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第六章 レオンの剣術道場編
第105話 討伐 其の二
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一度討伐に行って戻ってきたと思われる服の汚れたお弟子さんに、モンスターのところまで案内してもらう。剣も冒険者証もあるし、準備はばっちりだ。
「見えてきました。あれが出現したモンスター、アイクルです」
指差された先を見ると、びっしりと毛が生えた茶色い球状の何かがいた。よく見ると短い足が二本生えており、触手のようなものでお弟子さんたちを攻撃しているようだ。
大人よりも少し小さいほどだが、そこから伸びている触手はその数倍の長さはありそうだ。
あれがアイクル──初めて見るモンスターだ。どこに顔があるかも分からないほど、びっしりと隙間なく生えた毛に、長く伸びる十数本ほどの触手──なんだか気味が悪いな。
たしかにレオンさんからの情報通り、剣での攻撃は全く効いていないようだ。あの毛がそれほどの防御力を持つようには見えないから、おそらく下の皮膚が硬すぎて刃が通らないのだろう。
攻撃は通っていないようだが、持ちこたえているのはやはり流石というところだ。四、五人で連携を取りながらアイクルの攻撃を完璧にいなしつつ、隙があれば攻撃を挟んでいる。
アイクルはアイクルで一人に攻撃を集中させ倒そうとするのだが、上手く他の人がカバーに入っている。このモンスター、もしかして相当知能が高いんじゃ……
見ているうちに、またアイクルがある一人に攻撃を集中させる──が、その人はほとんどの攻撃をクネクネと避け、避けきれなかったものを自分で捌いていく。
あの人すごいな、人間はあんなに体をクネクネ出来るのか。まるで骨が入ってないみたいだ………………ん? あれは──ヨーゼフさんじゃないか!
ということは、あのクネクネした動きは魔力操作か。俺が教えていたときは模擬戦をやらなかったために分からなかったが、短期間でめちゃくちゃ使いこなしている。
「コルネさんが魔法を使う気配を見せると、アイクルは逃げ出そうとします。我々で逃げ道を塞ぎますので、そこをこう──いい感じにやっちゃってください」
案内してくれた人がひそひそ声で俺に伝えてくる。他の人たちにも先ほど話していたから伝わってはいるのだろうが──どうやって足止めするのだろうか。
考えても仕方がない。このモンスターはよく出ると言っていたし、そこは何か策があるのだろう。
隣にいるお弟子さんの方を見ると、無言で頷きを返してくる。どうやらいつでもいいようだ。
俺は剣に炎を纏わせる。その途端、アイクルがこちらに気付き、俺に背を向けて逃げようとする。実際にどこが正面でどこが背面なのかは見た目では分からないが、なんとなくそんな気がした。
触手を縮めて、逃げようとするアイクルの前にお弟子さんが立ち塞がる。アイクルは一度縮めた触手を伸ばし、攻撃しようとするが──伸ばした触手はことごとく斬られ、体液が飛び散る。
アイクルは何が起こったのか理解しきれていない様子で、固まってしまうが、すぐに動き出そうとする。だが、もう遅いのだ。
触手で攻撃をして、斬られ、固まってしまう。俺がアイクルとの距離を詰めるには十分すぎる時間だ。
「────ハッ!」
アイクルの真上から剣を一気に振り下ろす。皮膚に刃が当たると、やはり異常に硬いことが分かった。
しかし、刃を入れる必要はないようだった。俺の魔法剣の炎は、アイクルの全身にあっという間に燃え広がり、その毛むくじゃらな体を包み込んだ。
「ウアアアアアアアアアア! アアオオオオオオオオ!」
暴れまわり、触手を出鱈目に振り回すが、当たらない。お弟子さんたちはとっくに後ろに下がっているし、俺は土壁を出して、それを盾にしながら少しずつ後退っている。
「ァァ……ォ…………ゥァ……」
呻き声が途絶え、パタリと倒れる音がしたので、遠くからおそるおそる黒焦げのアイクルを確認する。
お弟子さんの一人が近づき、警戒しながら近くで死んでいるかどうかを確認した後、頭上に大きく手で丸を作る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
それを見るなり、みな一斉に歓声を上げる。突如鳴り響く轟音にびっくりしてしまうが、やっとこさ倒せたのだから当然か。
