
「はあ? んでこんなにたっけーんだよ。っざけんな!」
「いや、そうは言っても決まりでして……」
案の定、門番に絡んでいる奴がいる。
見た感じは俺と同年代の若者だ。
「んだよ。こんなところでトラブル起こしたくねーっての。俺はこっそり生きたいだけだからさ。入れてくれよ」
いや、こっそり生きたいなら素直に支払えば良いのに。
「ご主人様。でしたら、私は街の外でお待ちします」
若者の後ろには、絶世の美女がいた。
あのような美女にご主人様と呼ばせるとは大したものだ。
「なにいってんだ。ミズナ。お前はモンスターなんかじゃない。お前に首輪なんてできるわけねーだろ。俺は2万ゴールド以上はビタ一文払わねーぞ」
「であれば、貴様も街に入れるわけにはいかん」
首輪の話をしているということは、あの美少女もモンスターなのか?
確かに若干身体が透き通っているように見える。
人間そっくりの外見に知能も高いとなれば、かなり高ランクのモンスターではないか?
「まあまあ。門番の方。私はこのタローシュさんに助けられた商人です。ここは、どうかこれで穏便に……」
そう言って、若者の後ろから馬車を降りた商人が門番へと近づいた。
「う!? うむ……後ろの女性はどう見ても人間だよなあ。うむ、全く問題なし。不正はない。通って良し」
その後、若者は商人の馬車に乗り込み、街へと姿を消した。
怪しい奴だが、商人の後ろ盾があるとは、やるな。
金さえあれば、異世界だろうと何とでもなるもんだ。
奴も要注意だな。
そういえば最初の少年はどうなった?
「グルル」
「!?そのモンスターは?」
いつの間にか少年の頭上を大きな獣が飛び交っていた。
4つ足に大きな翼をもつ獣。その爛々と輝く目が門番を見つめていた。
「あ、こら。大人しくしてよぉ。その、僕の使い魔ですが何か?」
「い、いえ、何かと言われても……まさかSSRモンスターのグリフォン?」
モンスターに見つめられた門番は、明らかに怯えている。
「えっと。その、普通の使い魔だと思うんだけど、何かおかしいかなぁ?」
「い、いえ、おかしいも何も……ですが、いくらSSRモンスター使いでも、規定の首輪をしていただかないことには、街中に入れるのは無理ですよ。もしも暴れられたら街が壊滅しかねませんので……」
あのモンスターに間近で睨まれれば、漏らしても不思議はない。
それでも必死に仕事を完遂する姿は立派である。なかなか練度が高い。
「そうなの? そんなお金ないしなぁ。あ、でも、僕一人の方が目だたなくて良いのかな。それじゃグリちゃんは外で遊んでいてね」
少年の合図に従いグリフォンは大空に舞うと、近くの森へと移動する。
残念ながら十分に目立っている。
だが、これで確信した。この少年はプレイヤーだ。
門番が恐れるSSRモンスターを少年は完璧に掌握している。
どう見ても俺より若い、中学生にしか見えない少年がだ。
見かけによらずとんでもない少年かと思えば、10万ゴールドすら持ち合わせていないという。
となれば、スマホだ。ガチャでSSRモンスターを引いたな。
少年の動きを目で追っている間に、首輪を持った門番が戻ってきた。
「ほら。これが首輪だ。しかしスケルトンを大事にしてるんだな。お前の知り合いの骨か?」
「いえ。そういうわけではありませんが、危ない所を何度も助けてもらってますので」
サマヨちゃんに首輪をはめる。
モンスターの体系にあわせてサイズが変動するようで、骨の首にも丁度良い大きさになった。
「そうか。スケルトンは基本使い捨てだからな。ある程度の再生力はあるが、それだけだ。無茶をさせれば壊れて戻らなくなる。武器ならともかく服まで着せているのが珍しくてな。ほら、通って良いぞ」
「はい。ありがとうございます。それでは」
確かにスケルトンといえば、あまり強いイメージはない。
俺も当初はそう思っていたが、それに反してサマヨちゃんは強い。
無茶させてバラバラにしてしまっても、再生してくれる。
だが、門番の人はスケルトンは弱いと、再生力も弱いと言う。
そうか──これが【勇者】スキルの力。
仲間に勇気を与える、その支援能力というわけか。
これまでも気づかないだけで、十分な恩恵を受けていたわけだ。
無事に門をくぐり抜け街へと入る。
この入場門というのは面白い場所だ。
異世界に不慣れなプレイヤーを見つけるには持ってこいの場所といえる。
ここで張り込むのも面白いかもしれない。
だが、今は別だ。
街でやるべきことができた。
ドンッ
「っと。すみません。大丈夫ですか?」
少し考えごとに気をとられていたようだ。
人込みがあるとはいえ、女性にぶつかるとは。
「いえ……大丈夫。気になさらないで」
「はい。すみませんでした」
女性に詫びを言ってその場を離れる。
ふう、凄い美人。さすがは異世界だ。
この衝撃をきっかけにお知り合いになりたいものだが、あれ程の美人に声をかけるなんて俺にはとても無理だ。
だが、勇者として大成さえすれば、声をかけるまでもなく美女はより取り見取りのうはうはハーレム状態。
そのためにも、俺はグリフォンと別れた少年。
カモナーと名乗る少年のあとを追いかける。
カモナー。
SSRモンスターであるグリフォンを自在に操る少年。
習得スキルは不明。
ガチャから確率3%のSSRを引き当てるとは、侮れない相手だ。
恐らく今の俺とサマヨちゃん。
二人がかりでもグリフォンに勝つのは難しいだろう。
門で見たグリフォンの迫力には、とんでもないものがあった。
あのグリフォンが傍に居る限り、カモナーに近づくのは危険である。
だが、街の広場でのん気に焼き鳥を食べるカモナー。
その傍にグリフォンは居ない。
よほど自分の力に自信があるのか?
それとも街中で油断しているだけなのか?
いずれにしろ、カモナーを狙うなら街中しかない。
異世界は弱肉強食にして先手必勝。
しかも少年、男となれば俺が手加減する理由は何もない。
カモナー。お前を殺す。
殺して地球に、愛しいママのところへ子供を帰してやるのが、大人の義務だ。
だが、俺がカモナーを襲えば、即座にグリフォンが駆けつける。
サマヨちゃんもそうだが、召喚モンスターは主人を護るための存在だからだ。
それでも、グリフォンが駆けつけるまで時間はある。
いくら空を飛べるとはいえ、森から街中まで。
1分から3分、その程度の余裕はある。
それだけあれば十分だ。
人目のない場所で近寄って殴る。それで終わる。
だが、マスターの居なくなった後、召喚モンスターがどうなるのか。
それは分からない。
俺を殺そうと狙ってくるのか。
それとも無差別に暴れるのか。
あるいは召喚の縛りから解放され、野生に帰るのか。
いずれにしろ、街中で暴れるモンスターを街の警備兵が無視するはずもない。
スマホを拾った俺は逃げ回るだけで良いというわけだ。
街中にはいくらでも建物がある。
建物内に避難すればグリフォンの巨体では侵入できまい。
問題は、グリフォンが暴れることによって、俺の行動が原因で街の住人に被害がでることだ。
仮にもSSRモンスターだ。どれ程の被害が出るのか予想がつかない。
護るべき住人に対して、勇者自身が危害を加えたのでは本末転倒だ。
それでも、いくらでも言い訳はできる。
大事の前の小事。
大の虫を生かして小の虫を殺す。
損して得取れ。
肉を切らせて骨を絶つ。
何よりマスターを失ったグリフォンが、普通に森に帰って幸せに暮らす可能性もある。
勇者は強くなくてはならない。
立派な信念があろうとも、力なき勇者に価値はない。
そのためにも、カモナーのスマホが、ポイントが必要だ。
あくまでも勇者としての、力を追い求めるのか。
それとも、勇者としての、美徳を追い求めるか。
難しい判断だが、勇者は決断を下さなければならない。
俺の前をのん気に歩くカモナー。
焼き鳥をほおばりながら辺りをキョロキョロ見回すその動きは、自殺志願者のように無防備だ。
ただ、これだけは確信できる。
コイツは、俺がやらなくとも間違いなく誰かにやられる。
なら、悪人にやられる。その前に──
そう覚悟を決めた俺は、カモナーへと近づいていった。
1
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる