村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第三章 冒険者同行編

26.主人公とは

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 店を飛び出したケビンを探すアーサーとトニー。

「あいつ、なんであんないきなり飛び出したり……」

 並走しながらアーサーは呟いた。

「アーサーさん、それはあなたたち冒険者にはわからない感覚なんです」

「どういうことですか?」

「私も昔ありましたので……同じような時期が」

「トニーさんも?」

「えぇ。アーサーさん。このまま探してても拉致が明かないですね。手分けして探しましょう」

「分かった。トニーさんは左を探してくれ」

「かしこまりました」

 分かれて捜索を始めてから数分、トニーはある裏路地を見つけた。
 そこにある酒の入った大きな樽の陰から小さな足が出ていた。

「ケビン殿。見つけましたぞ」

「あ、トニーさん」

 樽の陰には膝を抱えてうつむくケビンがいた。

「ねぇトニーさん。俺は本当に冒険者になれないの?」
 顔を上げこみ上げる気持ちを抑えるような震えた声でケビンが尋ねた。

 ……。

 数秒の沈黙が生まれた後トニーが話し始める。

「本当じゃ。冒険者の殆どは王族の出か冒険者の両親の持つ遺伝のみ。ケビン殿お主は限りなくゼロに近い」

「やっぱりそっか……俺はこれから村人として生きていくしかないのかな……」
 ケビンは上げていた顔を下ろし膝で涙を拭った。

「ケビン殿。お主が読んだ本の登場人物は勇者様だけだったかい?」

 ケビンはキョトンとした顔をトニーに向ける。

「そんなことはありません。その勇者様にはパーティーメンバーや手助けしてくれている人がたくさんいました」

「その通りじゃ」
 そういうとトニーは膝をつきケビンの肩を持つ。

「わしは思うんじゃ。その本は『勇者様の物語』だと」

「それは……そうですよね」

「ふぉふぉ。しかしなケビン殿。その本の主人公はあくまで勇者様じゃ。しかし、これから生きていくケビン殿の物語の主人公も勇者様だと思うかい?」

「あ、それは……」

「ケビン殿の物語の主人公はケビン殿じゃ。それは勇者様かそうじゃないかで決まるものではないぞ」

「お主は村人じゃ。勇者様にはなれない。じゃがな。勇者様もなりたくても村人にはなれないんじゃ」



「どこで生まれても、どんな仕事でも、それを全うすれば輝くことができる」

「元村人の『スーパーアドバイザー』トニーマクレガンのモットーじゃ」

 掴んでいたケビンの肩をぎゅっと握り、微笑んだ。

「へ、トニーさんって冒険者じゃなかったの……?」

「わしは一言もそんなこと言っておらんぞ?」
「おう、そうそうさっきの返事を返しておらんかったの」

「さっきの?」

「わしはオリバービレッジという小さな村で愛する孫娘二人と生活しておる。だからつきっきりは難しいが王都に来るときには必ずケビン殿に会いに来ようかの」

「え、あ、あの。よ、よろしくお願いします!」
 ケビンは立ち上がり紅い瞳を輝かせながら深々と頭を下げた。

「ふぉふぉ」

「トニーさん! ケビンは見つかったかい? って、いたのか」
 アーサーがトニーの後ろからやってきた。

「アーサーさん」

「ん? どうしたトニーさん」

「先ほどのこともあって少しでも悪かったと思ってくれておるのなら、ケビンを連れて一緒に生活してはくれませぬか?」

「は? どうして俺が。」

「お願いします! アーサーさん」

「私からもお願いします。」

 頭をポリポリと掻き視線を逸らしたアーサーはそれに応える。

「あーわかったよ。だけど俺は戦闘のことしか教えられねーぞ」

「構いません。仕事に関しては私からケビン殿に伝えますから」
「良かったのケビン殿」

「は、はい! トニーさんありがとうございます! アーサーさんこれからよろしくお願いします!」

「あぁ、よろしくな」




「こうして、トニーさんとアーサーとの生活が始まったんだ」

「へぇケビンにもそんな純粋な時期があったのね」

「ナヴィそれはどういう意味だ」
 むすっとした顔を見せるケビン。

「いいえ、何でもないわ。おじいちゃんは本当に優しい人ね。だからたまに王都に行くと言っていたのね」

「あぁ、でも最初は驚いた。村人ってこんなに地味な仕事なのかって」

「あぁ、それはあたしも思ったわ。せっかくこっちに来たんだからもっと派手な職業がよかったしね」

「え、こっちに来たってどういうことだ? どこか別の場所から来たのか?」

「い、いや、べ、別の街よあはははは」

 急に焦りだすナヴィにケビンが笑った。

 面白いな、こいつ。

「まぁいい。そこからはいろいろ教わったよ。仕事の大切さとか、冒険者とのかかわり方とか、戦闘に関してはアーサーが教えてくれた」

「アーサーさんも相当強いってハンナから聞いたわ。そりゃあなたも強いわけね」

「まぁな。もちろんトニーさんにも戦い方はいくつか教えてもらった」

「そんなことで俺は村人としての案内、仕事終わりに戦闘の訓練をして徐々に力をつけることができた」

 そんな日々が続き数年が経った。




 ケビンの案内所に白髪の老人が入ってきた。
「いらっしゃ……トニーさん!」

「やぁケビン。元気にしてたかい?」

「トニーさんトニーさん! 見てください。俺の胸のタトゥー!」
ケビンの胸にはエメラルド色のダイヤ形をしたのタトゥーが一つ輝いていた。

「お、ケビン。ついに『ガイド』になったんじゃな! おめでとう!」

「ありがとうございます! これもトニーさんのおかげです」

「ふぉふぉ。わしはなにもしとらんぞ。お主の努力じゃ」

「おいおい、俺も忘れんなよケビン」

「アーサーはガイドになるのには直接関係ないでしょ」

「クッソこいつ、いうようになりやがって!」

 ケビンの首に腕を巻き付け締め上げるアーサー。トニーはそれを静かに見守っていた。

「トニーさん?」

「ケビン、アーサーさん少し話があります」

「「話?」」

「実は最近大きな仕事が入りそうでもしかしたら次ここに来るのが相当先になってしまうかもしれません」

「大きな仕事?」

「えぇ実はテリウス様から予約を頂きまして。多分大規模な遠征の同行になりそうかと」

ケビンが机に手を置き立ち上がった。

「え! あのテリウス様ですか?」

「実力は王都一と言われたテリウスのパーティーか。かなりのでかい仕事だな。トニーさんに依頼するってくらいだから魔法幹部の討伐とかの上級クエストだろうな」

 ケビンが心配そうな顔をしながらトニーを見つめる。

「ケビン。大丈夫じゃ。わしはどんなに遅くなっても必ず帰ってくる。孫娘もおるしの」

「前に言ってた姉妹ですね」

「あぁそうじゃ。それにケビンお主もな。まだまだ伝えたいことはたくさんあるからの」

 トニーはケビンの頭を撫でた。

「待ってます。それまでしっかりと仕事をこなして見せますね」

「ふぉふぉ。それじゃまたの」

「えぇ。また!」

それがトニーマクレガンの最期の言葉と後姿だった。
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