パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第298話 ダンジョンマップ 其の二

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「まさかあんなことになるとはね……」
「そうですね……」

 袋に入った大金を眺めながら二人で呟く。

 遡ることひと月──ダンジョンから帰ってきてしばらくした頃、なぜかラムハの街でトレトのダンジョンマップのことが噂になっており、街の人に訊かれることが多かった。

 ダンジョンに行ったことだけが噂になっているのならば、トレトでダンジョンから出てきたのを目撃されてラムハまで伝わってきたのかとも思うのだが、ダンジョンマップのことまで知られているということは情報源はあの二人のどちらかだ。

 ダンジョンに潜っていたときに飾ると言っていたから、きっとそれを見た人たちから噂が広がったのだろう──そう思って納得していると、思わぬ訪問があった。

「私、トレトで土産屋を営むダニエルと申します。あ、あの──もし差し支えなければコルネ様が作られたダンジョンマップの写しをいただけませんでしょうか。それを木版で印刷したものを土産屋で売りたいのです。利益の半分をお支払いしますので……」

びくびくしながら訊ねてきたダニエルさんは土産屋の経営が立ち行かなくなって、俺や師匠に斬られる覚悟でラムハを訪ねてきたそうだ。そんな取って食いやしないのに、とも思ったがラムハ以外でのSランク冒険者の認識はこれが一般的なのかもしれない。

 俺は申し出を呑み、その場で契約書にサインした。もちろん契約書の中身は師匠とよく読んだから大丈夫だ。

どうせ俺が持っていても眠らせておくだけなのだから、ダニエルさんの手に委ねた方がましだろう。そう思ってのことだった。

 後日マップの写しを送り、それからひと月ほど経った今日、血色のよくなったダニエルさんが再びやってきてドンと大金を置いていったのだ。

 師匠が国の防衛を離れて収入が減ってしまったが、代わりにこんな収入源ができるとは思いもしなかった。

 しばらくぼーっと袋の中の金貨を掬っては戻してを繰り返していると、また誰かがやってくる足音がする。今度は誰だろうか。
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