53 / 328
第三章 ティオール森林編
第50話 告白
しおりを挟む
コルネくんが話しかけてくれない。
こんなことは今までなかった。鍛冶屋への道中でも無言の時間はあったが、今のようにまるで話すのを躊躇っているようではなかった。
急にコルネくんがよそよそしくなった理由──心当たりは一つしかない。きっとあのことがバレたのだ。
バレたとして一体どこから知ったのか。可能性は二つ。
一つは昨晩、コルネくんは起きていて、一部始終を見ていた。もう一つはカモフラージュした血の染みと宿屋の主人の不在から推測した。
臭いや色を誤魔化すためにお酒を使ったが、扉の前にお酒をこぼしたというのは無理があったと思う。普通はそんな場所で飲まないだろう。やはり後者かもしれないな。
バレているとしてコルネくんは──僕に幻滅している?
染みから推測しているとすると、コルネくんは僕がドアの前で宿屋の主人を殺したと勘違いしている可能性が高い。まあ似たようなことはしているのだが。
主人が僕たちを殺そうとしたことを知らないわけだから、コルネくん目線だと僕は「宿屋がショボかっただけでその主人を殺した最低な人間」だと思われているということか?
「師匠がそんなクズだとは知りませんでした」「俺、もう師匠の下にいたくありません」「人として最低ですね」──そう言い放つコルネくんが脳裏に次々に浮かんで消えない。
本当にコルネくんにそんなことを言われたら立ち直れる自信がない。
明日、絶対に誤解を解かなければ。
* * *
「起きて、コルネくん」
体が揺さぶられているのを感じる。包み込むようにしっかりと掴まれている感覚、これはヘルガさんじゃないな……そもそもヘルガさんは必ずフライパンを叩くじゃないか。
「もうちょっと……もうちょっとだけ……」
「コルネくん、もう日が昇ってだいぶ経ったよ。ほら、起きて」
うーん、道場で寝ているにしてはベッドが硬くて聞こえる鳴き声が多いような──たしか昨日は野営をして……ということはここは森の中!
がばっと起き上がると師匠が驚いて飛びのいた。
「お、おはよう、コルネくん。話したいことがあるんだけど」
「俺が寝ていた間にそんなことが……」
一昨日、ベッド硬いなあなどと思いながらのうのうと寝ている間に殺されそうになっていたなんて…………きっと、師匠がいなかったら本当に殺されていただろう。
師匠がついていてくれてよかった……それと今度から宿屋では危機感を持とうと心に誓う。
「じゃああの染みはもしかしなくても血……だったってことですよね」
「えっ、コルネくん気付いてたんじゃないの?」
臭いが完全によくある果実酒だったし、色もそうだったから疑いもしなかった。場所は不自然ではあったけども、酒癖が悪いんだと納得してしまったし。
「じゃあどこで気付いたんだい?」
「昨日の師匠、なんか雰囲気がとげとげしているというか張りつめるような空気だったというか……いつもと違ったので何かあったんだと……」
「ああ、昨日はずっと報復に来るかもしれないと思ってあたりを警戒していたからかな。それがとげとげしてるように映ったのかもしれないね」
コルネくんには気付かれないようにしてたんだけど気付かれていたとはね、と呟く師匠。
昨日感じた違和感はやはりそれだったんだろうか──何はともあれ、師匠がああなっていた理由が分かってすっきりした。
これからの道のりは昨日と違って楽しく──ひたすら歩き続けるのがそんなに楽しくなるかなぁ。
こんなことは今までなかった。鍛冶屋への道中でも無言の時間はあったが、今のようにまるで話すのを躊躇っているようではなかった。
急にコルネくんがよそよそしくなった理由──心当たりは一つしかない。きっとあのことがバレたのだ。
バレたとして一体どこから知ったのか。可能性は二つ。
一つは昨晩、コルネくんは起きていて、一部始終を見ていた。もう一つはカモフラージュした血の染みと宿屋の主人の不在から推測した。
臭いや色を誤魔化すためにお酒を使ったが、扉の前にお酒をこぼしたというのは無理があったと思う。普通はそんな場所で飲まないだろう。やはり後者かもしれないな。
バレているとしてコルネくんは──僕に幻滅している?
染みから推測しているとすると、コルネくんは僕がドアの前で宿屋の主人を殺したと勘違いしている可能性が高い。まあ似たようなことはしているのだが。
主人が僕たちを殺そうとしたことを知らないわけだから、コルネくん目線だと僕は「宿屋がショボかっただけでその主人を殺した最低な人間」だと思われているということか?
「師匠がそんなクズだとは知りませんでした」「俺、もう師匠の下にいたくありません」「人として最低ですね」──そう言い放つコルネくんが脳裏に次々に浮かんで消えない。
本当にコルネくんにそんなことを言われたら立ち直れる自信がない。
明日、絶対に誤解を解かなければ。
* * *
「起きて、コルネくん」
体が揺さぶられているのを感じる。包み込むようにしっかりと掴まれている感覚、これはヘルガさんじゃないな……そもそもヘルガさんは必ずフライパンを叩くじゃないか。
「もうちょっと……もうちょっとだけ……」
「コルネくん、もう日が昇ってだいぶ経ったよ。ほら、起きて」
うーん、道場で寝ているにしてはベッドが硬くて聞こえる鳴き声が多いような──たしか昨日は野営をして……ということはここは森の中!
がばっと起き上がると師匠が驚いて飛びのいた。
「お、おはよう、コルネくん。話したいことがあるんだけど」
「俺が寝ていた間にそんなことが……」
一昨日、ベッド硬いなあなどと思いながらのうのうと寝ている間に殺されそうになっていたなんて…………きっと、師匠がいなかったら本当に殺されていただろう。
師匠がついていてくれてよかった……それと今度から宿屋では危機感を持とうと心に誓う。
「じゃああの染みはもしかしなくても血……だったってことですよね」
「えっ、コルネくん気付いてたんじゃないの?」
臭いが完全によくある果実酒だったし、色もそうだったから疑いもしなかった。場所は不自然ではあったけども、酒癖が悪いんだと納得してしまったし。
「じゃあどこで気付いたんだい?」
「昨日の師匠、なんか雰囲気がとげとげしているというか張りつめるような空気だったというか……いつもと違ったので何かあったんだと……」
「ああ、昨日はずっと報復に来るかもしれないと思ってあたりを警戒していたからかな。それがとげとげしてるように映ったのかもしれないね」
コルネくんには気付かれないようにしてたんだけど気付かれていたとはね、と呟く師匠。
昨日感じた違和感はやはりそれだったんだろうか──何はともあれ、師匠がああなっていた理由が分かってすっきりした。
これからの道のりは昨日と違って楽しく──ひたすら歩き続けるのがそんなに楽しくなるかなぁ。
0
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる