253 / 328
第十一章 サラの魔法道場編
第246話 サラの魔法道場 其の十一
しおりを挟む
ルカは練習場の隅の方で一人、紫色の球を浮かべていた。俺に気付くと制御を保ったまま、おーいと手を振ってくれる。寝ている間に無意識に魔法を使ったって聞いたけど、大丈夫なんだろうか。
「ルカ、大丈夫なの? 寝ている間に魔法を使ったって聞いたけど、相当参ってるんじゃ……」
「ちがうよ、コルネ──あれだよ、あれ。夜中にこっそり魔力結晶を試しただけなんだ。で、思ったより魔法の威力が出ちゃって染みが消しきれなかったのさ。他の人には内緒ね」
周りに聞かれないように声を潜めて答えるルカ。そういうことだったのか、たしかに魔力結晶のことは言えないし、突然魔法が使いたくなったと言っても不審がられるだろうからな──ともかく、夢遊病や神経症じゃなかったようで安心した。
「──にしても、あれはすごいね。魔法を使うのが息をするみたいに自然にできた。威力五割増しっていう噂も嘘じゃなかったんだって思ったね。それはともかく、コルネには俺のオリジナル魔法を開発する手伝いをしてもらいたくて……なんというか相談があるというか……」
目を輝かせて魔力結晶を使った感想を口にしていたルカがだんだんと歯切れが悪くなっていく。相談の内容が言いづらいものなんだろうか。少し視線を彷徨わせた後、ルカは覚悟を決めたように言葉を紡ぎだす。
「……俺、毒魔法が使えるだろ? ここのみんなは珍しい系統が使えて羨ましいって言ってくれるし、実際珍しい魔法は重宝されることがあるらしいけど、俺自身はあんまり好きじゃないんだ。威力の高い魔法は練習する度に薬飲まなくちゃいけないし、うっかり誰かが俺の毒に触れないように練習はいつも隅っこでしなくちゃいけないから──」
俯いたまま続けるルカ。重たい前髪で表情は隠れて見えない。
「でももっと嫌なのは俺の魔法で誰かが傷付くこと。俺の魔法はどう使っても誰かを不幸にしてしまう。希少さは価値だ──言ってることは分かるんだけどさ、どうしても俺の魔法で誰かを幸せにできる気がしないんだ」
声が震え、だんだんとルカの言葉が弱々しくなっていく。
「だからきっと俺は魔法を使わない方がいいんだ。でも、サラさんに拾ってもらってここで暮らして──せっかくできた唯一の居場所を俺は失いたくない。だから……誰かを笑顔にできるような魔法を──俺でも魔法を使ってもいいんだって思えるような魔法を、コルネならもしかしたら見つけてくれるんじゃないかと思って……」
ちらりと髪の隙間から見えたルカの目は潤んでいた。
「ルカ、大丈夫なの? 寝ている間に魔法を使ったって聞いたけど、相当参ってるんじゃ……」
「ちがうよ、コルネ──あれだよ、あれ。夜中にこっそり魔力結晶を試しただけなんだ。で、思ったより魔法の威力が出ちゃって染みが消しきれなかったのさ。他の人には内緒ね」
周りに聞かれないように声を潜めて答えるルカ。そういうことだったのか、たしかに魔力結晶のことは言えないし、突然魔法が使いたくなったと言っても不審がられるだろうからな──ともかく、夢遊病や神経症じゃなかったようで安心した。
「──にしても、あれはすごいね。魔法を使うのが息をするみたいに自然にできた。威力五割増しっていう噂も嘘じゃなかったんだって思ったね。それはともかく、コルネには俺のオリジナル魔法を開発する手伝いをしてもらいたくて……なんというか相談があるというか……」
目を輝かせて魔力結晶を使った感想を口にしていたルカがだんだんと歯切れが悪くなっていく。相談の内容が言いづらいものなんだろうか。少し視線を彷徨わせた後、ルカは覚悟を決めたように言葉を紡ぎだす。
「……俺、毒魔法が使えるだろ? ここのみんなは珍しい系統が使えて羨ましいって言ってくれるし、実際珍しい魔法は重宝されることがあるらしいけど、俺自身はあんまり好きじゃないんだ。威力の高い魔法は練習する度に薬飲まなくちゃいけないし、うっかり誰かが俺の毒に触れないように練習はいつも隅っこでしなくちゃいけないから──」
俯いたまま続けるルカ。重たい前髪で表情は隠れて見えない。
「でももっと嫌なのは俺の魔法で誰かが傷付くこと。俺の魔法はどう使っても誰かを不幸にしてしまう。希少さは価値だ──言ってることは分かるんだけどさ、どうしても俺の魔法で誰かを幸せにできる気がしないんだ」
声が震え、だんだんとルカの言葉が弱々しくなっていく。
「だからきっと俺は魔法を使わない方がいいんだ。でも、サラさんに拾ってもらってここで暮らして──せっかくできた唯一の居場所を俺は失いたくない。だから……誰かを笑顔にできるような魔法を──俺でも魔法を使ってもいいんだって思えるような魔法を、コルネならもしかしたら見つけてくれるんじゃないかと思って……」
ちらりと髪の隙間から見えたルカの目は潤んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。
さら
ファンタジー
勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。
居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。
仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。
周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。
追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。
自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。
“無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。
追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる