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第80話 消化不良(前編)
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~食堂にて~
「「「………」」」
「いや~やっぱ練習の後の飯は格別だな。特に今日は身内同士とはいえ試合だったから尚更腹減ってたし、あんんん。うんめぇ――!」
「「「………」」」
「おいおい、どうしたんだよ皆して固まって。さっきから輝明以外ほとんど箸をつけてないじゃないか。お前らが無言でそうやってるせいで他の一年生とかも気を遣ってじっとしたままでせっかく初めての食事会なのにお通夜みたいな空気になってるじゃないか。もっと歓迎ムードで迎えてやろうぜ」
「どの口でほざいてんだこの野郎は」
「これを煽りでも冗談でもなく素で言ってるだからタチが悪いな」
「…そもそも一年生と一緒に食事摂るの全然初めてじゃないのダヨ」
「あれ?そうだっけ」
「数日前から一年生数人入寮してただろ?今日の朝だって現在進行形で目の前に座っているが涼夏ちゃんが同じように食卓を囲んでいたと思うんだけど」
「あっ、そうだったそうだった。そういや普通にいたな涼夏。すまん、忘れてた」
「どうやったらこの距離で忘れられるのかしら?兄貴の目、腐ってんじゃないの?」
「いやに辛辣だな。しかし目に関しては心配無用だ。なんせ俺の視力両方とも200越えだからな!」
「そんな数値ねえよ」
「2.0って言いたかったのかな?」
「おう、それそれ!流石伸介」
「ねえ、せめて馬鹿するか恥晒すかどっちかだけにしてくれない?本当に恥ずかしいんだけど」
「酷いな~、何でそんなプリプリしてんの?涼夏以外も不機嫌そうだし。せっかく試合で交流を温め合った後だってのにさ。ほら、しかめっ面してないでみんあも飯でも食って」
「「「お前のせいだろうがぁ!!」」」
~数時間前~
「よくやった輝明!お前ならできると思ってぞ」
剣崎の三振でスリーアウトとなった直後に自由はマウンドへと駆け寄り帽子の上から輝明の頭をわしゃわしゃと撫でまわし可愛がっていた。そんな様子を伸介は微笑ましそうに見つめながらベンチへと足を進めていると2人のチームメイトが彼を出迎えた。
「完全にやられたな~伸介」
「いや~見事な空振りっぷりだったのダヨ」
「…それは三振した事によるあからさまな嫌味発言なのか?それとそのニコニコ顔は何なんだ?」
「いやいやいや、別に喜んでなんかいないさ。なぁ」
「ばっちのいう通り。すけっちが三振したことをこれでもかと悔しがっていたところなのだよ」
「それだったら顔と表情を一致させろよ」
(こいつら自由と同じで本当に嘘が下手だな。大方自分らが凡退した中で俺が出塁できなくてホッっとしたといったところか。まったく…)
「まあいいか。慰めてくれて(?)ありがとさん。とっと守備に…「はあぁっ――!ちょっとそれどういう事よ!?何だ?」
裏の守備に備えようとしていた矢先、相手ベンチから聞き覚えのある声が怒号を飛ばしてこちらに伝わって来た。大方あちらの方へと勝手しに行った部内ナンバーワンの問題児がまたしてもなにかやらかした。或いはこれからやらかそうとしているであろう事を察した剣崎と鬼頭はすぐさま相手ベンチへと急いだ。
________________________
「何でこんな中途半端なところでなのよ。ここまで来たら最後までやるべきでしょう」
「そうだぜ兄貴。こんなのどっちも納得しねーよ」
鬼頭らが駆けつけると涼夏と龍介の二人が自由に詰め寄って抗議していた。
「どうしたんだ。そいつが何をやらかしたんだ?」
「落ち着いて二人とも。自由、今度はどんな支離滅裂な発言で二人を混乱させたの?」
「ちょっとちょっと、何で二人とも俺が何かやらかしたのを前提で話すんですか!?」
「まあそんな答える必要もない分かりきった問答は置いといて、本当に何があったの?」
「実はですね…」
(今度はどんな勝手なことを言い出したんだこの自由《あほう》は。『楽しくなってきたからもう三試合くらいやろう』とかなら言い出しそうだが…)
(赤坂君のピッチングにあてられて自分が投手やるって言いだした、とか?確かにそれだと試合が壊れかねないのを二人ともよく知ってるだろうから止めるだろうからあり得そうだな)
(それかこっちあっちの人数をシャッフルして試合をするとか言い出したり…)
(はたまた『興味』や『面白そうだから』という理由で助っ人の女子部員をマウンドに上げるとかも言いそうだな)
自由が言い出しそうな発言を想像していた二人だったが涼夏の口から聞かされたのは2人の予想を大きく斜めに外れたものだった。
「この時点で試合を終了するって」
「「………はぁ?」」
