パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十章 Aランク昇格編

第233話 分火

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 ──アクスウィル魔法学校のとある教室にて。

「なあ、聞いたか? Aランクパーティがまた一つ増えたんだとよ」
「それ俺も聞いた。冒険者ギルドから昨日発表があったって」

 アドレアは次の授業である魔法理論のテキストを鞄から取り出しながら、クラスメイトの他愛ない会話に耳を傾ける。

(へぇ……初めて知った。やっぱり寮だとあまり情報が入ってこないからな。「無限の光ルクス・インフィニティア」に続いて二つ目のAランク昇格──同じ年に二つも上がるとは珍しいね)

「しかもパーティメンバーはたった一人だってさ。Aランク冒険者って呼ばれて噂になってる」
「一人でAランク!? たしかAランクってBランクのモンスターを全部倒さないとなれないんじゃなかったか? いったいどんなやつなんだ?」

(一人でパーティやってるなんて珍しい……いや、コルネも一人って言ってたから意外といるのかも。一人でならやっぱり近接戦に強い剣士かな。しかもAランクに上がれるってことは相当な実力者のはず──レオンさんのところの門下生あたりだろう)

「聞いて驚くなよ。それがさ、ここにも来たことがあるコルネっていうロンド様の弟子らしいんだ」

 突然よく知った名前が出てきて、寝ぼけまなこだったアドレアの目が見開かれる。

(コルネがAランク!? ──ってことは一人でBランクのモンスター全部倒して回ったってこと? あのコルネが!?)

「えっ──あいつが!? たしか俺らと歳も変わらないはずなのに……そうだったよな、ローラン?」

 会話が近くに座っていたローランに飛ぶ。

「あ──ああ、お前らの話は聴いていた。俺もこうしてはいられない、今すぐにコルネと闘いに行かなければ」

 そう言いながら机の上に出したばかりのテキストやノートをテキパキと鞄にしまっていき、教室を出ていこうとするローラン。が、さすがにそれはまずいと、さきほどの二人に止められていた。

「それに、なんとBランクに上がってからまだ一年半なんだとよ。俺、あのときはそんなでもないと思ってたけどめちゃくちゃ強かったんだな」
「ああ、やはり俺の目に狂いはなかった。だからコルネと闘いに行かなければ──」
「だからそれはやめろって」

 再び二人が止めようとしているところにチャイムが鳴る。それを聞いたからか促されるままローランもおずおずと席に着く。

 一緒に育ってきた幼馴染が「Aランク冒険者」なんて呼ばれるほどになったと知り、アドレアの心は熱く燃えていた。

(ああ、コルネも頑張ってるんだ。ボクももっと練習して早くサラさんの「ゲヘナ」を習得しないと)

 そう思うと、ペンを握る手に一層力が入った。
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