パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十一章 サラの魔法道場編

閑話三 毛皮の行方

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 コルネくんが倒したマーナ・ガルムの死体を旧冒険者ギルドで受け取り、私はすぐさまある人物のもとへと向かった。

 レティシア──この街に住む私より五つ若い毛皮職人だ。山にはマーナ・ガルムやウルフなどの毛皮が使いやすいモンスターが多く生息しているため、毛皮の加工が盛んなこの街の中でも彼女は特別腕がいい。

 そんな彼女に久々に獲れたマーナ・ガルムの毛皮を加工してもらうのだ。冒険者に持ち込まれた素材は、本来は冒険者ギルドが買い取ってからそこからクエストを出した業者に渡すのだが、今回は特別だ。

 依頼を出したのは私だし、クエスト報酬を出したのももちろん私。いいタイミングで依頼をしてきた業者がいなかったので、コルネくんに提示したクエストの依頼主は全部私だったのだ。

 その中でも毛皮が獲れて、さらに山にいるAランクの中ではわりかし手頃なマーナ・ガルムを強くおすすめしたのだが、コルネくんが素直に受けてくれてよかった。実際、他はかなり奥まで入らないと見つからないモンスターや、初めてにはきつすぎるようなモンスターもいたので、コルネくんにとっても悪い選択ではなかったはずだ。

 それにしても久々のマーナ・ガルムの毛皮、しかも損傷は一か所だけで状態もいい──これで何を作ってもらおうか。バッグにコート──いや、膝掛けも悪くない。

 毛皮が悪くならないように氷魔法を使いつつ、魔力操作と風魔法で移動していると、レティシアの店に着く。ガラリと興奮のあまり勢いよく扉を開けると、奥から何事かと彼女が顔を出す。

「レティシア、マーナ・ガルムの毛皮を持ってきたからすぐ保管庫にしまっておくれ」
「マーナ・ガルム! 久しぶりの上物じゃないか。分かった、ついてきな」

 私が抱えてきたマーナ・ガルムを見て、すぐにレティシアは踵を返して私を案内する。それなりに元気で魔法で並の若者よりも速く動ける私が言うのもなんだが、彼女は歳の割にきびきびと歩く。

 ひとまず超低温の保管庫にマーナ・ガルムを丸ごとしまい、二人で何にするか考える。

「さっき見たところではどてっぱらに大きな傷が一つ──他は綺麗なままだった。倒したのはあんたのところの弟子じゃないね。まあそれはどうでもいいとして、傷がど真ん中にあるから丸ごとは難しいかもね」
「そうさね。だとするとバッグかねぇ……」

 今更考えても仕方のないことではあるが、もうちょっと下の方傷があったらよかったのに──いや、闘いの最中に腹を狙われるほどマーナ・ガルムはやわな相手ではないか。

「でも他がこんなに綺麗なのにバッグにするのはもったいない気もするな──そうだ、いっそのこと傷の部分にはでっかいポケットを作って、コートにしちまうってのはどうだい?」
「そりゃいいねぇ、白銀の美しい毛並みが映えていいコートになること間違いなしさね」
「そうだろそうだろ──今から早速作りはじめたいところだけど、注文の品がまだ終わってないからね。取りかかれるのはこのまま明後日ぐらいになるか……しかし、久々のマーナ・ガルムは腕が鳴るね。いつもは燃えカスになったって話にしか出てこないからさ」

 レティシアの話にハハハと苦笑を返す。素早いマーナ・ガルムには近寄られたら終わり──手加減をする余裕などないのだが、それを指摘してくるのは彼女くらいのものだろう。

「じゃ、できたらまた連絡する」
「分かった」

 店から出て急いで道場へと戻る。今からでもこの後にあるアドレアとの練習の時間にはギリギリ間に合うはずだ。

「今日だけアドレアがゆっくりご飯を食べてて来るのが遅くならないかねぇ……」

 いつも時間よりも早めにくるアドレアがそんなことはないと思いながら、呟いてみた。
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