『しっぽのきもち』♡猫族ミアの旅♡気持ちが分かれば仲良しに。

炭酸水『しっぽのきもち』

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レトナーク編

第2話 冒険者パーティーは組みたくないんだけど

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 レトナークの冒険者ギルドは大きな建物で、奥に入れば中庭があり、訓練所も併設されている。ミアにとって冒険者ギルドは、通い慣れた場所だったが、応接室に通されたことはない。

 青い枝葉が陽射し浴びる中庭の借景を覗きながら、ナサリーがミアを連れて応接室へと向かう。応接室は、防音の施された密室だ。冒険者たちの顔合わせや、ギルドからの直接依頼などの打ち合わせなどに使われる。

 応接室で待つロゼは、冒険者Bランクの魔道士だ。レトナーク領を統べるハワゼット家は、剛胆な気質から、ロゼは魔道士でありながら、剣の名手と腕前も知られている。誘えば気楽にメンバーに参加するロゼは、冒険者達の中でも人気が高い。

 ミアはそんなロゼとは一線を引いている。人見知りで、目立つ事を極端に嫌うミアの性格がその理由でもある。

 初めて通される応接室にミアは戸惑っていた。重厚なドアを目の前に緊張する。手に持った水晶の塊をお守りに、ギュッと握って、心を落ち着けようとする。しっぽが身震いする。

 採取メインのCランク成り立てのミアには、不似合いな場所だ。

(ロゼはあっという間にBランクだったし、偏ったキャリアの私とパーティーなんてあり得ない)

 ミアは、そう思って嫌な予感を否定しようとする。

 ナサリーがドアをノックし、中からの返事を待った。「どうぞ」と、はっきりとした声はロゼだ。

「失礼します。待たせしました。ミアさんがいらっしゃいました。」

 ナサリーが、応接室のドアを開けミアを案内すると、「では、ごゆっくりと」と言って、ドアを閉め窓口に戻っていった。

「ミア、ごめんね。先に来ちゃってて」

 ロゼが済まなさそうに謝るが、ウキウキと何かを企んでいる顔をして、ドアを背に離れないミアをこっちおいでと手招きする。

 おずおずと部屋の真ん中に歩みよるが、広い応接室が狭く感じる。部屋には、ロゼの他に、背が高く逞しい剣士と、すらっとした若く上質な格好をした青年がいた。三人が三人、ミアには見上げるのが大変な長身だ。ソファーにでも座ってくれていればいいのに、立ち話が長引いていたようだ。

(あ、有名なAランクのガイさんだ! )

「ミア……で、いいかな? ロゼから何度か話は聞いてるけど、直接話すのは初めてだな。あらためてよろしく、ガイだよ。」

 少し前から王都からやって来たガイは、昔からレトナークに居たかのように馴染んでいる。人見知りの激しいミアでもあまり緊張を与えない雰囲気にホッとする。

(相変わらずの爽やかお兄さん)

 一瞬だけ、そこが応接室であることを忘れる。
 ロゼが、もう一人の青年にミアを紹介し、緊張に引き戻す。

「ギル、こちらがミアよ。以前から話してあった私の親友よ。パーティーに必要な索敵ができると思うわ」

 すらっとした青年は、ドアが開いたときにすぐ目に入ったが、端整な顔立ちなのが分かった時点で、気後れして直視しないようにしてた。ロゼの家族は美形揃いで慣れていても、人見知りにとって華やかなタイプが至近距離にいるのは辛い。

(にゃ……ロゼ、いきなりすぎて聞いてないよ)

 やっぱりその話は避けられないのか、ミアの耳は緊張でピンと立ち、しっぽも先まで真っ直ぐになってしまう。

(いつも断ってるのに、どうして、ロゼ?)

 ロゼの方を向くと、「ごめんね」って手を合わせ、片目がウインクしてる。口の両端が上がっていつも以上にニマっとしてる。

 ミアは状況が悪いのを察して肩をすくめる。こんなことなら、どこかのパーティーの幽霊メンバーにでもなっていれば良かったと後悔する。

 正直、同世代の男性は、猫族だろうが人族だろうが苦手。ロゼの親友と紹介されて訝いぶかしがられるのは、慣れていても気分のいいものじゃない。

(変な汗出てきた、毛が逆立っちゃう……)

「ミア、初めまして。ギルバート・リンド・ウォーベックです。ギルと呼んで欲しい」

透き通るような落ち着いた声に、逃げ場を塞がれたとミアが感じるとガイが補足する。

「リンド王国の第3王子なのは伏せているから、ギルで呼んでやってくれよ」

(王子なんだ…あれ? リンドって、王族だよね? ロゼの許婚って…確か…)

 ロゼが背中からミアの肩を確保して、振り返ることができない。

(ロゼ、そういえばギルバート王子の誕生日会に毎年王都に行ってた。あれ?王都から戻ってきたの昨日だよね?一緒に戻って来た??? )

 ロゼがそういう身分なのを分かっていたつもりだったが、間近に王族を見ることになるとは考えてもいなかった。

「……初めまして、ミアです。ロゼとは幼なじみで……その、良くしていただいています……」

 ギルからの握手に応えようとして、両手に持っていた水晶が、ゴト、ゴトッと手から落ちてしまった。

 すっと、ギルのきれいな右手が伸びて、水晶を拾ってミアの手に戻してくれた。

 ミアの手に触れたギルの長い指が、以外に華奢じゃなく、鍛えたものだというのが分かった。男の人の手だ。王子様なのになぁ…と、思って見上げるとギルと目が合った。

 見慣れないキラキラしい王子顔が近くて、びっくりしてまた石を落としてしまった。

(うにゃーーーーっ! 大事な石なのに!)
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