パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十章 Aランク昇格編

第198話 氷解と決意

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「ただいま~」

 いつもよりも遅い時間に、師匠がホクホク顔で帰ってくる。手には紙の束を抱えており、明らかに行きと比べて荷物が増えている。これはまさか──

「冒険者ギルドの本部でいろいろ貰っちゃった。これでAランク昇格のためのルート決めもバッチリだよ」

 いい笑顔で俺に向かってぐっと親指を立てる師匠。昨日決めきれなかったルートについて、やはり誰かに相談していたようだ。おそらくは会議に参加していたギルドの関係者だろう。

「師匠、それなんですが──」
「ごめん、僕お腹空いちゃったから先にごはんにしよう。遅くなったから二人ともお腹ペコペコでしょ」

 たしかにお腹は空いているが、そういうことではなくてですね……

「あの、俺が勘違いをしてたみたいで──」
「……え?」



「──なので、昨日のあの言葉は、そろそろヴィレア以外のギルドに繰りだして他のモンスターとも戦ってみたい、くらいの意味だったんです」
「たしかに期限付きだと知らないと、少しずつ討伐していこうって思うよね。でも、コルネくんが知らなかったのは意外だな。そういうのってギルドに書いてあったりしなかったっけ──あ、Aランクパーティがいないヴィレアにはもしかしたらないのかも」

 俺が性急にAランクに上がりたかったわけではないと知り、少し考える素振りを見せる師匠。

「そういうわけなので、せっかくルートの相談までしていただいたところ悪いんですが、しばらくAランク昇格は無理かな、と……」
「そっか──でも、せっかくだし一度挑戦してみたらいいんじゃないかな。もちろんすぐにではないけど。ほら、挑戦自体は何回してもいいし、ヴィレアにはいないモンスターと戦って経験値積みたいんでしょ? お試しだと思って一回だけ、ね?」

 たしかに、昇格の挑戦に回数制限がないのなら試してみるのも一つの手か。ある程度他のモンスターとの戦闘を経験しておけば、次にやるときの助けにもなる。

 それに、師匠がせっかく夜遅くまで調べて、こうして資料を集めてきてくれたのだ──無碍にするのは申し訳ない。きっとまた何年か後に挑戦しようと思ったら、今日集めてきてもらった資料は役に立たないだろうから。

「やるだけやってみます」
「よかった、頑張ってきた甲斐があったよ。それじゃ、明日から修行のメニュー変えるね」

 そう言うなり、師匠は一番上に乗っている紙が落ちないように押さえると、鼻歌を歌いながら自室へと紙束を持ったまま消えていく。
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