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第2章 2人の娘「「ねえ、パパ、誰この子?」」

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 ヴィオレとの一件が終わり、午後からはは非番だ。
 面倒ごとに巻き込まれずに、ホッとしたはずのコウスケの何故か心は暗く沈んでいた。

「パパ―ッどこか連れてって!」

 そんな気持ちを知らず、スカーレットはじゃれてくる。

「……賭博場と娼館どっちか好きな方選べ」
「どっちも女の子を連れてく所じゃないでしょ!」
「賭博場には結構女いるぞ」
「ねえ、闘技場は? あそこなら私は試合楽しめるし、パパもどっちが勝つかおカネ賭けれるじゃん」

 突然、玄関をノックする音が聞こえた。
 来客の予定はない。
 不思議に思いながら出ると、そこには初老の男が立っていた。

「ヒセキ・コウスケ様ですね?」
「そうだけど」
「火急の用事がありまして馬車にご乗車ください」

 些細な動作から見るに剣術の心得があるようだ。
 馬車というのも気になる。
 どこかに自分を拉致するつもりなのだろうか?
 コウスケは金儲けとストレス発散のために、あえて誘いに乗ることを決めた。

「……分かった。悪りい、スカーレット、ちょっと急用が入ったわ」
「えー!」

 しめあげて自白させるときのために、小型の魔法録音箱をポケットに入れて馬車に乗り込んだ。
 初老の男は馬車を動かし始める。


「で、どこに連れてって俺を袋にすんだ?」
「とんでもございません。」



 馬車は食堂に到着した。
 どうやら貴族や大商人など上流階級が利用する店のようだ。

「奥さまはこの店の一番奥のテーブルです」

 連れてきた目的は拉致や暴行ではないようだった。

「ありがとよ……おらあ!」

 だが、まだ確証は持てなかったので、少しでも敵を減らす為に初老の男を殴って失神させた。 ついでに財布や身に着けている貴金属も奪う。

(こんなとこに連れてかれるなら身なり整えとくべきだったぜ)

 軽装できたことを後悔しながら、食堂に入り言われたテーブルに向かった。

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