145 / 328
第七章 里帰りと収穫祭編
第141話 ステージを終えて
しおりを挟む
ステージを下りた俺たちは、広場の脇を通って通りへと抜ける。その途中でステージを見ていた人からたくさん声を掛けてもらった。
すごかっただとか、感動しただとか、良い評判ばかりでとても嬉しかった。広場の端からでもステージの鮮やかな炎がはっきりと見えたそうだ。
あんなにたくさんの人が俺たちのステージに熱狂して──すごかったな。あれだけ人がいれば、見てくれた人から魔法剣士の一人や二人──いや、十人くらい生まれてもおかしくないんじゃないか。
孤児院のときはもしかしたら、といった程度だったが、今回のことで「弟子が増える」というのが一気に現実味を帯びてきた。
もし新しく弟子ができれば、俺は兄弟子になるのか。兄弟子……悪くない響きかもしれない。
通りへと出てからは呼び止められることもなく、すいすいと道場まで戻ることが出来た。もともと直前の練習のときにうちで打ち上げをしようという話をしていたのだ。
街にはごった返しており、しかもこの時間帯は酒を飲む人が多い。つまるところ、いつものラムハに比べて治安がよくないのだ。
どこかの店で打ち上げをしようにも、子どもを連れていくのはやめた方がいいということになった。ならばうちで──とヘルガさんが言ってくれて、俺たちが練習をしているときからヘルガさんが料理を作ってくれているのだ。
師匠が鍵を開け中に入ると、食堂の方からジュージューと音が聞こえる。ヘルガさんが料理をしているのだろうと、荷物を置いてから食堂へと向かう。
食堂に近づくにつれてお肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。それにつられたのか、アルのお腹がぐぅと鳴る。
あはは、とはにかむアルに微笑ましいといった表情の大人たち。
「わぁぁぁぁ……!」
食堂に入ると、すでにたくさんの料理がテーブルに並べられていた。どれも美味しそうで、アルとドリーだけでなくみんなが目を輝かせている。
「おかえりなさいませ、もう少しお待ちいただけますか」
フライパンで何かを焼きながら、厨房から顔だけを出してヘルガさんが言う。
師匠がジュースを持ってきて、それを注ぎながら待っていると、ヘルガさんが最後の料理を持ってくる。ステーキだ──匂いだけでなく、見た目もとても美味しそうだ。
ヘルガさんもエプロンを外して席に座り、それからみんなでジュースの注がれたグラスを掲げる。
「ステージの成功を祝して──乾杯!」
促された師匠が音頭を取り、グラスを軽くぶつける。さあ宴の始まりだ!
すごかっただとか、感動しただとか、良い評判ばかりでとても嬉しかった。広場の端からでもステージの鮮やかな炎がはっきりと見えたそうだ。
あんなにたくさんの人が俺たちのステージに熱狂して──すごかったな。あれだけ人がいれば、見てくれた人から魔法剣士の一人や二人──いや、十人くらい生まれてもおかしくないんじゃないか。
孤児院のときはもしかしたら、といった程度だったが、今回のことで「弟子が増える」というのが一気に現実味を帯びてきた。
もし新しく弟子ができれば、俺は兄弟子になるのか。兄弟子……悪くない響きかもしれない。
通りへと出てからは呼び止められることもなく、すいすいと道場まで戻ることが出来た。もともと直前の練習のときにうちで打ち上げをしようという話をしていたのだ。
街にはごった返しており、しかもこの時間帯は酒を飲む人が多い。つまるところ、いつものラムハに比べて治安がよくないのだ。
どこかの店で打ち上げをしようにも、子どもを連れていくのはやめた方がいいということになった。ならばうちで──とヘルガさんが言ってくれて、俺たちが練習をしているときからヘルガさんが料理を作ってくれているのだ。
師匠が鍵を開け中に入ると、食堂の方からジュージューと音が聞こえる。ヘルガさんが料理をしているのだろうと、荷物を置いてから食堂へと向かう。
食堂に近づくにつれてお肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。それにつられたのか、アルのお腹がぐぅと鳴る。
あはは、とはにかむアルに微笑ましいといった表情の大人たち。
「わぁぁぁぁ……!」
食堂に入ると、すでにたくさんの料理がテーブルに並べられていた。どれも美味しそうで、アルとドリーだけでなくみんなが目を輝かせている。
「おかえりなさいませ、もう少しお待ちいただけますか」
フライパンで何かを焼きながら、厨房から顔だけを出してヘルガさんが言う。
師匠がジュースを持ってきて、それを注ぎながら待っていると、ヘルガさんが最後の料理を持ってくる。ステーキだ──匂いだけでなく、見た目もとても美味しそうだ。
ヘルガさんもエプロンを外して席に座り、それからみんなでジュースの注がれたグラスを掲げる。
「ステージの成功を祝して──乾杯!」
促された師匠が音頭を取り、グラスを軽くぶつける。さあ宴の始まりだ!
0
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる