村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

文字の大きさ
198 / 262
第十二章 ナヴィとグローリア案内所

198.ナヴィの覚悟

しおりを挟む
「さぁ再戦といこうじゃないか。案内人ナヴィ・マクレガン!」

 両手を広げ見開いた目でナヴィを威嚇するヴィオネット。

「ナヴィ。条件は前と同じでいいな? お前がレミアに勝ったらここで雇うのを認め好きにしていいぞ」

「はい。そのつもりで来ましたから」

「だが負けたらここで立ち去ってもらう。今度こそてめぇの田舎くせぇ村に戻ってもらうぞ」

「もちろんです……」

「ふーん」

 顔色一つ変わんねぇな。やはり相当な覚悟を持って戻ってきたって感じだな。

「レミア」

「はい」

 レミアはゆっくりとナヴィの元へと向かっていった。

「昨日に引き続きね。レミア」

「はい。ですがナヴィさん。昨日あれだけ私にコテンパンにされたのによくこの再戦を受け入れましたね」

「……そうね。でも今回は違うよ」

「違う……?」

「うん。あたしは案内人だからさ」

「……その言葉の意味が分かってなかったから忠告のつもりで昨日あれだけやったのに」

 レミアの体内に溜まっていた魔力が感情の変化とともに勢いよく漏れ出した。

「!? これは……」

「ナヴィさん。私は同情なんてしません。あなたのそういう態度、私には理解できません。ですから。全力で叩き潰します!」

「すごい魔力ね……でもそうじゃないと困るわ」

「はい?」

「そのくらいじゃないとあなたたち二人にあたしの覚悟が伝わらなもの」

「……この期に及んでまだそんなことを」

「さぁレミア、リベンジマッチよ」

「ふざけないでください! ナヴィさんが私に勝つなんて不可能です!」

 レミアの右腕が龍の鱗に包まれていく。

「あの腕……前の戦闘で最後に見せた……そう、最初から決めるつもりね」

「一瞬で終わらせてあげますよ」

「きなさい。レミア!」

「はぁぁぁぁ!」

 レミアはナヴィに向かい全速力で突っ込んでいった。


 私は『天才』という言葉が嫌いだ。

 しかし神様はなんと意地悪なことをするんだろう。

 不運にもその天才と呼ばれる人物が一番近くにいる環境で育った。

 姉さまは紛れもなく天才だった。

 魔力量も、代々受け継がれていたドラゴン属の力も私とは比べ物にならないほどの素質があった。

 そしてもっと嫌いだったのはそんな姉さまがその才能に胡坐をかかなかったこと。

 誰だってそんな才能があったら、周りを見下して努力を怠るはず。

 でも姉さまはそうじゃなかった。

 いつだって人一倍努力して誰よりも人のためにその力を使おうとしていた。

 その背中を追いかけて、死ぬほど努力した。

 でもそれはただの凡人の努力でしかない。

 天才の努力には追いつくことはできないんだから。

 生まれた時からずっと『天才ヴィオネットグローリアの妹』そういう覚え方をされてきた。

 私はそれがたまらなく嫌だった。


 そしていま私の目の前にいるナヴィさん。

 彼女は力の使い方を誤っていた。

 かわいそうだと思った。どうしてそんな才能を持っているのにそれと向き合おうとしないのか。

 でも内心はほっとしていた。これで私と同じだ……と。

 今目の前にいるあなたはそんな人……だった。

 けど今ナヴィさんはきっとその殻を破ろうと必死に足掻こうとしている。

 また天才が私を一人置いていく……。

 私だって。姉さまやナヴィさんみたいになりたかった。形は違えど二人のような才能があればきっと誰よりも……。


 ごめんなさいナヴィさん。あなたのことは応援したい。

 でも私はもう自分が凡人だって、天才には敵わないって思いたくないの。

 だからどんなことをしてでもあなたを倒す。ここで天才を倒せば私だって周りにきっとそうやって見てもらえる。

「悪く思わないでください、ナヴィさん」

「え?」

 昨日は大雨。炎の威力は半減されていたけど今日は快晴だった。

 そして私は今この最初の一撃に全力の魔力を注いでいる。

 ナヴィさんがどんな強力な攻撃魔法を使っても、どんな強靭な盾魔法を繰り出してもその全てを押しつぶす。

 あなたが唯一持っていない魔術の才能を!

「はぁぁぁぁぁ!」
<ドラグレットブレイズ!>

 レミアの右手から超高密度の炎でできた光線のようなものが発射された。

 その時だった。
「へ、こ、これは!?」

 レミアが光線を発射した瞬間ナヴィの顔が一瞬だけ見えた。

「ごめんねレミア」

「!?」

「あたしはあなたには勝てないよ。だからね」

 ナヴィが杖を構え魔法の詠唱を始めた。

「くっ、これに勝る魔法なんて」

 でもおかしい、この魔力の波長は何!? 前回の戦闘でも感じなかった。

「あたしは案内人。冒険者じゃないからね」

 詠唱が終わったナヴィは一瞬レミアに微笑みかけ、レミアが発射した炎の光線に対し、両手を広げ全身で受け止める体勢を取った。

 そして、その光線が周りの野原を焼け焦がしながらナヴィに襲い掛かっていった。


「うわっすっげぇ威力だな。驚いたぜレミア、お前いつの間に……」

「はぁ、はぁ、はぁ。姉さま。いえ、違います」

 魔力が枯渇し呼吸が乱れた状態でレミアはヴィオネットに応答した。

「違うって……今日は晴れだぜ、昨日よりも威力は増すとは思っていたがまさかレミアの炎がここまでとは……これは俺もうかうかしてられな……」

「だから違うんです姉さま! 私の身体よく見てください」

 レミアは顔を下に向け怒鳴り声を上げた。

「ん……? お前その青い光……それに微量だが筋肉量と魔力向上の」

「まさか、こんな答えの返し方をされるなんて……」

「レミア……?」

「私が気づかずそのまま直撃させていたらどうしたんですか」

「あ、あはは。まぁその時はその時だね」

 光線の余韻で発生していた煙が徐々に晴れ、その中から黒焦げになったナヴィが現れた。

「なんであのタイミングで私に強化魔法を掛けたのですか……」

 涙目になりながらナヴィに問いかけるレミア。

「それが、あたしの目指す案内人だから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...