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70.強奪
しおりを挟む100/10/10(月)15:15 王都 パーティ会場
パーティ会場で殺したはずの強奪野郎。タローシュ。
それが今は起き上がり、衛兵たちの中で笑みを浮かべていた。
野郎。強奪にくわえて不老不死を習得していやがったのか。
だが、まあ、不老不死など、しょせんは死なないというだけの雑魚スキル。
戦闘力が上がるわけではない。
もう1度、殺せば良いだけだ。
「それでタローシュ殿。予定通り他の御使いの力は強奪できたのかな?」
「ええ。まあ御覧のとおりです」
腕を突き出すタローシュの手の平から炎がこぼれ落ちる。
地面に落ちた炎は渦を巻き、俺たちプレイヤーを取り囲む円を成していた。
「な?! その魔法は炎魔法5の炎殺火炎陣。お、俺しか使えないんじゃ……って! 俺のスキルが無くなってるぞー」
「な? 俺のスキルも無い」
「お、俺もだ」「わしも」「あたしもよ」
自らのスマホの画面を見て慌てるプレイヤーたち。
だから言っただろう。
強奪野郎は泥棒野郎だと。
盗られてからでは遅いと。
「タローシュ! どういうことだ!」
衛兵に囲まれ傷の手当を受けるタローシュに対して、プレイヤーたちが詰め寄る。
「やれやれ。説明しないと分からないのかなあ?」
余裕の笑みを浮かべて、面倒くさそうに口を開くタローシュ。
その傍らには、豪華な服装に身を包んだ少女が付き添っていた。
「タローシュ様。この騒ぎはいったい? それに、そのお顔は……」
「ああ。姫様。心配いらないよ。少し怪我をしたけど、予定通り他のプレイヤーのスキルは強奪したから」
そう言って、タローシュは目に刺さるチキンの骨を抜き取った。
「強奪だって?」
「そんな? いったいいつ?」
「そういえば俺、あいつとパーティ会場で握手したよな。あの時か?」
「まじかよ。あいつ笑顔で近寄ってきたから、つい」
「笑いながら、俺らからスキルを盗んだってことか?」
平和ボケから油断しすぎなのだ。
だが、彼らプレイヤーを責めるのは筋違いというもの。
盗られた側にも落ち度はあるが、一番悪いのは、盗った奴に決まっている。
「君たちのスキルは僕が頂戴したから。何故って、君たちからスマホを回収する時に抵抗されても困るしね。親衛隊長さんが言ってたでしょ? 力は力ある者が管理するって。イセカイキングダムの王。そして、姫様の婚約者で次期国王となる僕が管理するのが相応しいんだよね」
「姫様と婚約で次期国王だって?」
「お前! プレイヤーのくせに、こいつらとグルなのかよ」
「タローシュ。お前は俺たちを売ったってわけか?」
「さいてー」
タローシュの隣で頭の血を拭う少女が、姫様なのだろう。
なるほど。姫様っぽい服装に見た目をしており、なかなか愛らしい。
俺のハーレム、ではなくて、クランに加えるのもやぶさかではない。
「心外だな……売るも何も、別に僕たちは仲間でも何でもないじゃないか。それなら婚約者の姫様に味方するのが当然だと思うけど?」
確かに。こればかりはタローシュの言い分ももっともである。
プレイヤーと美少女。どちらを優先すれば良いかは誰の目にも明白だ。
まあ雑魚プレイヤーのスキルがいくら盗られようが、問題ない。
タローシュがいくら雑魚スキルを集めようが、最強スキルである勇者の前では、ゴミ同然。うんこでしかない。
俺の勇者スキルさえ無事なら、それだけで世界は平和なのだから。
「騒ぐな。タローシュを殺してスキルを取り返す。今、やるべきことはそれだけだ」
実際は強奪されたスキルは、俺の手元にあるタローシュのスマホに記録される。
タローシュのスマホを俺のスマホに統合すれば、全てが俺のスキルになるわけだ。
強奪されたプレイヤーのもとに、スキルが戻ることはない。
だが、まあ、わざわざ士気を下げる必要はない。黙っているとしよう。
今やるべきことは、タローシュのスマホを俺のスマホに統合する。
だが……シット!
このクソ野郎。いっちょまえにスマホをロックしていやがる!
ロックされたスマホを統合するには条件がある。
スマホの所有者が死亡する。
もしくは、スマホの所有者が管理権限を放棄する。
どちらかを満たす必要がある。
不老不死を習得したタローシュを殺す事は不可能。
なら、奴が泣いて管理権限を放棄するまで、痛めつけるしかない。
拷問は俺の趣味ではないが、正義のためには、やらねばなるまい。
「だけどよ。俺たちはスキルが無い上に、衛兵に囲まれてるんだぜ?」
「武器も防具もない。こんなパーティ用の服しか着てねーんだぞ」
「そうよ。勝てっこないわ」
確かにプレイヤーだけでは、勝利することは無理だろう。
だが──
「俺を誰だと思っている? プレイヤーランキングナンバー1の勇者だぞ? たかがナンバー2のコソ泥や、スマホを持たない衛兵ごときに負ける道理がない」
狼が指揮する羊の群れは、羊が指揮する狼の群れにも勝利するという。
勇者パワーという、他者を強化するスキルを持つ俺が指揮するのだ。
コソ泥の強奪野郎が指揮する衛兵に負けることなど、ありえない話。
「おう。よし。ならやろうぜ!」
「ええ。勇者様。お願いね」
「たのむぜえ!」
「ふう。なら、行くぞ! 勇者パワー解放!」
これまで何10回と繰り返し行ってきた行為。
勇者パワーの解放。
俺の身体から放たれる金色の光は、俺に付き従う仲間の能力を飛躍的に上昇、強化する。
俺の感覚では、その強化倍率は、およそ10倍。
プレイヤーが8人ということは、10倍の80人に匹敵する戦力となる。
くわえて、勇者の俺1人が100万の兵に匹敵する力を持つ。
圧倒的ではないか。
もはや、負ける要素はどこにもない。
俺と一緒に戦えるとは、プレイヤーの連中はラッキーだったな。
「……で、勇者パワーってなんなの?」
「なんにも起きないけど?」
「なんか変わった?」
!? 俺の身体から発するはずの金色の光。
勇者パワーが、今は1ミリたりとも身体から出てこない。
おかしいな……何かミスったか?
いや……あれ?
そもそもが勇者パワーってどうやって解放していたんだっけ?
「ぷぷ……アッハッハッハ。勇者パワー解放! って、君、勇者スキルなんて持ってないのに、どうやって解放するのかな?」
まさか……いや……そんなはずが……でもこれは……もしかして
俺は自分のスマホを取り出して、ステータスを呼び出した。
チラッ
【ステータス】
名前:ゲイム・オタク
種族:人間
称号:ハーレムキング
職業:骨術戦士
武器スキル:【骨4】【片手剣1】【両手斧2】【盾1】
【刀5】【棍棒5】
強化スキル:【体力1】【魅力1】【植物1】
他スキル :【身かわし1】【投擲1】【騎乗1】
【暗殺5】【敏捷5】
【植物知識1】【酔い耐性1】【睡眠耐性1】
【木こり2】【木工2】【性技5】
お、俺のスキル……最強スキル……勇者が……無い……
身体から血の気が引くのを感じる。
ぶるぶると足が震え、ついには立っていられなくなった俺は、がっくりと地面に膝をついていた。
「茶番は終わったかな?」
すっかり血を拭き取ったタローシュが、膝を落とした俺の前まで歩み寄る。
「お、俺のスキルが……勇者スキルが……無い……」
そういえば、野郎の死体に足首を掴まれた。
即座に振り払ったが、その時に盗られたのか?
「まじかよ!」
「勇者じゃないじゃん」
「おわった……」
「降参しかないよね」
だが、触れた相手からスキルを強奪する確率は天文学的確率のはず……
あの一瞬で成功するなんて……
豪運か!
全ての行動に上昇補正がかかるという。
強奪と豪運のあわせ技……
「んで、どうするの? まだ抵抗する?」
にやけ面で俺を見下ろすタローシュ。
死体を見下ろしていた俺と、いつの間にお互いの立場が逆転したのか。
他のプレイヤーは、すでに戦意を喪失したのか両手を高く掲げていた。
もはや抵抗は無意味である。
「返して……俺の……俺の勇者を返してください……」
「んーどうしようかな……」
タローシュの足へすがりつこうと這い寄る俺は、衛兵に両腕を掴まれていた。
「おら! 下民がそれ以上タローシュ様に近づくんじゃない」
「お願いします……何でもしますから……返してください」
「んー」
両腕を掴まれ、地面に押し倒された俺を楽しそうに眺めるタローシュ。
その返答は──
「やっぱり、だーめ」
必死に這い寄る俺の真摯な願いは聞き入れられない。
他人の物を盗んだのなら、返すのが当然のはずなのに……許せん!
「そうですか……なら死ねよおおおおお!」
俺の叫びと同時に頭上から。
シルクハットの下に隠れていたハチ獣のファンちゃんが飛び出した。
ブスッ
「ぎゃああああ!」
一直線にタローシュの顔へと。その右目へと毒針を突き刺すファンちゃん。
同時に俺は両腕を抑える衛兵を振りほどくと、地面に転がる骨突きチキンを拾い上げ、タローシュを殴りつける。
ドカッ
「ごぼぁぁっっ!」
低い姿勢から振り上げた骨はタローシュの顎を打ち砕き、その身体を宙へと浮き上がらせる。
「死ねっ! 返せっ! 死ねっ! 返せっ! 死ねええええええ!」
ドカッ ドカッ ドカッ ドカッ ドカァァッッア
倒れるタローシュの頭を叩き割り、首をへし折り、胸骨を打ち砕いて、なお俺は打ち付ける。
「きゃあああ! タ、タローシュ様!」
タローシュの姿に金切り声を上げる姫様の声が聞こえるが、俺は手を止めない。
コイツは不老不死。
じわじわ拷問して痛めつける時間はない。
そもそも痛みそのものを感じるのだろうか?
通常。これだけ身体を痛めつけられれば、苦痛で身動きなどできないはずだ。
殺しても死なない男を相手に。
痛みを感じもしない男を相手に。
今すぐスマホの権利を譲ると自白させなければならないのだが……いったいどうしろと?
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