cross of connect

ユーガ

文字の大きさ
上 下
40 / 42
絆の邂逅編

第三十九話 決別、そして未来へ

しおりを挟む
キアルを倒したユーガ達は、その空間の先にあった光を放っている転送魔法陣を抜けて、さらに下へと下っていく。その道中、魔物が何体かいたがそれをさっさと倒して、ユーガ達はどんどん下へと降りていった。しばらく降りていくと、再びユーガ達の目には転送魔法陣があった。
「・・・この先にも誰かいるのかな」
ユーガのその呟きに、ルインがユーガの横に立って口を開いた。
「恐らく・・・そうだと思います。この先から元素フィーアを感じますからね」
「・・・けど」とネロがルインのその言葉に反論するかのように言った。「誰がいたって俺達は負けられない。そうだろ?」
「・・・そういう事だ」
トビはそう呟いて魔法陣に足を踏み入れ、その体が光に包まれていくのを感じながら手を銃のホルダーに置いた。ユーガ達もそれに続いて転送魔法陣の中へと入り、先程のキアルの時と同様にそれぞれの武器に手をかけて周囲の光が収まっていくと同時に素早く周囲に視線を巡らせー、先程と同じドーム上の空間の中心に立っていた人物に、目を見開いた。
「兄貴・・・⁉︎」
「・・・来たか・・・」
ユーガの兄はーフルーヴは、彼の武器である槍を地面に刺してそれを支えにもたれかかって腕を組んで立っていて、ユーガ達にそう呟くと背中を槍から離してその手に槍を取った。
「・・・兄貴・・・どうしてゼロニウスで俺達の事を助けてくれたんだ?」
「言ったはずだ。僕には僕の目的があり、そのために行動しているとな」
「なら」とトビが銃をフルーヴの顔に向けて睨み、怪訝そうに尋ねた。「今、どうして俺達の事を殺そうとしている?その目的がもう果たされたならまだしも、てめぇのさっきの言い文だとまだ達成してねぇようだが?」
「僕はスウォーを利用して行動している。最低限スウォーの肩を借りるなら、お前達を殺すことも考えなければならない時もあるのさ」
「・・・そのために・・・俺達を殺すのか。だが、俺達が死ねばてめぇの目的は果たされるのか?」
「手間はかかるがな。お前達はある程度こなしてはくれたお陰で助かった」
フルーヴはこともなげに言うと、槍を向けて紅色の瞳でユーガ達を睨み、軽く嘆息した。
「・・・それに、僕自身もお前達には・・・そろそろ死んでもらいたいとも思っていたしな。・・・始末させてもらう」
「・・・兄貴、待ってくれ!」
フルーヴの言葉を聞いて耐えきれなくなったように、ユーガは叫んでいた。フルーヴの苛立ちと怪訝さが混ざったような、彼が手に持つ槍で刺されたような痛みすら感じさせる視線にユーガは、一度小さく深呼吸をして、どこか懇願をするような表情で、フルーヴに視線を戻した。
「兄貴の目的って、なんなんだ⁉︎もしそれが俺達にも手伝える事なら、俺達も手伝う!」
「・・・・・・」
フルーヴは目の前のユーガをじっと見つめ、鼻を鳴らした。馬鹿馬鹿しい、相変わらず甘い奴だー。
「・・・答える義理はない」
「兄貴・・・!」
だろうな、とトビは内心で舌を巻き、小さく嘆息した。もしそれで説得などできるようであれば、これまでのフルーヴの生き方までも変えてしまう事になるのだ。
「・・・ユーガさん、来ます!」
