まだ部屋のないメイドです。

炭酸水『しっぽのきもち』

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妖精たち (最終話)

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 小さな庭はまだ雪に埋もれて、その姿が分からない。ルナはキッチンの作業台にガーデニングの本広げ、何度も読み直してはイメージを膨らませている。

 まだ日が短く外はすっかり暗くなっている。夕食の支度が整って、ルナはフィンリーの帰宅を待っていた。

『フィンリーがポプラのなみきみちをすぎたよ』
『いまハーデンさんとあいさつしてる』

 妖精たちが勝手に教えてくれるから、好きな人を待つ妙味が半減する。

「あなた達、少し静かにしてくれないかしら? 」

 サービス過多な妖精たちにうんざりしながら、スープを温め直し始める。

「私は普通の人みたいに普通に暮らしたいのに。私の他に古の血を持つ人いないのかしら? 」

 と、ルナが言うと妖精たちは答えた。

『いるよ。いるんだけどねぇ~。ルナはいちおうおひめさまだからねぇ~~』

「初耳。いちおう……なんだ? 」

 妖精の血を持つ人が他にいてもおかしくはない。妖精を見たり話せたりするのだろうか?

『ルナはねぇ~74だいめのおひめさまかな? 』

「えっ!? そんなに古いの? 」

『ちがうよ47だいめだよ!』

 妖精たちが、ルナが何代目のお姫さまに当たるのかを言い争い始めた。

「そんないい加減なら、私ですらないんじゃないの? 」

 その可能性とそう思った方が楽だと思った。ルナはチキンを焼く準備を始めた。

 玄関口からフィンリーが帰ってきた音がする。ベルが鳴っているのは、妖精たちが遊んでいるからだ。二人しかいないはずの家なのにうるさい。

 フィンリーには妖精たちのおしゃべりは聞こえないが、妖精たちの起こす怪奇現象にはすっかり慣れている。

「お帰りなさいませ」

「ただいま」

 ルナは帰宅したフィンリーを玄関まで迎えに行くと、マフラーと手袋を外したフィンリーがルナをハグしてキスをした。唇とコートが冷たい。

『フィンリーのくちびるつめたいねー』
『ほっぺひえひえー』

 ……いちいち妖精たちがうるさい。ルナの周りで実況するからムードもへったくれもない。ルナは妖精たちの声が全く聞こえないフィンリーが羨ましい。

 夕食をとり終えて、食器を片付けると、ルナとフィンリーは食後のコーヒーを飲みながら寛いで話をする。

「明後日の昼、友だちをここに招きたいんだけど、いいかな」

 と、フィンリーは言った。

「何名様ですか? 」

「三人ぐらいだと思うんだけど、その買い物は明日いっしょに行こう」

 ルナはにっこりと「お願いします」と応えた。

「それと」とフィンリーが続けた。

「そのメイドの服は、その日だけはやめてもらって良いかな? 」

「あ、ごめんなさい。つい仕事をし易くて」

「謝らなくて良いよ。ただ、さっきはハーデンさんがルナの事を紹介してくれって言う事もあるから……」

 ちょっと困ったんだとフィンリーが言った。

『ハーデンさんのむすこさんがルナのことすきだってーー! 』
『ルナはあいじんなのか? とかきかれてたよーー』

 ……妖精たちは、全部言っちゃう。

「えっ! そんな、ごめんなさい! 」

 フィンリーの言う事に少し遅れての反応に、フィンリーはルナに問いかけた。

「また何か妖精たち話した? 」

「……ハーデンさんから聞かれたことをだいたい……」

 後ろめたそうにフィンリーに伝えるが、妖精たちはどんどん話してしまう。

『ルナのことはこんやくしゃだって』
『しばらくしたらこきょうにふたりでもどるからってはなしてたよーー』

 妖精たちの勝手な報告に顔色をコロコロと変えるルナをフィンリーは観察する。

「ルナは僕と二人っきりなはずなのに、話し相手が多くて忙しいね」

 と、片膝をついて笑った。
 妖精たちは止まらない。

『メイドふくはフィンリーのしゅみなのかとかきかれてたよーー! 』
『しゅみですってこたえてたよーー』

 顔が赤くなっていくルナに、フィンリーはため息をついて、テーブルの席から立ち上がった。

「……何を聞かされてるかは、ルナの部屋で聞いてもいいかな? 」

「……はい」

 フィンリーはルナの手を引いてルナの部屋に向かった。

ーーーどこまでも妖精たちがついてくるのだけど。




end
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