パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十章 Aランク昇格編

第220話 Aランク昇格への挑戦 其の十

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 いよいよAランク昇格のための最後のクエスト、そしてダンジョンへの出発の日がやってくる。

 俺の予想通りトレトへは馬車で向かうらしい。師匠は俺の手紙を見て今日トレトに出発できると確信し、すぐに馬車を手配したそうだ。俺が予定通りに帰れると信じてくれたのは嬉しいが、手紙を出してから調子がよくなかったから帰るのが何日か遅れる可能性もそれなりにあった。

 もし馬車を出してもらう予定の日に間に合わなくてキャンセルすることになったらと思うと寒気がする。馬車を手配するのにかかるのは大金というほどではないが、決して安いわけでもない。

 車輪の音が近づいてきたので、俺が外に出ると少し遅れて師匠もやってくる。手にはいつも旅のときに持っていく鞄と──大きくて丈夫そうな袋が何枚か。

「危ない危ない、大事な袋を忘れるとこだったよ」
「師匠、その袋は……?」
「魔力結晶を持って帰るために必要だろ? お店がたくさん並んでると意外と袋売ってる店を探すの面倒なんだよね」

 袋は必需品だろ、とでもいうような雰囲気の師匠。たしかに魔力結晶用の袋は必要だし、俺もそう思って、鞄に畳んで入れてきた。

しかし俺の袋よりも師匠が持っているものは十倍くらい大きいし、しかもそれが一枚ではなく複数ある。俺はクエストが全部終わってついでにダンジョンも行くくらいのノリだったので、てっきり魔力結晶は十か二十くらいの感覚でいたのだが──師匠はそうではなかったようだ。どうやらかなり本気で魔力結晶を採りにいくつもりらしい。

 ダンジョンは俺の腕試しだとダンジョンの話を最初にしたとき師匠は言っていた。ということは、もしかして俺がその袋が満杯になるまでモンスターを倒さなくちゃいけないってことなんじゃ……いや、さすがにこの量なら師匠も一緒に倒してくれるはずだ。そう信じておこう。



 ガタゴトと馬車に揺られていると、昼頃にトレトに着く。横に流れる景色は久しぶりで少し懐かしくなった。

 トレトの街を満たす賑わいは以前と変わらないままだ。

 屋台ではいろんなものを売っており、ついつい気になってしまうが、今はクエストが最優先だ。師匠の滞在期間は決まっているんだし、今日は昼からで二体倒せるかは微妙なところだ。あまり時間を無駄にはできない。

 宿屋を先に取っておいて師匠とはクエスト後にそこで集合することにし、俺は冒険者ギルドへと急ぐ。師匠には一人でダンジョンに行かないように言っておいたので、きっと街をぶらぶらして時間を潰すだろう。
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