パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第284話 贈呈式 其の二

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「アドレア!? なんでここに」
「それはボクが『謎の少女』だから……かな」

 照れくさそうにアドレアが少し顔を赤くしてはにかむ。

 ここにいるということはそうなのだろうが……まさかアドレアだったとは。常に道場にいるわけではないから可能性は低いが、たまたま居合わせたというのはたしかにあり得る話だ。完全に盲点だった。

「世間を騒がせる『謎の少女』は魔法学校の生徒だった! 隠されていた真実が今明かされる──というわけさね」

 記者のまねごとをしながらサラさんが芝居がかった調子で言う。サラさんはいつもより浮かれている気がするが、アドレアが褒賞を受け取ることが嬉しいのだろうか。

「皆さま、おくつろぎのところ申し訳ないのですが、今から式典の流れを説明いたします」

 扉が開き、説明係と思われる人が入ってくる。今扉を開けたのに「おくつろぎ」だと分かっているということは、ドア越しにさきほどの会話は丸聞こえだったのだろう。それを知ってか知らずかサラさんはしれっとしているが。

「まず、褒賞をお渡しする順番はレオン様、コルネ様、アドレア様の順になります。お三方に金貨をお渡しし終えた後に、コルネ様とアドレア様をSランク冒険者と認めると陛下が宣言されます」

 さらっと言っているが、アドレアもSランク冒険者になるのか!? 世間から見ればアドレアはまだアクスウィルの一学生にすぎない。さすがに今回の実績だけでSランク冒険者になるとなれば風当たりは強いはずだ。

 そのあたりは大丈夫なんだろうか。俺も元の三人に比べれば実力も劣っていて分不相応だと思われそうだし、言えたことではないのだが。

「──するとあたりが軽くざわつくので、陛下が説明をして式典は終わりです。私が『褒賞拝受者が退場されます』と言ったら、誘導にしたがって退場してください」

 国王陛下からじきじきに説明があるのなら大丈夫だろうか。そのあたりも織り込み済みなんだな。

「最後になりますが、式典には落ち着いて臨まれてください──もし何か失敗されたとしてもしばらく官僚たちの噂になるだけですので」

 そう残すと、誰かに呼ばれた説明係の人はそそくさと出ていく。式の準備で忙しいのだろう。

 失敗したら噂になると聞いて、より緊張感が高まった。



「これより、褒賞贈呈式を執り行う」

 陛下の威厳のある声が静かな玉座の間に響き渡る。

「この度の巨大モンスター出現に際し、大きな功績を上げた三人に褒賞を与える。レオン、前へ」

 予定通りレオンさん、俺、アドレアの順に金貨の入った袋が渡されていく。レオンさんが袋を受け取るのをしっかりと見ていたため、特にこれといった失敗はしなかった……はずだ。アドレアも俺と同じような動きをしていたのできっと大丈夫だろう。

 アドレアが袋を持って元の場所まで戻ると、国王陛下は高らかに宣言する。

「また、コルネ、アドレア両名を今回の功績によりSランク冒険者に任命する」

 やはりというか予定通りというか、にわかに周りが騒がしくなる。さて、国王陛下はどういう説明をされるのだろうか。
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