モンスターを倒した後の喜び方はまるで冒険者のようだ。俺も冒険者なのに他人事のようにそう思った。
「見えてきました。あれが出現したモンスター、アイクルです」
指差された先を見ると、びっしりと毛が生えた茶色い球状の何かがいた。よく見ると短い足が二本生えており、触手のようなものでお弟子さんたちを攻撃しているようだ。
大人よりも少し小さいほどだが、そこから伸びている触手はその数倍の長さはありそうだ。
あれがアイクル──初めて見るモンスターだ。どこに顔があるかも分からないほど、びっしりと隙間なく生えた毛に、長く伸びる十数本ほどの触手──なんだか気味が悪いな。
たしかにレオンさんからの情報通り、剣での攻撃は全く効いていないようだ。あの毛がそれほどの防御力を持つようには見えないから、おそらく下の皮膚が硬すぎて刃が通らないのだろう。
攻撃は通っていないようだが、持ちこたえているのはやはり流石というところだ。四、五人で連携を取りながらアイクルの攻撃を完璧にいなしつつ、隙があれば攻撃を挟んでいる。
アイクルはアイクルで一人に攻撃を集中させ倒そうとするのだが、上手く他の人がカバーに入っている。このモンスター、もしかして相当知能が高いんじゃ……
見ているうちに、またアイクルがある一人に攻撃を集中させる──が、その人はほとんどの攻撃をクネクネと避け、避けきれなかったものを自分で捌いていく。
あの人すごいな、人間はあんなに体をクネクネ出来るのか。まるで骨が入ってないみたいだ………………ん? あれは──ヨーゼフさんじゃないか!
ということは、あのクネクネした動きは魔力操作か。俺が教えていたときは模擬戦をやらなかったために分からなかったが、短期間でめちゃくちゃ使いこなしている。
「コルネさんが魔法を使う気配を見せると、アイクルは逃げ出そうとします。我々で逃げ道を塞ぎますので、そこをこう──いい感じにやっちゃってください」
案内してくれた人がひそひそ声で俺に伝えてくる。他の人たちにも先ほど話していたから伝わってはいるのだろうが──どうやって足止めするのだろうか。
考えても仕方がない。このモンスターはよく出ると言っていたし、そこは何か策があるのだろう。
隣にいるお弟子さんの方を見ると、無言で頷きを返してくる。どうやらいつでもいいようだ。
俺は剣に炎を纏わせる。その途端、アイクルがこちらに気付き、俺に背を向けて逃げようとする。実際にどこが正面でどこが背面なのかは見た目では分からないが、なんとなくそんな気がした。
触手を縮めて、逃げようとするアイクルの前にお弟子さんが立ち塞がる。アイクルは一度縮めた触手を伸ばし、攻撃しようとするが──伸ばした触手はことごとく斬られ、体液が飛び散る。
アイクルは何が起こったのか理解しきれていない様子で、固まってしまうが、すぐに動き出そうとする。だが、もう遅いのだ。
触手で攻撃をして、斬られ、固まってしまう。俺がアイクルとの距離を詰めるには十分すぎる時間だ。
「────ハッ!」
アイクルの真上から剣を一気に振り下ろす。皮膚に刃が当たると、やはり異常に硬いことが分かった。
しかし、刃を入れる必要はないようだった。俺の魔法剣の炎は、アイクルの全身にあっという間に燃え広がり、その毛むくじゃらな体を包み込んだ。
「ウアアアアアアアアアア! アアオオオオオオオオ!」
暴れまわり、触手を出鱈目に振り回すが、当たらない。お弟子さんたちはとっくに後ろに下がっているし、俺は土壁を出して、それを盾にしながら少しずつ後退っている。
「ァァ……ォ…………ゥァ……」
呻き声が途絶え、パタリと倒れる音がしたので、遠くからおそるおそる黒焦げのアイクルを確認する。
お弟子さんの一人が近づき、警戒しながら近くで死んでいるかどうかを確認した後、頭上に大きく手で丸を作る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
それを見るなり、みな一斉に歓声を上げる。突如鳴り響く轟音にびっくりしてしまうが、やっとこさ倒せたのだから当然か。
モンスターを倒した後の喜び方はまるで冒険者のようだ。俺も冒険者なのに他人事のようにそう思った。
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