180 / 328
第九章 ルミーヴィアへの旅編
第174話 ルミーヴィアへの旅 其の三
しおりを挟む
マリーと近況報告をし合ったり、思い出話に花を咲かせたりしていると、ラムハまで戻ってくる。太陽はまだ高く、昼を過ぎたあたりだ。
並の冒険者だと半日ほどかかるのだが、まず俺と師匠は魔力操作が使える分、疲れを軽減できる。
アルノ兄さんは今は引退しているとはいえ、もともとはBランクパーティの冒険者だ。当然、歩いての移動にも慣れているし、不安だったために旅に同行すると聞いてから体力を戻していたらしい。
残るマリーだが、回復魔法を使って体力をこまめに回復させているため、速めのペースでも歩き続けることができたというわけだ。
俺の知る限りではこんなに何度も短い間隔で回復魔法を使えてはいなかった気がしたので、訊いてみるとこんな答えが返ってきた。
「回復魔法を学びたいと思ったけど、何をすればいいか分からなかったから、とりあえず回復魔法をかけまくってみたの」
何回も繰り返し使っていたところ、だんだん慣れてきて連発できるようになったそうだ。
ラムハはマリーだけでなく兄さんも来たことがあるそうで、街の市場を見て懐かしいと言っていた。
今のペースなら次の大きな街──レクタムまで日が暮れる前に行けそうだということで、そのままラムハを通り過ぎてレクタムを目指すことになった。
ペースを上げたために普通に歩くよりは早く着いたが、その代わりに少し前に昼食を入れたはずのお腹が鳴っていた。
串焼きなどの歩きながらお腹に入れられるものを買い、食べている間も歩き続ける。ラムハからレクタムまでには小さな村が二つあるのだが、宿屋も複数あるとは思えないほどの規模である上に、どうせならレクタムで泊まって名物を食べたいと師匠は言っていた。
レクタムの手前にある村を抜ける頃にはすでにほとんど日は落ちており、途中からは師匠と俺で交代しながら日や光の魔法であたりを照らしながら歩いた。
「やっと着いた……ヒール……ヒール……ヒール……」
レクタムの入り口でそう呟くマリーの息はまだ少し上がっていた。途中から本格的に暗くなってきたので、空が夜闇に覆いつくされる前にレクタムまで辿り着こうと急いだ結果だ。
魔力操作で師匠がマリーが歩くのを扶ければいいのでは、と試したのだが、自分の意思とは無関係に魔力を動かされていると、その間はマリーが上手く回復魔法を使えなくなってしまうらしい。
その結果、マリーはある程度の距離を師匠に魔力操作を使ってもらいながら素早く移動し、立ち止まって回復魔法をかける──この繰り返しでレクタムまで来た。自分では本来出せないような猛スピードで幾度も走っていれば、いくら回復魔法があるといっても疲労は蓄積していく。
「俺も魔力操作が使えればな……」
そう呟きながら膝に手をついて休んでいる兄さん。猛スピードで走らされるマリーに兄さんは魔力操作なしでついていったのだから、疲れるのは当然だ。
「ええと、レクタム、レクタム──と」
息を整えている兄さんやマリーの横で、師匠はいそいそと鞄からガイドブックを取り出し、めくり始めるのだった。
並の冒険者だと半日ほどかかるのだが、まず俺と師匠は魔力操作が使える分、疲れを軽減できる。
アルノ兄さんは今は引退しているとはいえ、もともとはBランクパーティの冒険者だ。当然、歩いての移動にも慣れているし、不安だったために旅に同行すると聞いてから体力を戻していたらしい。
残るマリーだが、回復魔法を使って体力をこまめに回復させているため、速めのペースでも歩き続けることができたというわけだ。
俺の知る限りではこんなに何度も短い間隔で回復魔法を使えてはいなかった気がしたので、訊いてみるとこんな答えが返ってきた。
「回復魔法を学びたいと思ったけど、何をすればいいか分からなかったから、とりあえず回復魔法をかけまくってみたの」
何回も繰り返し使っていたところ、だんだん慣れてきて連発できるようになったそうだ。
ラムハはマリーだけでなく兄さんも来たことがあるそうで、街の市場を見て懐かしいと言っていた。
今のペースなら次の大きな街──レクタムまで日が暮れる前に行けそうだということで、そのままラムハを通り過ぎてレクタムを目指すことになった。
ペースを上げたために普通に歩くよりは早く着いたが、その代わりに少し前に昼食を入れたはずのお腹が鳴っていた。
串焼きなどの歩きながらお腹に入れられるものを買い、食べている間も歩き続ける。ラムハからレクタムまでには小さな村が二つあるのだが、宿屋も複数あるとは思えないほどの規模である上に、どうせならレクタムで泊まって名物を食べたいと師匠は言っていた。
レクタムの手前にある村を抜ける頃にはすでにほとんど日は落ちており、途中からは師匠と俺で交代しながら日や光の魔法であたりを照らしながら歩いた。
「やっと着いた……ヒール……ヒール……ヒール……」
レクタムの入り口でそう呟くマリーの息はまだ少し上がっていた。途中から本格的に暗くなってきたので、空が夜闇に覆いつくされる前にレクタムまで辿り着こうと急いだ結果だ。
魔力操作で師匠がマリーが歩くのを扶ければいいのでは、と試したのだが、自分の意思とは無関係に魔力を動かされていると、その間はマリーが上手く回復魔法を使えなくなってしまうらしい。
その結果、マリーはある程度の距離を師匠に魔力操作を使ってもらいながら素早く移動し、立ち止まって回復魔法をかける──この繰り返しでレクタムまで来た。自分では本来出せないような猛スピードで幾度も走っていれば、いくら回復魔法があるといっても疲労は蓄積していく。
「俺も魔力操作が使えればな……」
そう呟きながら膝に手をついて休んでいる兄さん。猛スピードで走らされるマリーに兄さんは魔力操作なしでついていったのだから、疲れるのは当然だ。
「ええと、レクタム、レクタム──と」
息を整えている兄さんやマリーの横で、師匠はいそいそと鞄からガイドブックを取り出し、めくり始めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる