パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第四章 初めての単独討伐クエスト編

第62話 討伐クエスト 其の二

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 次の日、俺はいつもより少し早く起きる。初めてだと何かと時間がかかるのを見越してだ。

 身支度を整えてから、昨日用意しておいたクエストに持っていく物を確認する。ドラゴン討伐のときに作ってもらった冒険者証とダグさんに打ってもらった剣──この二つだけなのだが、心配になって何度も確認してしまう。

 するとヘルガさんがフライパンをカンカンと叩く音が近づいてくる。食堂に向かう途中で会ったヘルガさんは少し驚いた顔をしていた。ほとんど表情は変わっていないはずなのだが、不思議とそう感じた。

「おはようございます」
「おはようコルネくん、昨日はよく眠れたかい?」
「……そこそこですかね」

 昨晩は遠足前日の子どものように妙に目が冴えてしまい、寝つきがよくなかったが、しばらくしたら寝られたようだ。そんなに寝るまでの時間は長くなかったと思うので、今日の討伐には支障がないと信じたい。

「昨日教えた魔力操作もばっちりだったし、きっと大丈夫だよ」
「そう……ですね」

 こんなとき、師匠の安心できる言葉はありがたい。

 俺は祈りを捧げた後、気持ちいつもより早く朝食を平らげ、すぐに冒険者証と剣を手に隣の村まで向かった。



 隣の村、ヴィレアには思ったよりも早く着いた。今まで見よう見まねで魔力操作をたまに使っていたが、やはりきちんと教えてもらうと効果が桁違いだ。

 ただ、師匠が言っていた通り、この時点で軽い疲労感があり、この後に討伐をして大丈夫か少し不安になる。まあここまで来て何もせずに戻るなど、選択肢にないのだが。

 この村の冒険者ギルドは──あそこか。大きな建物にギルドのマークが描かれた看板が掛かっている。

 建物に入ると中には多くの冒険者がいた。数十人ほどだろうか、比較してはいけないのかもしれないが、いつもガラガラのラムハのギルドと比べるとかなりの賑わいだ。

 クエストの張り紙を見ると、ほとんどが討伐クエストで、ラムハが安全な街だということを改めて実感する。

 その一方で、ここはかなり危険なところではないかと思う。記憶が正しければ、俺が元いたミャクー村では討伐とそれ以外が半々だった気がする。

 一つ一つクエストの内容を見ていくと、討伐クエストの最高ランクはBがいくつかあるだけでだいたいはCランク以下だったので少し安心する。

 クエストは対象のモンスターを狩ってくればいいのだが、生息域がきっちりと別れているわけではないので、当然他のモンスターに出くわすことも多い。

 だから、例えば初心者はFランクのクエストであっても、Aランクのクエストが同時に存在している山に立ち入るべきではないのだ。

 こうした事情でギルドごとに初心者が集まりやすかったり、上級者が集まりやすかったりと傾向がある。

 ここはクエストの数こそ多いが、そのほとんどがCランク以下なので中級者向けといったところか。そこで喋っている冒険者たちも、見た感じ初心者はいないように思える。

 さて、どのクエストを受けるかだが……手早く済ませたいから数が必要なものは避けたい。それと、討伐自体が久しぶりだから自分のランクより低いところから始めるのがいいだろう。

 モンスターの種類や数まで詳しく見ていると一枚の紙に目が留まる。討伐しなければいけない数、モンスターの生息域──俺の求めている条件にぴったりだ。

 ぴったりすぎて、もはや俺のために用意されたかのようですらある。これしかない──そう思い、張り紙の端を破り、受付に持っていく。
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