村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

文字の大きさ
29 / 262
第四章 『上級ガイド』のダンジョン探索編

29.悪戯の鍾乳洞

しおりを挟む
 レイの依頼があってから数日後。

「それじゃ、行ってきます!」

 装備を整えたナヴィが小屋の外からエンフィーに手を振る。

「お姉ちゃん! 一人は初めてなんだから気を付けてね!」

「もちろんよ。あ、あとデニスさんが好き勝手やらないようにちゃんと見張っといてね!」


「し、しませんよそんなこと」

 苦笑いのデニスもナヴィに手を振った。


 その後ナヴィが見えなくなるまで手を振った二人は仕事に戻る。

「さぁデニスさん、仕事に戻るわよ」

「……えぇ、今日も頑張ります」

 ん? まぁいいか。

「それじゃそっちの店番よろしくね」

「かしこまりました」

 まぁ今回の探索は三日程度って言ってたし、心配するほどじゃないわよね。




 ナヴィは村から西の方角ある『悪戯の鍾乳洞』というダンジョンを目指していた。

 んー本当は乗り気じゃなかったけどあんなこと言われたらねぇ。



 依頼を受けた日のこと。

「あの、実はもうすぐ妹の誕生日で……本当はそのダンジョンにあるレアアイテムをそのまま渡したいのですが、そうすると勝手にダンジョン攻略されたと妹は嘆くんです」

「ですから、マップや攻略情報をプレゼントとして、手助けできればなと思って……」


「す、素敵です……」

 ハンカチで目から出てきた水滴を拭くナヴィ。
 レイの手を取り目を光らせながら言った。

「承知しました! 必ずやこの私が、妹様が安全安心でダンジョン攻略ができるマップと攻略情報を手に入れてみせます!」

「あ、ありがとうございます!」


 とはいえ勢いで引き受けてしまったけどやっぱり一人は寂しいわね。

「いやぁでも、素敵ね。兄弟愛というものは素晴らしいわ」
「現実世界のあたしのお兄様は元気かしらね。昔は一度たりともそんなこと思ったことないけど」


 そんな中ことを呟いているうちにナヴィはダンジョンの入り口に到達した。

「なんか、全体的に暗いわね……鍾乳洞だから当たり前かしら」

 海岸沿いに位置する『悪戯の鍾乳洞』は暗いが中は広く、洞窟のようなエリアになっている。

 さて、行くとしますか。

 ダンジョンに入り少しするとナヴィの体がブルっと震えた。

「うぅ、寒いし暗いわね、まぁローブがあるから幾分は大丈夫だけど」
<リヒト!>

 杖の先端が輝きあたり一帯を照らした。

「ふむふむ、まずは光系の補助魔法必須ね。寒さも凌げる防具ならなおよしっと」

 ナヴィの持ち物には常に情報を書き留めておくノートがあり、今日もそれが活躍していた。

 メモをしながら歩いていると左足で踏み込んだ岩がスイッチのように下に埋まっていった。

「ん? あたしなんか踏んだ?」

 その岩を踏んだ瞬間、ナヴィの目の前に鉄球のようなものが目の前すれすれを通っていった。

 あんぐりと口を開けたナヴィ。

「忘れてたわ。ここ『悪戯の鍾乳洞』だったかしら。そりゃトラップたくさんあるわよね……」

 やばいやばい、これ一回でも引っかかったら死ぬやつじゃん。

 ここでナヴィはハッとあることに気づく。

「待って、でもこれって探索だし攻略情報を調べないといけないから全部の罠を調べる必要があるってことよね……?」

「な、なるほどね、だから一人行動ができるのも『上級ガイド』レベルじゃないといけないってことなのね……」

 あたし、今日生きて帰れるかしら……

 そんなことを呟いていると前には三つに分岐された道が見えた。

「んー、これに関してもあたしの予感は確実に右側なのよね。でもそしたら中央と左に何があるかわからないし……まぁいいか、ここまで来たらこのダンジョンの全てを調べるつもりで行くわ!」

 そういうと左側にある道をへとナヴィは進んだ。

「キュイキュイ! キュイキュイ!」

「わ、可愛いイルカ型のモンスター!」

 ナヴィの数メートル先にある水溜まりから、近くの水溜まりへと素早く移動していくモンスター。

「素早いわね。初見だから倒すのまだもったいないし……」

<ディレイムーブ!>
 モンスターの動きが急激に遅くなった。


「ちょっと近くで見せてねー。」
「魔力を高めて持続時間を伸ばしてっと。さぁお絵描きターイム!」

 これがナヴィの常套手段である。魔法を掛けスケッチをしたり、攻撃方法を確認したりしながらデータ収集していく。

「おっけい。もう終わった! じゃあいくよ」

 魔力を一気に高める。

<エアシュート!>

 空気の弾丸が遅くなったモンスターの弱点を正確に当て一撃で倒した。


「ふぅ、まぁこの程度のレベルのモンスターならいくらでも相手にできるわね。ん? あれは……」

 モンスターの死骸が消えナヴィの身体のサイズほどある大きな宝箱に変わっていった。

「おぉ、大きな宝箱ね、中は何かしら。」

 うきうきとした気分でその宝箱を開けると中から紫色のガスが大量に放出された。

「え!ちょっ、これ、毒ガス?」

 慌ててローブで口元を塞ぐナヴィ。

「ちょっと吸っちゃったじゃないの、これも悪戯ってことね。ノートに書いておかなくちゃ。」
「イルカのモンスターを倒すと宝箱が。中に毒ガスが入っているため開けないように……と、よしオーケー」

 ナヴィはノートを取り終えると自分の身体が紫色に変色していることに気づいた。

「あら、毒にかかっちゃった」
<エンジェルキュア!>

「これで良し、さっきから状態異常のトラップを見かけるので、アイテムか状態異常回復系魔法が必須……と」


 その先を進んでみると行き止まりとなっていた。

 んーやっぱり行き止まりね。行き損だったかしら。はーあ。冒険者は楽でいいわね。あたしから情報聞いたらこんな罠にも引っかからないし時間も無駄にならないし。もっと感謝してほしいわ。

「さぁ来た道戻って中央ね」


 中央の道ではモンスターは出現しなかったが、大掛かりなトラップがいくつもあり。ナヴィはそのすべてのトラップにかかっていた。

「くそ、今ので何個目よ。普通に食らっちゃったじゃない」
 <ヒール!>

 トラップで受けたダメージを回復した。

「あら? 奥のところに宝箱かしら……」

 今度はナヴィの腰の位置くらいの中くらいの宝箱である。

「さっきみたいに毒ガス出たら嫌だけど、これも探索よね」

 一度躊躇はするが、勢いよく宝箱をあけ、ナヴィは下にしゃがみ込む。

「何も起きない、普通にアイテムが入ってるじゃない」

 『罠外し』
 一定の距離にある罠をすべて解除する。

「凄いいいアイテムじゃない! 探索のあたしには使えないしこの大掛かりな罠の先にあるっていうのがなんとも皮肉っぽいけど。一応これも書いておこうかしら」

 これで中央の道も終わりね、流石あたし。やっぱり右側の道だったわね。もうトラップもめんどくさいし早く終わらせたい……

 右側の道を進むとその先を見てナヴィは一度立ち止まった。

「え、次は四つの分かれ道……」


 ……か、帰りたい。

 目に涙を浮かべながらダンジョン探索を続けていくナヴィであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...