パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第二章 ダンジョン編

第39話 新たな剣

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 剣のあれこれを全部決め終えて、再び馬車に乗る。完成したらお弟子さんがラムハの道場まで届けてくれることになった。

 発車直前に師匠が言い忘れたことがあると馬車を飛び出したので、中で座って一人で待っている。なんでも大事なことなんだとか。

 見送りに来ていたダグさんと師匠がひそひそと話しているのが馬車の中からでも見える。師匠が何かを言い終えると、ダグさんがにやりと笑い師匠の肩をポンポン、と叩いた。

「お待たせしました、出発お願いします!」

 御者さんに呼びかけながら、師匠が小走りで乗りこむ。

「何を話していたんですか?」
「秘密だよ」

 やはり「あの分」の件なのだろうか。だとすれば詮索するのはよしておこう。

 馬の嘶く声がして、馬車がゆっくりと進みだす。

 * * *

 ロンドのやつ、去り際に大事なことを言い忘れたというから何かと思えば、「意匠はコルネとお揃いか対になるようなものがいい」とはな。レオンからロンドに初弟子が出来たと聞いていたが、いたく可愛がっているようだのう。

 ロンド、儂に任せておけ。自分で言うのもなんだが、儂は国王様に献上するくらいには剣の意匠にも定評がある。

 最高の素材を使った剣に、それにふさわしい最高の装飾を施さずしてどうするのか。あの結晶を見たときから最高の剣を作ると心に決めておるわ。

 ああ、こんなに心が躍るのは久しぶりじゃ。魔力結晶が使えること自体があまりないし、特に最近はろくな素材が手に入っていなかったからのう。

 先の献上した剣だって、献上しろとだけ言われて素材は何も持って来やしない。用意できる中で最高の素材は使ったが、正直あまり乗り気ではなかったから剣の出来もいまいちじゃった。

 さて、まずは弟子と相談して意匠を決めるかの。

 * * *

 ダグさんの鍛冶屋に行ってから十日ばかり経った頃、ダグさんとお弟子さんが道場にやってきた。

「出来たぞい、最高の剣が」

 お弟子さんが届けるという話だったのに、ダグさん本人も剣の出来がよすぎて来てしまったらしい。

「こちらです」

 お弟子さんが、背負っていた入れ物から布にくるまれた剣を出す。まるでくるまれているのが赤子であるかのように布を丁寧に広げていく。

「これは──」

 見たこともないような凝った意匠の剣が一振り、姿を現した。鞘についている金属の細工はまるで黄金のように煌めいており、緻密な模様が鞘全体に描かれていた。

 柄には磨かれて輝きを一層増したあの魔力結晶が嵌めこまれており、柄頭まで細かく模様が刻まれていた。

 師匠と俺は言葉を失って、しばらくただ見惚れていた。

「こっちもあるぞい」

 気付けばお弟子さんが同じようにもう一つの剣を布から出していた。

 こちらも先程の剣と意匠は似ているが、魔力結晶は吸い込まれるような深い赤色に輝いていて、模様の色は炎のように燃えるような綺麗な赤色だった。

 俺はこちらの剣にもしばらく見惚れてしまった。なんて綺麗なんだろう。全てが、剣先から柄頭まで全てがただ美しい。

「満足してもらえたようじゃの」

 その声でハッ、と我に返る。そうだ、ダグさんたちが俺たちに剣を届けに来て──

「儂が全力で作った傑作じゃ。今まで打った中で最高の出来かもしれん。満足せんはずがないのう」

 うんうん、と頷くダグさん。

「どうじゃ、ロンド。お前さんの望み通りにしたぞい」

 話しかけられたのに師匠の反応がない。横を見るとうっとりとした表情で剣に見入っている。

 目の前で手を振るとようやく戻ってきた。唇を震わせながら師匠が喋りだす。

「素晴らしい剣としか言いようがありません。これはもう国宝級では……」
「言ったじゃろう、最高の出来かもしれんと。国に献上した剣なんて優に超えておるわ」

 ひえ……この剣を俺が持つのか──ただただ畏れ多い。

「お前さんたちの反応が見られて満足じゃ。帰るかの」

 輝く剣を両手に、俺たちは何度も何度もお礼を言いながらダグさんを見送った。
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