ミナの叫びと同時にフルーヴは槍を持って突進し、ユーガ達との距離を一気に詰めた。さらにその槍に自身の魔法で闇の元素フィーアを纏わせ、それをユーガ達に振るった。ユーガはそれを避けて彼の固有能力スキル、『緋眼』を解放させて剣を引き抜き、フルーヴに向かって剣を振るう。だがフルーヴはそれを槍の柄で難なく受け止め、その顔に僅かばかりの笑みを浮かべた。
「・・・迷いが無くなったな」
「・・・俺達は負けられない。この世界にはまだまだ守るべきものが、たくさんあるんだ!」
「・・・それでいい。それでこそ、お前達を生かした甲斐がある」
ユーガとフルーヴは目の前に火花が散るのを見てー、二人の体が弾かれ合い、ユーガは地面に着地すると同時にフルーヴの後ろへ回り込むように部屋を駆け巡りー。
「・・・『紅眼』」
「⁉︎」
そうだ、フルーヴにはこれがあった。特殊な瞳をもうフルーヴにはー。その瞳を『解放』させられる。
「解放」
フルーヴのその言葉と同時に、その空間には紅色の輝きが満ちた。それはユーガ達を打ち付けるような風となり、ユーガ達は咄嗟に身を守る体制に入った。その光が収まると、フルーヴは瞳に紅色の輝きを宿しており、その瞳でユーガの方へ視線を向けた。
「・・・おせぇ」
フルーヴのその呟きが聞こえると同時にユーガの体は仲間達の方へと吹き飛ばされており、ユーガがそう理解するまでに時間が少しかかった。地面に落ちると同時に体中に鋭い痛みを感じて悶えたが、すぐにその痛みは引いていき、代わりに温かい光がユーガを包んで、ユーガはまだ僅かに残る痛みを我慢して立ち上がった。ちらりと仲間達の方へ視線を向けると、トビがこちらを見ていたが鼻を鳴らしてフルーヴに視線を向けた。恐らく、先程の温かい光はトビが回復魔法をかけてくれたのだろう。
「ユーガ、無事ですか?」
「うん、大丈夫・・・」
ルインが隣に駆け寄ってきてくれて、ユーガは頷いてフルーヴの方へ視線を戻した。フルーヴは四大幻将の一人ではないにしても、かなりの実力者だ。さらに、『紅眼』すらも持っている。
「ユーガ」背中からネロに言葉をかけられ、ユーガはネロを振り向いた。「戦うのが辛いなら、下がってても・・・」
「ネロ」
トビは呟いて、ネロに鋭い視線を向けた。
「その判断は俺達がするもんじゃねぇ」
「・・・けど・・・」
「決めろ、ユーガ。戦うか、そこを退くか」
トビに鋭い声でそう言われ、ユーガは視線を僅かに落として眉を顰めたが、すぐに目をぐっと閉じて決意に満ちた瞳を仲間達に向けた。
「・・・大丈夫、戦う!」
「・・・覚悟は決まったか」
フルーヴの声が聞こえて、仲間達もフルーヴの方へ視線を向ける。鼻を鳴らして槍を構えるフルーヴはどこか冷酷とも言える表情を浮かべ、槍の先をユーガに向けた。
「死ぬ覚悟も、僕と戦う覚悟も」
「俺達は死なない。この世界にはまだまだ、可能性があるんだ!」
ユーガはそう叫んで剣を握りしめて走り出し、フルーヴの懐へ駆け込んだ。フルーヴの体を横凪ぎに斬ろうとしたが、それはフルーヴに槍で剣を押さえ付けられて叶わず、ユーガとフルーヴは至近距離で睨み合った。
「一人で特攻とは、無様な覚悟だな」
「一人じゃない!」
なに、とフルーヴの目が見開かれ、気配のする方へと視線を向けるとーネロが高く跳躍して体を捻り、その反動で剣を振っているところが目に入った。ちっ、とフルーヴは舌を打ってユーガの剣をユーガごと吹き飛ばして、跳躍しているネロに即座に風属性の魔法を唱えて真空刃で吹き飛ばした。ーと、そのネロの後ろからシノが両拳を振り下ろす体制で現れ、フルーヴはそれを槍で受け止めた。ただの拳のはずなのに、重い。精霊の力があるとも言えど、ここまでの力ー!
「くっ・・・」
フルーヴは小さく呻いてーシノを弾き飛ばした瞬間、彼の槍が僅かに揺らぐその時を、シノは見逃さなかった。両手を振り下ろした姿勢から、フルーヴに弾かれる反動を活かして体を逸らせて足で槍を蹴り上げた。元々揺らいでいた彼の槍がさらに揺らぎ、フルーヴは驚愕の表情を浮かべたーその直後。
「源の元素フィーアよ・・・万物の力を持ち収縮し・・・咎を受けし魂に七光の業を与えよ・・・!」
ルインの詠唱に呼応するかのように巨大な魔法陣がルインの足元に上がり、それはフルーヴの足元までも包み込むのを、フルーヴは感じた。それは、以前ゼロニウスでトビの処刑の際にルインがキアルに使用した魔法と同じー。
「これで終わりです!フィーアメロディッ!」
完全に体勢を崩したフルーヴがその魔法を防ぎ切る事は不可能で、優しい音色が響くのと逆にフルーヴの周囲には元素フィーアの柱が立ち、ルインは交差していた腕をー収縮させていた元素フィーアを解き放つ。すると、柱は大爆発を起こしてフルーヴを襲った。多少はダメージを軽減できたが、それでもルインの『覚醒』していない状態ではほぼ最強の魔法を受けて、フルーヴは耐えきれずに膝を付いて、異変に気付いた。彼が膝を付いた、その周囲には無数の短剣が突き刺さっていて、フルーヴがその正体を確かめるよりも早くにー。
「輝きの刻印を刻め・・・!」
上空からミナの声が聞こえ、フルーヴはその短剣の意味を理解した。それは星を描くように突き刺さっていて、フルーヴはーその中心にいるのだ。どうにかその短剣の描く星の外へ出ようとしたが、先程のルインの魔法の威力で、体が思うように動かない。
「スターサーキュラー!」
ミナの叫びと同時に、元素フィーアが星型の紋章を描いて無数の刃となってフルーヴを襲い、フルーヴはその痛みに耐えながら、その紋章が消えると同時に槍を支えに立ち上がる。
「・・・おい」
その、地の深くから響き渡るような声に、フルーヴはハッとしてその方向へ視線を向けた。ーそこには、トビが双銃を構えて立っていて、それを二発、三発と続けて発砲した。しかし、フルーヴは咄嗟にそれを避けてトビに向かって走りーさらにトビが魔法を詠唱している事に気付いて、フルーヴは槍をトビに向けて突き出しー腹に凄まじい衝撃と共に吹き飛ばされるのを感じて、激しく地面を転がって舌を打ち、その方向へ視線を向けるとリフィアがそこに拳を握った状態で立っていて、にっ、と笑みを浮かべた。
「邪魔させるわけにはいかないから・・・ね!」
リフィアの猛攻をフルーヴは槍で防ぎながら忌々しげにリフィアを睨み付け、足元に先ほどのルイン程ではないが巨大な魔法陣が浮かぶのが見えてー。
「灰燼と化せ、万物よ・・・イグニッション」
魔法陣を中心に巨大な爆発が巻き起こり、リフィアは巻き込まれるより一瞬早く飛び退いてそれを避けた。ーだが、一瞬リフィアが引くのは早かったらしく、爆発に巻き込まれるほんの僅かな隙を、フルーヴは逃さず、その瞬間フルーヴは息を止めて防御を固めた。
「・・・防ぐと思ったぜ」
爆発が終わり、防ぎ切った、と思った直後に、爆発によって生み出されたもうもうとした煙の外側からそんな声が聞こえてきた。魔法を防がれたはずのトビの声は焦りも怒りも持ってはおらず、それよりもむしろ嘲るような声で、フルーヴに語りかけていた。
「むしろその一瞬の隙を見て防ぐと思ったからこそ・・・お前にも隙はできる」
煙が晴れていき、その向こうからートビではなく、『緋眼』を持つ彼が剣をしっかりと握り締めて立っていて、それを振り下ろす直前をフルーヴは見ていた。ーしかも、その剣は先程のトビの魔法によって生み出された火属性の元素フィーアを纏っているのだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎」
彼はーユーガは叫びながら、フルーヴに向かって剣を思い切り振り下ろした。完全に隙を突かれたフルーヴがそれを防ぐ事は、不可能ー!
