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第4章 強盗殺人の現行犯でお前を拘束する

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 例のものがありそうな場所を、コウスケは朝早くから、しらみつぶしに探していた。
 しかし、結果は全てハズレ……。
 今日は夜勤なので、できればさっさと切り上げて家に帰って寝たい。
 だが、確実な証拠であるアレは、多少無理をしてでも一刻も早く見つけて自分の手元におさめたかった。

 そういえばスカーレットとヴィオレは最近、自分に隠れてどこがで働いてるようだ。
 1人気ままな生活をするにはともかく、子供2人の生活を支えるには、もう少し収入が無ければと痛感する。
 しかし、今追っている罪人を捕まえれば、その悩みも消える。

 そんなことを考えながら、郊外にある煌剣団B級冒険者修練所にこっそりと侵入した。
 強そうな奴が約20人。B級だけではなくA級冒険者もチラホラいるようだ。
 だが、目的である控室の周辺には、運がいい事に誰もおらず、簡単に辿り着けた。

(さて……)

 ドアノブをまわす。
 
(……)
 
 鍵か掛かっているようだ。

「おらあ!」

 鍵を探すのがめんどくさいので、力任せにドアノブを引っ張った。
 控室の中に入り、収納箱を片っ端から開けていく。
 全部鍵がかかっていたが、力任せにこじ開けた。
 開ける度に鍵が壊れる大きな音が響き渡る。 

「おらあ!」

 貴重品を奪いながら、収納箱を壊し続けた。
 とある箱の中に分厚い冊子入っていた。
 気になったのでページを開いて見てみる。

「ハハ、これは面白れえな」

 冊子の中身は帳簿だった。
 例の非合法売春宿のカネの流れや、公金の横領など犯罪行為の証拠になる事柄が、沢山に記載されている。
 記されている事を追えば、例の物的証拠も手に入るかも知れない。。
 満足して冊子を閉じたその時、

「それを渡してもらおうか」

 背後から首元にナイフを突きつけられた。
 音も気配も全く感じなかった。
 だいたいの検討はつくが、横目で誰なのか確認する。
 顔を覆い隠したフード。
 身軽そうな装束。
 やはり奴らのようだ。

「ゴミクズに洗脳されて、ご苦労なこった」
「貴様、誰をゴミクズと言っている?」
「ヴェルデに決まってるだろ。俺が死ねって言ってたって伝えとけ」

 普段は挑発のために、こう言った物言いをする。
 だが今回は何も考えず、ただの本音を吐いた。

「あの方を侮辱するとは……許さん」

 激怒した襲撃者は刃を首筋に突き立てる。
 恐らく切断するつもりなのだろう。
 その前に腕を掴んで、握りつぶした。

「ぐうぅッ」
「調子に乗ってんじゃねえぞ」

 呟きながら、足の甲を力の限り踏みつけた。
 音と感触から察するに粉砕骨折したようだ。

「てめえらなんぞ殺しても、罪に問われる事はねえんだからな」

 とはいっても、死体が出ると面倒くさいので、もう1本の足も踏んで骨を折るだけで、終わらせた。

 動けなくなった事を確認してから周囲の気配を探る。

(ドアの前を取り囲むように3人……少し離れた位置に隠れているのが2人)

 全員、上手く気配を消している。探り当てるのも一苦労だ。

(遠方からボーガンで狙っているスナイパーが2人。これだけか)

 こいつらは速さや跳躍力を活かした、連携攻撃が得意だ。
 部屋の外ではキチンとその体勢を整えて待ち構えている。
 実に厄介だ。

「おらあ!」

 とりあえず、ドアを開けて、正面の奴に蹴りを入れた。
 しかし、身をそらしてダメージを軽減される。
 その隙に別の奴が横から斬り込んできた。
 急所を狙ってきている。
 避けながら、転ばせようと足を延ばす。

(おっしゃ)

 引っかかり体勢は崩れた。
 しかしすぐに持ち直し、引き下がった。
 また違う奴が、死角になっている所から急所を狙っている。
 こいつも、やられそうになったら引いて、別の奴が違う方向から攻撃してくるだろう。
 
(狙いは俺を疲れさせることか)

 全力を出せば倒せるだろう。
 だが、今日は夜勤である。
 もう仮眠をとる時間はないので、このまま勤務に行くしかなかった。
 しかし、ここで体力を使えば勤務中に寝てしまうかも知れない。
 そうなれば別の儲け話をいくつか失う事になる。
 それだけは絶対にさけたかった。
 状況を好転させる方法が浮かばず焦る中、大きな声が耳に入ってきた。

「音がしたのは、こっちです!」
「いったい何があったというのだ!?」

 騒ぎに気付いた煌剣団の冒険者が3人ほど、向かって来ているようだ。
 こいつらの仕事は諜報、工作、暗殺。正面切っての戦いなら、煌剣団の方が圧倒的に有利だ。

「おーい! こっちだ! 助けてくれええ!」

 大声を出して助けを求めた。
 3人とも、見た感じ相当強い。

「貴様ゲス勇者! 先日の事に飽き足らず今度は修練所に物取りか!?」
「違う! 俺は便所を借りに来ただけだ。そしたらここにいる奴らに突然襲われたんだ!」
「白々しい嘘を……」
「団長を惑わすだけに飽き足らず、それを笠に着て我らをたばかるか」
「全員、団長と煌剣団の名誉ためにゲス勇者とその仲間達を討ち取れ!」

 被害者を装えなかったのは残念だが、邪魔者は排除してくれるようだ。
 剣を構えた3人はこちらに突撃してきた。
 逃げ場を失った襲撃者達は、必死に防戦する。
 コウスケは攻撃を避けながら、

「お前ら何やってんだ!? 早く助けてくれよ」

 伏兵が隠れている場所を指さした。
「あそこに仲間がいるぞおお!」
 
 案の定煌剣団の1人が伏兵のところに向かっていき戦い始めた。
 チャンスなので、色んな事を伝える事にした。

「ひいいい! ひいいい! スナイパー早く援護してくれえ」
「狙撃手がいるだと!? どこだ!?」
「あと、こいつが控室や収納箱の鍵を壊してたぞ!」
「なんだと! どこまで我らを侮辱すれば気が済むのだ!」

 現在、煌剣団は1人がスナイパーを探し始め、もう2人が伏兵も合わせた計5人の襲撃者と戦っている。
 数がいる襲撃者が有利の様に思えたが、こいつらは、コウスケから帳簿を奪えないばかりか、目立つ騒ぎを起こしているので、任務に失敗している。
 一刻も早くこの場から早く離脱したいはずだ。

「ゲス勇者以外は中々手ごわい! 応援を呼んできてくれ」
 
 だが、煌剣団は簡単に逃げられるような甘い相手ではない。

「賊はこっちだぞ!」
「狙撃手はどこだ!?」

 煌剣団の応援がポツポツ来始めた。
 これから大乱戦になるだろう。

(それじゃ私は、おいとまさせて頂きます♪)

 双方の注意が離れた今が逃げる好機である。
 コウスケは、そっとこの場を後にした。


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