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41.イモ虫獣
しおりを挟む100/7/14(木)15:00 ゴブリン獣の森
ゴブリン獣の森。
その薬草採取場で、薬草を集めるゴブリン獣を撃破した。
あとは死体の処理だが……
樹々の向こうにイモ虫獣がうろついているのが見える。
またアイツにプレゼントするか。
──ふう。これで死体の処理は完了だ。
サマヨちゃんはいつもどおり無言で警戒中。
ウーちゃんは薬草で食事中。
俺も少し休憩するか。
せっかくだ。ウーちゃんからしぼりたての牛乳を飲むとしよう。
しかし、このまま飲んで大丈夫なのだろうか?
市販の牛乳は熱処理されていると聞いた記憶がある。
まあ異世界だし、乳牛獣だし大丈夫だろう。
お腹を壊しても薬草がある。
ゴクゴク
「うまい!」
しぼりたてだからだろう。まったりと濃厚でコクがある。
これなら良い値段で売れるんじゃないか?
ウーちゃんをいくらで購入したのか知らないが、すぐに元が取れそうだ。
いつの間にか牛乳を飲む俺の近くまで、ゴソゴソとイモ虫獣が這い寄っていた。
なんだ? もうゴブリン獣の死体はないぞ?
イモ虫獣は、牛乳をたくわえたバケツへと近寄っていく。
死体だけじゃなくて牛乳にも興味があるのか?
死体も牛乳もたんぱく質を多量に含むという。だからか?
バケツになみなみと集めた牛乳。どうせ俺一人では飲みきれない。
死体処理でお世話になっているのだ。
キモイ虫だが、少しくらいは優しくしてやろう。
「ほら。飲むとよい」
バケツに頭を突っ込み、ゴクゴク牛乳を飲み出すイモ虫獣。
すっかり飲み干したのか、バケツを逆さに頭から被って舐め取っていた。
ふーむ。キモイが可愛いな。これがキモ可愛いって奴か?
「もう牛乳はないぞ。だが、牛乳はそこのウーちゃんから採ったものだ。また牛乳が飲みたいなら、ウーちゃんが襲われないよう守ってやってくれ」
薬草を食べるウーちゃんを見たイモ虫獣は、ゴソゴソ森の中へと消えていった。
しょせんはイモ虫か。
一休みした俺は上薬草を探すが、あまり見つけることができなかった。
薬草はたくさんあるが、上薬草はレアな存在。
ウーちゃんも俺の働きに不満そうにうなっている。
いや、お前も俺と同じで、見つけていないだろう。
やはり、薬草集めはカモナーに任せるのが一番。
明日にでも、カモナーを連れて来るとしよう。
「ウーちゃん。戻ろう。遅くなるとカモナーも心配する」
いくつか見つけた上薬草を手に、ウーちゃんを促して帰路に着く。
カタカタ
道中、サマヨちゃんが俺たちの後ろを指さした。
何だ? モンスターか?
ゴソゴソと樹々の間から現れたのはイモ虫獣。
その口には、上薬草を咥えていた。
もしかして、上薬草を見つけてきたのか?
虫といってもモンスター。知能があっても不思議はないが……
イモ虫獣は、咥えた上薬草をウーちゃんの前へと置く。
すかさず上薬草へとかぶりつくウーちゃん。
毒が入っていたらどうする?
だが、その心配はなさそうだ。
イモ虫獣は、ウーちゃんの牛乳が飲みたいのだろう。
それで、好物の上薬草を集めてきた。
長く森に住んでいるおかげか、上薬草の場所を知っているようだ。
そういうことなら、お礼を差し上げるしかない。
だが、ウーちゃんは先ほど牛乳をしぼったばかり。
うちがブラッククランだと思われてはいけない。
無理をさせるのは、はばかれる。
仕方がない。俺が何とかするしかない。
いきおいよくズボンを脱いで、俺は臨戦態勢に入る。
幸い俺のミルクにも、たんぱく質が含まれている。
先ほど発射したばかりだが、リーダーたる俺が率先してやらねば、部下は誰も着いてこない。
ヤルしかないのだが、いくら俺がヤリチン大学生だといっても、連発するのは難しい。
しかも、イモ虫獣は何が起こるの? といった眼差し? で俺を見つめている。
美少女に見られながらであれば俺も勢いを増すのだろうが、イモ虫ではな……
ミルクを発射するには、何らかの刺激が必要だ。
そういえば、イモ虫獣の身体。
以前に戦った時は、ゴムのような柔らかい身体をしており、刃物を受け付けなかった。
おそるおそるイモ虫獣の身体にふれる。
ぷにゅ
やはり柔らかい。
イモ虫だけにネバネバしているかと思ったが、表面はサラサラしており、嫌な匂いもない。
この手ざわり……俺が愛用していたグッズに似ている。
今も部屋で転がっているだろう、俺の初めての相手。
なつかしいその手ざわりに、楽しかった思い出が蘇る。
俺はイモ虫獣の表面。段差になっている隙間に挟み込んでみた。
「うおおお?!」
なんだこれは?