「駆けろ、閻魔の牙!閻魔、連閃撃っ‼︎」
ユーガは焔を纏った剣を振り下ろしてから振り上げてフルーヴの体を僅かに浮かせて、そこに横凪ぎに右に、左に、もう一度体を捻ってその反動のまま右にとフルーヴの体を斬り裂いて吹き飛ばした。そのままフルーヴは壁に体を打ち付けて、口から血を吐いて地面に座り込んだ。ユーガはそれを見つめながら、肩で荒く呼吸をして剣を鞘に収めた。
「・・・参った、まさかここまでとは」
フルーヴは小さくそう呟いて、先程同様に槍を支えにして立ち上がり、マントの中に手を突っ込んでユーガに向かって小さな『何か』を投げた。それは、何かの『鍵』のようでもあり、小さな棒状の何かを、フルーヴは渡してきた。
「・・・これは・・・?」
「・・・後々必要になる。持っておけ」
そう言って立ち去ろうとしたフルーヴを、トビが呼び止めた。
「待てよ。・・・てめぇ、本気じゃなかったな?」
「何の事だ」
「とぼけるな。・・・なら、なんでてめぇの固有能力スキルを、シノやルインの攻撃を受ける前に使わなかった?てめぇなら造作もなく避けれたはずだろうが」
「・・・・・・」
「・・・答えろ」
「・・・目的・・・それを遂行させるためだ」
「・・・また、それか」
目的。それは、フルーヴが出会う度に告げる言葉だ。スウォーとフルーヴは目的は違うものの、どこかで彼らは利害の一致を手にして行動を共にしている。だがー。
「・・・俺達がスウォーを倒す事が、兄貴の目的達成に繋がる・・・のか?」
「さぁな」
ユーガの問いにフルーヴはぶっきらぼうに答えると、そのままユーガ達の方を振り向く事なくユーガ達の進む魔法陣とは逆ーつまり、この空間にユーガ達が訪れた際に使用した魔法陣の方へ向かって行った。誰も、何も言えなかった。何となく、彼を呼び止めてはいけないような、そんな気がして。ユーガは光に包まれて消えていくフルーヴの背中を見送りながら、手に乗った小さな棒状の何かを見つめて、なんだろう、と首を傾げた。しかし、後々使う、とフルーヴは言っていたのだから、持っていて損はないはずだ。完全に魔法陣の光に消えてしまったフルーヴの背中をもう一度思い返し、ユーガは先に進む魔法陣の方を向いて、よし、と呟いた。
「・・・とにかく、先に進もう」
フルーヴの目的なども含めて、まだユーガ達にはフルーヴに対しての謎は多すぎる。だが、ここで悩んでいても何も始まらないのなら、先へ進むべきだった。

「・・・・・・」
「ユーガの奴、フルーヴを倒してからなんだかずっと考え込んじまってるな」
前を一人歩くユーガの背中を見つめて、ネロはユーガには聞こえない程度の声量でそう言った。ええ、とルインもまた、頷く。
「やはり、敵がユーガに深い関係を持つからでしょうね。兄のフルーヴ、そして模造品クローンのスウォー・・・。迷いが無くなったと言えども、多少なりともはユーガには思うところもあるでしょうね」
「まぁ、そうだな・・・」
「私達は」と、ミナはユーガの背中を見つめ、どこか悲しげに呟く。「ユーガさんに、何もしてあげられないのでしょうか・・・」
「・・・ここで逃げるなら、それまでだって事だ」
トビはそう言って、やれやれ、と言わんばかりの嘆息をした。
「こういうのは自分で結論を出すもんだ。誰かが助けてやれるわけじゃねぇ」
そうですけど、とミナは口ごもって視線を床に落とした。だが、トビの言う事も事実だ。これはユーガが解決しなくてはならない問題で、自分達には寄り添ってやる事しか、できない。ーだが。
「・・・ユーガさん」
ミナは、放ってはおけなかった。ユーガの名を呼んで、その顔がミナに向けられると同時に小さく息を吐く。
「・・・ミナ?」
