パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第八章 新しいメニューと緊急クエスト編

第144話 新しいメニュー 其の二

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「まず今日から素振りにこの剣を使うよ。持ってみて」

 師匠は両手で鞘に入った剣を渡してくる。装飾のないシンプルな剣だ。装飾の分、軽く見えるが、さきほど鳴った音からはこの剣が重いことが分かる。

「おもっ……」

 師匠から受け取った途端に、剣が想像よりもはるかに重たいことが分かった。大きさは俺の剣とほとんど変わらないのに、こんなに重いとは。

「普通、剣には使われない重い金属が使われていてね。完全に練習用なんだ。この剣で素振りを──三十回かな。それといつもの剣の素振りは前と同じだけ続けてね」

 言われるまま、持ち上げるので精いっぱいの剣を鞘から抜いて振りかぶり──振り下ろす。重力にしたがって剣先は弧を描き、地面とぶつかった。

 本来は剣を途中で止めて、また振りかぶらなければいけないのだが──重たすぎて止められないのだ。俺はこの剣でまともに素振りをすることすら出来ないのか。

 へこむ俺に師匠が笑顔で声をかける。

「最初はそんなものだよ、慣れれば止められるようになるから。それにこれは練習用の剣で刃が付いていないから切れなくて安全! もし自分の足に当たってもすごく痛いだけだから」

 たしかに安全ではあるが、なるべくなら足には当てたくないと思った。

 そうだよな、慣れれば出来るようになるはず。そう思って俺は残りの二十九回全部を地面にぶつけた。一応止める努力はしたのだが、一朝一夕でどうにかなるものではなく、だんだんと腕に力が入らなくなっていた。

「じゃあいつもの素振り、いこっか」

 この状態で出来るか心配だったが、一度やってみると案外出来てしまった。レオンさんのところで結構な回数の素振りをしたおかげか少ない力でも振るえてしまうようだ。

 できるはできるのだが、何回もとなると話は別だ。だんだんと腕が言うことを聞かなくなっていく。

 セットに分けて休憩を少しずつは取っていたが、百五十回を超えたあたりで上手くできなくなってきた。

「一回長めの休憩とろうか」



 休憩の間に腕をマッサージしてみたが、ある程度は腕に力が入るようになったものの、完全にいつも通りとはいかなかった。

 いつも通りにはならなかったが、ある程度は回復したので、いつもの素振りはやりきることが出来た。

 なんとか出来てよかったと思いつつ、座りこんで休憩する。余裕があるからといって、一気にここまできつくなるとは思っていなかった。

 本当にあの剣の重さに慣れる日が来るのだろうか。息の上がっている俺に向けて、師匠が次の修行に移ろうと話しかける。

その口から出た言葉は俺を絶望させるには十分だった。

「次は筋トレだよ、コルネくん」
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