まるで2つの頂に挟まれているような。そんな感覚。
凄いぞ。このイモ虫野郎。
限界を突破した俺は、イモ虫獣の口内目がけて放出する。
一滴も逃さないとばかりに、放出を終えた俺を口に含んで舐めとるイモ虫獣。
俺のミルクも気に入ってくれたようだ。
「ふう。ありがとう。また上薬草を見つけたら頼むよ。それじゃね」
ズボンを履き終えた俺は、その場を後にする。
トコトコ カタカタ ドスドス ズルズル
ズルズル?
帰路に着く俺たちの後を、イモ虫獣がズルズルと着いてきていた。
ふむう……まあ害はないし良いか。
100/7/14(木)17:00 クランハウス
本日のレベル上げを終えてクランハウスへと帰宅した。
「ただいまー」
「おかえりぃ。って、なんで増えてるのぉ?」
帰って来たのは、俺、サマヨちゃん、ウーちゃん。
そして、おまけのイモ虫獣。
結局、うねうねズルズルとクランハウスまで着いて来ていた。
「餌を上げたら着いて来たんだ。飼ってみようかなと」
「ふえー。可愛い。うねうね可愛いよぉ」
早くもイモ虫獣に飛びつき抱き付くカモナー。
いきなり飛びつくとか、相変わらず、コイツは怖いもの知らずな奴だ。
しかも第一声が可愛いとか……
「ふわぁ。なにこれぇ? やわらかーい。ゴムみたいですごいよぉ」
イモ虫獣の手ざわりの良さは、俺も身をもって経験済みだ。
「ああ。どうだ? カモナーが世話してみるか?」
「うん。任せてよぉ。よーし……名前は何にしようかなぁ」
これで良し。面倒な世話はカモナーに任せてしまうとしよう。
イモ虫獣はといえば、柵に吊るしたオオカミ獣の死体を食べていた。
ああ。せっかくのオオカミ避けが……
「食べるのは構わないが、食べた分は働いてくれよ?」
その分、戦ってくれるなら文句はない。
「また変なのを連れてきたわね……」
ギルドのお姉さんだ。
イモ虫獣にたいして、嫌な物を見る目で見ている。
これが普通の反応だよな。
これを可愛いと飛びつくカモナーがおかしいだけだ。
「コイツのこと知ってるんですか?」
「Eランクモンスターよ。口から強酸性の体液を吐き出すのと、鈍器に極端に強い表皮に注意すれば、苦労するモンスターじゃないわ。もっとも相手から襲ってくることがないのと、倒しても得られる物がないので、誰も戦わない相手よ。見た目も嫌ですし」
確かに。ぶっちゃけこいつ弱いよな。
「でも、コイツの身体、凄く柔らかいですよ? 倒して集めれば何かの役に立たないですかね?」
「そうね。生きている間はね。死ねば腐るだけよ」
そうか。ゴムの代わりになりそうだと思ったが、死ぬと腐ってしまうのか。
まあ、弱くても問題ない。死体処理さえ頑張ってくれれば良い。
死ねば腐る。死ななければ柔らかいままだ。
なによりコイツの大きくて柔らかい身体は、俺の肉盾にうってつけだ。
「まあカモナーも気に入っているようですし、家で飼うので、お姉さんも仲良くしてやってください」
「カモナーちゃん。変な趣味してるのよねえ」
そう言って、お姉さんはチラリと俺の顔を見る。
「それはありますね。ところで、お姉さんは何でここに? 職人さんの出迎えですか?」」
「ええ。今日で職人たちの作業は終わりですから、様子見も兼ねてです」
職人たちの働きによって、グリフォンの小屋と周囲の柵は完成していた。
ボロボロだった建物も、外見はまともになっている。
内装は何も無いが、まあ良い。
「ありがとうございます。お世話になりました」
「うっす。ユウシャさんも、あまり無理しないで欲しいっす。ヤバクなったら逃げるっすよ?」
それはそうだ。
職人さんは、俺が1週間で逃げるのに賭けているからな。
賭けるといえば、ギルドのことで話題になっているなら、お姉さんが知らないはずないよな。
「街では俺たちがどれ位で逃げ帰るか、話題になっているそうですね。お姉さんも賭けたんですか?」
