194 / 328
第九章 ルミーヴィアへの旅編
第188話 初めての修行(マリー視点)
しおりを挟む
みんなを見送って寂しい気持ちはあるが、ここでうじうじしてはいられない。この後、レネさんとの初めての修行があるのだ。
「まずは回復魔法を見せてもらおうか」
レネさん──師匠が凝視するなかで、私は回復魔法を使う。
「ヒール」
集中して小さく唱えると、私自身に回復魔法がかかる──が、今は体の不調もないため特に変化はない。
「変わらなかっただろ? 変わらなかったってことはそれをアンタは戻すべき本来の状態だと認識してるってことだ。でもそれを鮮明にイメージしていたかい?」
なるほど、今はどこも痛くないし体調が悪いわけでもない──たしかにコンディションはかなりいい方だ。
「アンタはまだ戻すべき状態に対しての認識が甘いね。回復魔法は体が治るのを手助けするものだ──だから、どうかければ治りが早いのか、より少ない魔力で治せるのかを考えるべきだ。例えば指先を怪我して血が出たとき、どう治すべきだと思う?」
「血管と皮膚を修復する……でしょうか」
「その通りだ。漠然とかけるのではなく、そのように意識してかけた方が魔力の効率もいいし、綺麗に治る」
今までは何も考えずになんとなく「元の状態に」と魔法をかけていたから意識したことはなかった。根本から意識を変えなければならないようだ。
「じゃあ、それを意識しながらまずは回復魔法千回、いってみようか」
「せ、千回!?」
さすがに千回は多すぎるんじゃ──いや、魔法発動にかかる時間は短いから意外とすぐ終わってしまうのかもしれない。とにかくここに来てしまった以上、やるしかないのだ。
「ヒール……ヒール……ヒール……」
「はい、二百! 今いい感じだからそのままキープ!」
冒険者ギルドに連れてこられた私はひたすらヒールをかけていた。テーブルの上には縫物に使う針が立てられており、そこに師匠と協力してもらっている師匠のパーティメンバーの方が順番に指をさしていく。
それを一人ずつ私が治していくのだ。皮膚や血管を意識するには実際にやるしかないということらしい。
浅い傷をつけるだけとはいえ、痛いものは痛いし、何百回もするのは苦痛だろう。師匠にもパーティメンバーの方にも申し訳なく思う。
私も指を刺すと言ったが、「アンタもやるとその分ヒールが途切れて時間が長くなる」と言われてしまった。たしかにその通りなので、私は痛い思いをせずにのうのうとヒールをかけ続けているのだが──
「あれ何してんの?」
「回復魔法の練習だってさ」
ときおり、ギルドに入ってきた冒険者たちがこちらをジロジロと見てそういった会話をする。たしかにこの光景は私から見ても異質なためは仕方がないとは思うのだが、やはり少し恥ずかしい。
「──二百五十、一、二……」
ときどき途切れる師匠のカウントはまだまだ終わりには程遠いことを指している。集中力だけがゴリゴリと削られていくけど、こんなに協力してもらっているのだからやりきらなくちゃ。
「まずは回復魔法を見せてもらおうか」
レネさん──師匠が凝視するなかで、私は回復魔法を使う。
「ヒール」
集中して小さく唱えると、私自身に回復魔法がかかる──が、今は体の不調もないため特に変化はない。
「変わらなかっただろ? 変わらなかったってことはそれをアンタは戻すべき本来の状態だと認識してるってことだ。でもそれを鮮明にイメージしていたかい?」
なるほど、今はどこも痛くないし体調が悪いわけでもない──たしかにコンディションはかなりいい方だ。
「アンタはまだ戻すべき状態に対しての認識が甘いね。回復魔法は体が治るのを手助けするものだ──だから、どうかければ治りが早いのか、より少ない魔力で治せるのかを考えるべきだ。例えば指先を怪我して血が出たとき、どう治すべきだと思う?」
「血管と皮膚を修復する……でしょうか」
「その通りだ。漠然とかけるのではなく、そのように意識してかけた方が魔力の効率もいいし、綺麗に治る」
今までは何も考えずになんとなく「元の状態に」と魔法をかけていたから意識したことはなかった。根本から意識を変えなければならないようだ。
「じゃあ、それを意識しながらまずは回復魔法千回、いってみようか」
「せ、千回!?」
さすがに千回は多すぎるんじゃ──いや、魔法発動にかかる時間は短いから意外とすぐ終わってしまうのかもしれない。とにかくここに来てしまった以上、やるしかないのだ。
「ヒール……ヒール……ヒール……」
「はい、二百! 今いい感じだからそのままキープ!」
冒険者ギルドに連れてこられた私はひたすらヒールをかけていた。テーブルの上には縫物に使う針が立てられており、そこに師匠と協力してもらっている師匠のパーティメンバーの方が順番に指をさしていく。
それを一人ずつ私が治していくのだ。皮膚や血管を意識するには実際にやるしかないということらしい。
浅い傷をつけるだけとはいえ、痛いものは痛いし、何百回もするのは苦痛だろう。師匠にもパーティメンバーの方にも申し訳なく思う。
私も指を刺すと言ったが、「アンタもやるとその分ヒールが途切れて時間が長くなる」と言われてしまった。たしかにその通りなので、私は痛い思いをせずにのうのうとヒールをかけ続けているのだが──
「あれ何してんの?」
「回復魔法の練習だってさ」
ときおり、ギルドに入ってきた冒険者たちがこちらをジロジロと見てそういった会話をする。たしかにこの光景は私から見ても異質なためは仕方がないとは思うのだが、やはり少し恥ずかしい。
「──二百五十、一、二……」
ときどき途切れる師匠のカウントはまだまだ終わりには程遠いことを指している。集中力だけがゴリゴリと削られていくけど、こんなに協力してもらっているのだからやりきらなくちゃ。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる