262 / 262
第十三章 ブラッディフェスト 序章
257.四つ目
しおりを挟む「ちょっと遅かったな。レミア。お前の姉は死んだぞ」
「ディノリア……さん?」
「あの人が写真の……」
レミア達の視線の先にはディノリアの右手で首根っこを掴まれたヴィオネットがいた。
「姉さま……姉さまぁぁぁぁぁ!」
「うそ……ヴィオネさん……」
「ヴィオネットさん……」
ナヴィや同行した冒険者もヴィオネットの想像もしなかった姿に唖然とする。
「はぁ、はぁ。まさか、ここまで俺を追い詰めるとはな……」
「姉さま! 今助けに行きます!!」
「ちょ! レミア!?」
レミアはバーサーク状態になるための魔力を練りながらディノールの元へと走っていこうとした瞬間。
「……レミア、来るんじゃねぇ!!」
「姉さま!?」
その言葉で足を止めるレミア。
「ふん。まだ生きていたのかヴィオネット。しぶといんだな」
「ディノリア……お前もしかして……」
ヴィオネットがディノールにしか聞こえないほどの声量で何かを言い放つと、目を見開きヴィオネットを投げ飛ばす。
「がはっ……げほっ、げほっ」
「はぁ、はぁ、ふざけたことを言うな。ヴィオネット。俺は。お前を、そしてこのデンバード山脈にいる全ての人間を殺しに来ただけだ。それ以外にない」
「はぁ、はぁ。ほざいてろ。だがその様子だと、俺の言っていたことはあながち間違いじゃねぇみたいだな」
「姉さま!」
「ヴィオネさん!」
「ヴィオネットさん」
二人の様子を見ていたナヴィ達が加勢しようとヴィオネットの元に近づく。
「来るなぁ!!」
再度声を荒げナヴィ達の加勢を止めるヴィオネット。
「姉さま! 今私たちが加勢すればディノリアさんを倒せます!!」
「必要ない。こいつは俺がやらなきゃダメなんだ」
「ヴィオネさん! そんなこと言ってる場合じゃ」
「いいから下がってろ!!」
部屋中にヴィオネットの怒鳴り声が響き渡った。
「「「!?」」」
ヴィオネットは背後を警戒しつつゆっくりとレミア達の方に振り返る。
「過信をしているつもりはねぇし、お前らの力を疑っているわけでも、足手まといになるとも思ってねぇ」
「ヴィオネさん……でもヴィオネさんがここまでやってくれたらあたし達で一気に」
「そうじゃねぇ」
「え……」
あぁ。こういう時に気の利いた一言でも言ってられるような語彙力を持ち合わせてりゃ良かったなぁ。
「ふぅ。ナヴィ。レミア」
「「?」」
「俺の背中。よく見とけ」
口角を上げ、柔らかい表情を二人に見せたヴィオネット。
そこからすぐにディノールの方に視線を向け、再度戦闘態勢に入る。
「何を話していたんだヴィオネット」
「あぁ、大したことは話してねぇ。ただ俺の背中をよく見とけってな」
「……死ぬ覚悟ができたのか」
「んなわけねぇだろ。てめぇをぶっ飛ばす俺の姿を見とけって言ったんだよ」
「だが、さっきまでの戦闘でもうわかっただろう。いくらお前がアナザーフォームになったとしても俺には敵わない」
「かもな」
「ではこの戦闘に意味はもうないだろ」
「……さっきまでの戦闘とここからの戦闘は訳が違う」
「何……?」
「お前を倒す。この目的は変わらない。だが何のために戦うかは変わった」
「……?」
「俺は案内人だ。だから俺はお前を倒すためにお前と戦うんじゃない。後ろにいる奴らを守るためにお前と戦うんだ!!」
ヴィオネットがそう言い放つと瀕死の状態だった体の内側から大量の魔力が漏れ出した。
「くっ。魔力が……漏れ出している!? ん!?」
ヴィオネットの胸元にある三つのタトゥーが光始めた。
「まさか……」
ヴィオネットの胸元に四つ目のタトゥーが浮き上がってきた。
ディノールはヴィオネットの胸元に増えたタトゥーを見て目を見開く。
その様子を後ろから見ていたナヴィとレミア。
「ねぇ、なんかヴィオネさんの魔力。すごい勢いで跳ね上がってるよね? というか、漏れ出してる?」
「はい。私も見たことがありません。あんな状態の姉さまを。しかし」
「……?」
「あれだけ瀕死の状態だった姉さまが自力で立ち上がり、魔力が増大している現状。考えられるのは一つしかありません……」
「……一つ?」
「はい。冒険者としての道を辿ることができない案内人。しかし、そんな案内人達でも希望を持ち誰もがその頂に憧れを抱く。唯一無二の存在ともいえる案内人の最高峰」
「この魔力の波長は……おじいちゃんと……似てる?」
「伝説の案内人。トニー・マクレガン。その横に並び立つことのできる存在の証」
その存在がまさか私の姉さまだなんて……。
「つまり今のヴィオネさんは」
レミアのその言葉で期待に胸を膨らませたナヴィ。
「はい。間違いありません。今の姉さまは。スーパーアドバイザー。『奇龍』ヴィオネット・グローリア」
「凄い覇気……」
「まさか、このタイミングでスーパーアドバイザーになるとはな」
「そうみたいだな。それに比べいつまでたってもお前のタトゥー二つのまんまだぜ」
「……そんなことは強さとは関係ない。ただの肩書だ」
「あぁその通りだ。だが、これでようやく戦える」
「どういうことだ」
「ふん。お前は知らないのか、ディノリア」
「……」
「なら体感させてやる。スーパーアドバイザーの強さを!!」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる