129 / 328
第七章 里帰りと収穫祭編
第125話 演出
しおりを挟む
久しぶりの師匠との修行で汗を流した後、晩御飯を食べながら里帰りの話をする。
「──で、孤児院のみんなに魔法剣を見せたんですよ。即席ではあったんですが、子どもたちが喜んでくれたのでよかったです」
「もしかしたら孤児院から新たな魔法剣士が生まれるかもしれないね」
俺が話してばかりだが、パンをちぎりながら相槌を打つ師匠は嬉しそうだ。
「それで、そこで使った演出が収穫祭のステージでも使えるかな、と思うんですけど」
俺の言葉にキョトンとする師匠。まるで俺が何を言っているのか分かっていないような反応だ。
「コルネくん、演出って……何だい?」
「「えっ」」
「…………えっ?」
師匠の言葉に、静かに俺たちの会話を聞いていたヘルガさんまでが驚く。なぜ二人が驚いているのか分からずに戸惑う師匠。
何か分かったのか、ハッとした顔でヘルガさんが師匠に訊く。
「ロンド様、毎年私は留守番だったので分からないのですが、一昨年までのステージはどのようなものだったのでしょう」
「ん? 毎年、炎の魔法剣を見せてるよ」
「……見せる、というのはどのようにですか?」
「どのように、って訊かれても──何回かモンスターを斬るように剣を振り下ろしたり、横に薙いでみたりかなぁ」
何回かだけ!? それだけしか見せないのか──まあ同じ動きを何回も見せられても飽きてしまうから、それくらいがちょうどよいのかもしれないが。
こめかみを押さえながら、はぁ、と深くため息をつくヘルガさん。
「ロンド様、それはあんまりです。それでは魔法剣の魅力が伝わりきりません。逆にどうしてそのパフォーマンスになったのですか?」
「僕、自分で魔法剣を使ってるときも見惚れちゃうくらい炎の魔法剣が好きで、いつまでも眺めてられるから、みんなも好きかなぁと思って……」
少し照れながら言う師匠。炎の魔法剣は綺麗だから永遠に見ていられるほど俺も好きだし、孤児院の子どもたちも好きと言っていたから、多くの人に好まれるだろうが……
「他の人はいつまでも、とはいかないかもしれませんし、実際に使っている人と見る人では見え方も違います。それにお祭りにいつも来ている人は、たまには違うものが見たいでしょう。今年はコルネくんに演出を任せるのはどうでしょう?」
そう言って俺に目配せをするヘルガさん。たしかに毎年師匠がやっていたのよりは、まだ俺が孤児院でやった方が楽しめるんじゃないだろうか。
「そうだね。子どもたちが喜んでくれたのなら、お祭りに来た人もきっと喜んでくれるよね。コルネくん、よろしく頼むよ」
* * *
(道理でお祭りの後にステージの話をすると毎年、微妙な反応が帰ってくるわけです。てっきり見飽きたからかと思っていたのですが、違う理由だったとは……頼みましたよ、コルネくん。)
「──で、孤児院のみんなに魔法剣を見せたんですよ。即席ではあったんですが、子どもたちが喜んでくれたのでよかったです」
「もしかしたら孤児院から新たな魔法剣士が生まれるかもしれないね」
俺が話してばかりだが、パンをちぎりながら相槌を打つ師匠は嬉しそうだ。
「それで、そこで使った演出が収穫祭のステージでも使えるかな、と思うんですけど」
俺の言葉にキョトンとする師匠。まるで俺が何を言っているのか分かっていないような反応だ。
「コルネくん、演出って……何だい?」
「「えっ」」
「…………えっ?」
師匠の言葉に、静かに俺たちの会話を聞いていたヘルガさんまでが驚く。なぜ二人が驚いているのか分からずに戸惑う師匠。
何か分かったのか、ハッとした顔でヘルガさんが師匠に訊く。
「ロンド様、毎年私は留守番だったので分からないのですが、一昨年までのステージはどのようなものだったのでしょう」
「ん? 毎年、炎の魔法剣を見せてるよ」
「……見せる、というのはどのようにですか?」
「どのように、って訊かれても──何回かモンスターを斬るように剣を振り下ろしたり、横に薙いでみたりかなぁ」
何回かだけ!? それだけしか見せないのか──まあ同じ動きを何回も見せられても飽きてしまうから、それくらいがちょうどよいのかもしれないが。
こめかみを押さえながら、はぁ、と深くため息をつくヘルガさん。
「ロンド様、それはあんまりです。それでは魔法剣の魅力が伝わりきりません。逆にどうしてそのパフォーマンスになったのですか?」
「僕、自分で魔法剣を使ってるときも見惚れちゃうくらい炎の魔法剣が好きで、いつまでも眺めてられるから、みんなも好きかなぁと思って……」
少し照れながら言う師匠。炎の魔法剣は綺麗だから永遠に見ていられるほど俺も好きだし、孤児院の子どもたちも好きと言っていたから、多くの人に好まれるだろうが……
「他の人はいつまでも、とはいかないかもしれませんし、実際に使っている人と見る人では見え方も違います。それにお祭りにいつも来ている人は、たまには違うものが見たいでしょう。今年はコルネくんに演出を任せるのはどうでしょう?」
そう言って俺に目配せをするヘルガさん。たしかに毎年師匠がやっていたのよりは、まだ俺が孤児院でやった方が楽しめるんじゃないだろうか。
「そうだね。子どもたちが喜んでくれたのなら、お祭りに来た人もきっと喜んでくれるよね。コルネくん、よろしく頼むよ」
* * *
(道理でお祭りの後にステージの話をすると毎年、微妙な反応が帰ってくるわけです。てっきり見飽きたからかと思っていたのですが、違う理由だったとは……頼みましたよ、コルネくん。)
0
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる