パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第九章 ルミーヴィアへの旅編

第190話 アドレアの道場訪問(アドレア視点)

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 それは突然にボクの前に現れた。

「サ、サラさんの道場に行ける!?」

 ここはアクスウィル魔法学校の第一食堂──すなわち一番大きな食堂だ。ちょうど真昼間で混みあっているため、ボクの声は喧騒に掻き消され、幸い食堂中に響き渡るということはなかった。

 ボクが食事を終えて出る前に掲示板をチェックしていると、サラさんの道場にこの学校から短期間だが行くことができるという、この張り紙が留めてあったのだ。

 「昨年に思わぬ場所で思わぬ才能と出会い、私は可能性のある若者にもっと会うべきだと思いました。そのため、今年からこのように交流の場を設けました」──そう書いてあった。

 ふと、コルネがサラさんと会ったと言っていたことが脳裏をよぎる。──まさか、ね。同時に、あのときコルネを伝ってサラさんに会わせてもらおうか、などというよこしまな考えが掠めたことも思い出した。もちろん幼馴染をそんなことに利用するなんて最低だとすぐに思い直したけど。

 サラさんの道場にはサラさん本人が実力を認めた者しか入れないとされており、入れるだけでエリートと言われている。もちろんのこの学校だって入学試験の壁は高く、元からかなりの実力がないと入れないが、現生徒の中で入れるのはどれだけ多く見積もっても半分──いや、三分の一にも満たないだろう。

 直接の面識があるわけではないが、間違いなくサラさんはボクの魔法の師だ。ミャクーに住んでいたおばあさんからもらって、何度も何度も読み込んで、今ではボロボロになってしまった魔導書──それを書いたのがサラさんなのだ。

 もちろん希望者全員が行けるわけではない。国中に名を轟かせるほど高名な魔法使いの道場など、みんな行きたいに決まっている。

 しかし枠は限られているからといって、諦められるはずはない。なんとしても枠を掴むのだ。



 結論から言うと、ボクは見事に枠に残ることができた。全学年から十数人という少ない枠にも関わらず、奇跡的に掲示された紙にボクの名前はあった。

 やはり面談のときに熱意でゴリ押したのが効いたんだろうか。何にせよ、これであのサラさんに会えるんだ。たとえ玉響たまゆらでも、ボクにとってはかけがえのない経験になるだろう。

 カーテンの隙間から月を少し見た後に、ボクは早めに眠りにつく。
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