「ああ。ユウシャさんの耳にも入ったのですね。まったく。不謹慎です。ユウシャさんが逃げ帰るはずありませんのにね」
あれ? また嫌味でも言われるかと思ったが、けっこう信用されているな。
「ええ。賭けるなら最長の4週間以上ですよね」
「もちろんです。私も賭けられるだけ賭けましたので、ユウシャさん? 分かっていますよね?」
さすがはお姉さん。勇者の価値をよく分かっている。
俺への好感度メーターも、大分上がっているようだ。
「任せてください。ゴブリンなどあっという間に蹴散らしますよ。お姉さんが儲けたお金で飲みにでも行きましょう」
これでまた一歩、お姉さんと仲良くなれるわけだ。
「それでカモナーちゃんは、今晩どうするの? 家に泊めるならいつでも歓迎よ?」
「その必要はありません。カモナーもクランの一員。今日からはクランハウスで寝泊りしてもらいます」
アルちゃんの世話とウーちゃんの世話とイモ虫獣の世話と、アイツの仕事はいっぱいある。
「そう。あ、昨晩聞きましたが、カモナーちゃん水魔法が使えるのね? しかも使い方が分からないって……どうやって覚えたのかしら? とにかく使い方を教えたので、水魔法が使えるはずよ」
マジか。
そういえばカモナーの奴、無駄に水魔法なんて習得していたな。
使うのは見たことないが、使い方を知らなかったのか。
「ありがとうございます。ついでと言っては何ですが、召喚魔法の使い方も教えてもらえませんか? カモナーが使えるはずなんですが、使い方が分からないらしくて」
「ええ?! カモナーちゃん召喚魔法まで使えるの? 魔法学校にでも通っていたのかしら?」
魔法学校で努力する人たちには申し訳ないが、スマホから覚えただけだ。
「さあ? 私も知りませんが、とにかくお願いできませんか?」
「分かりました。といっても私も専門外ですから、どうなるか保障できませんよ」
それでも、ずぶの素人である俺たちよりはマシだろう。
「カモナー! こっちに来てくれ」
イモ虫獣の背中に乗ってくつろぐカモナーを呼び寄せる。
あの柔らかい身体の上で寝るのは、ちょっと羨ましい。
「うゆ? イモちゃん。ちょっと行ってくるね」
イモちゃんて……ヒドクないか?
いや、卑猥じゃないぶん、マンちゃんよりはマシか。
「名前、決まったのか?」
「うん。イモちゃんだよぉ」
コイツのネーミングセンス。おかしくないか?
まあ、イモ虫獣が文句言わないなら、それで良い。
「お姉さんが召喚魔法の使い方を教えてくれるそうだ。頑張って覚えてくれ」
「あいおー」
「でも、私は職人さんを街まで送らないといけないのよね。どうしようかしら?」
そうか。もうすぐ夜になるから、街まで戻るにも職人さんだけでは危ない。
送り迎えの護衛を兼ねたお姉さんが動けないことには、職人さんたちが帰れない。
「それなら、俺が職人さんたちを街まで送りますよ。職人さんたちも、それで良いですか?」
「うっす。お任せするっす。でも、夜が近いので注意してくださいっすよ」
街まで片道1時間。
職人さんたちに万一があってはいけない。
「グリさん。街まで職人たちを送るのに同行してくれないか?」
「グルル」
仕方ないわね。あくまでも職人さんのためだからねっ! と言いたげにゆっくり歩いて来るグリさん。
1日中クランハウスにいて暇だったのだろう。
その尻尾は、ふりふりと嬉し気に揺れていた。
クランハウスは、お姉さん、カモナー、アルちゃん、ウーちゃん、イモちゃん。
これだけいれば、何があっても大丈夫だろう。
徐々に日が暮れようとする中、俺とサマヨちゃん、グリさんで職人を護衛しながら街へ向けて出発する。
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