あまりに予想だにしていなかった発言に両者とも目を丸くして唖然としていた。
「「「………」」」
「いや~やっぱ練習の後の飯は格別だな。特に今日は身内同士とはいえ試合だったから尚更腹減ってたし、あんんん。うんめぇ――!」
「「「………」」」
「おいおい、どうしたんだよ皆して固まって。さっきから輝明以外ほとんど箸をつけてないじゃないか。お前らが無言でそうやってるせいで他の一年生とかも気を遣ってじっとしたままでせっかく初めての食事会なのにお通夜みたいな空気になってるじゃないか。もっと歓迎ムードで迎えてやろうぜ」
「どの口でほざいてんだこの野郎は」
「これを煽りでも冗談でもなく素で言ってるだからタチが悪いな」
「…そもそも一年生と一緒に食事摂るの全然初めてじゃないのダヨ」
「あれ?そうだっけ」
「数日前から一年生数人入寮してただろ?今日の朝だって現在進行形で目の前に座っているが涼夏ちゃんが同じように食卓を囲んでいたと思うんだけど」
「あっ、そうだったそうだった。そういや普通にいたな涼夏。すまん、忘れてた」
「どうやったらこの距離で忘れられるのかしら?兄貴の目、腐ってんじゃないの?」
「いやに辛辣だな。しかし目に関しては心配無用だ。なんせ俺の視力両方とも200越えだからな!」
「そんな数値ねえよ」
「2.0って言いたかったのかな?」
「おう、それそれ!流石伸介」
「ねえ、せめて馬鹿するか恥晒すかどっちかだけにしてくれない?本当に恥ずかしいんだけど」
「酷いな~、何でそんなプリプリしてんの?涼夏以外も不機嫌そうだし。せっかく試合で交流を温め合った後だってのにさ。ほら、しかめっ面してないでみんあも飯でも食って」
「「「お前のせいだろうがぁ!!」」」
~数時間前~
「よくやった輝明!お前ならできると思ってぞ」
剣崎の三振でスリーアウトとなった直後に自由はマウンドへと駆け寄り帽子の上から輝明の頭をわしゃわしゃと撫でまわし可愛がっていた。そんな様子を伸介は微笑ましそうに見つめながらベンチへと足を進めていると2人のチームメイトが彼を出迎えた。
「完全にやられたな~伸介」
「いや~見事な空振りっぷりだったのダヨ」
「…それは三振した事によるあからさまな嫌味発言なのか?それとそのニコニコ顔は何なんだ?」
「いやいやいや、別に喜んでなんかいないさ。なぁ」
「ばっちのいう通り。すけっちが三振したことをこれでもかと悔しがっていたところなのだよ」
「それだったら顔と表情を一致させろよ」
(こいつら自由と同じで本当に嘘が下手だな。大方自分らが凡退した中で俺が出塁できなくてホッっとしたといったところか。まったく…)
「まあいいか。慰めてくれて(?)ありがとさん。とっと守備に…「はあぁっ――!ちょっとそれどういう事よ!?何だ?」
裏の守備に備えようとしていた矢先、相手ベンチから聞き覚えのある声が怒号を飛ばしてこちらに伝わって来た。大方あちらの方へと勝手しに行った部内ナンバーワンの問題児がまたしてもなにかやらかした。或いはこれからやらかそうとしているであろう事を察した剣崎と鬼頭はすぐさま相手ベンチへと急いだ。
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「何でこんな中途半端なところでなのよ。ここまで来たら最後までやるべきでしょう」
「そうだぜ兄貴。こんなのどっちも納得しねーよ」
鬼頭らが駆けつけると涼夏と龍介の二人が自由に詰め寄って抗議していた。
「どうしたんだ。そいつが何をやらかしたんだ?」
「落ち着いて二人とも。自由、今度はどんな支離滅裂な発言で二人を混乱させたの?」
「ちょっとちょっと、何で二人とも俺が何かやらかしたのを前提で話すんですか!?」
「まあそんな答える必要もない分かりきった問答は置いといて、本当に何があったの?」
「実はですね…」
(今度はどんな勝手なことを言い出したんだこの自由《あほう》は。『楽しくなってきたからもう三試合くらいやろう』とかなら言い出しそうだが…)
(赤坂君のピッチングにあてられて自分が投手やるって言いだした、とか?確かにそれだと試合が壊れかねないのを二人ともよく知ってるだろうから止めるだろうからあり得そうだな)
(それかこっちあっちの人数をシャッフルして試合をするとか言い出したり…)
(はたまた『興味』や『面白そうだから』という理由で助っ人の女子部員をマウンドに上げるとかも言いそうだな)
自由が言い出しそうな発言を想像していた二人だったが涼夏の口から聞かされたのは2人の予想を大きく斜めに外れたものだった。
「この時点で試合を終了するって」
「「………はぁ?」」
あまりに予想だにしていなかった発言に両者とも目を丸くして唖然としていた。
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