「『絆』を信じて、戦うのでしょう?」
「・・・・・・!」
それは、ユーガがこれまで口癖のように言ってきた言葉だ。それを、ミナはユーガに向けて言った。
「今は途切れてしまう絆かもしれませんが・・・わかってもらえる時が来るかもしれませんよ」
「・・・そう、だな・・・」
そうだ。今まで自分は散々、そうやって生きてきた。信じる事をやめたくなくて、ずっと仲間を信じてきたじゃないか。それなのに、こんな弱気でどうする?仲間が危険に晒される、と昨日トビから言われていたというのに。
「・・・ごめん、もう大丈夫。ありがとう、ミナ」
「頑張りましょう、ユーガさん」
ユーガは力強く頷いて頬を掻き、情けないな、と自嘲した。仲間達が共にいてくれるという、これまでにないほど心強い状況であるのに、弱気になってしまっていた。ユーガは振り返って仲間を一瞥し、皆、と口を開いた。
「俺に力を貸してくれ、頼む!」
仲間達が全員ートビも、僅かながらに頷くのを確認して、ユーガはもやもやと胸の中にあった黒い物がなくなっている事に気付いた。これで、終わりにしようーそう心に強く誓いながら、ユーガ達は足を踏み出した。『彼』との決戦の場所へ向かって。

「・・・この先。この先に・・・スウォーさんがいます」
どれだけ転送魔法陣を進み、今自分達がどこにいるのかわからなくなった頃、もう何度目かもわからない転送魔法陣を前に、シノはそう言った。ユーガ達は驚愕にシノを振り向いて、本当か、と尋ねると、シノは小さく頷く。
「・・・わかった。皆、準備はいいか?」
ユーガがそう尋ねると、仲間達は口々に決意をはっきりと口にした。
「おう」とネロ。「俺は昨日も言った通り、お前に着いてくだけさ」
「はい」とミナ。「私はまだこの世界を生きて、色々な事を調査していきたいですから」
「もちろん!」とリフィアが、元気よく。「アタシはまだ人間になれてないし?その目的を果たしたいからね~!」
「もちろんです」とシノ。「・・・やりたい事も見つかりましたし」
「ええ」とルイン。「私もシノと同様に、やりたい事が見つかってしまいましたから」
そしてートビは。いつも通りの少し不機嫌な様子でユーガを睨み、なんだよ、と呟いた。
「いや、何か言わないのかなーって」
「ここまで来て俺が行かねぇわけねぇだろ馬鹿が。そういうお前こそ何か言えばいいんじゃねぇの?」
トビにそう茶化され、ユーガは慌てて考えを巡らせた。お前も考えてねぇのかよ、とトビに呆れられたが、トビの隣に立っていたネロもまた、どこか茶化すように普段通りのおちゃらけた口調を見せる。
「もはやお前とトビがリーダーみたいなもんだし、バシッと号令掛けろよ!」
「は・・・何を・・・?」
「俺達で・・・いいのか・・・?」
まさかそんな風に言われるとは思っておらず、ユーガとトビは一度顔を見合わせてから、仲間達へ視線を向けた。すると仲間達は、そうだ、と言わんばかりの笑みを浮かべながら頷いて、二人を見る。二人はそれを見て、トビは嘆息をし、ユーガは少し考えてから頷いて、口を開く。
「・・・へいへい・・・まー頑張って」
「俺達の世界を、必ず救おう!」
トビの言葉に続けてユーガはそう言い、仲間達の顔が引き締まるのを見届けてから転送魔法陣の方へ視線を向けて拳を強く握り締めて、転送魔法陣へと足を踏み入れた。なぜかいつもより包み込まれる光が強いように感じるのは、気のせいだろうか?それともー?ユーガがそんな風に考えていると、光は段々と収まっていき、思考は中断された。ーいや、せざるを得なかった。その光の向こうには、先程までの禍々しさを感じさせる部屋ではなく、部屋の奥には何かのタンクのようなものがあり、そこからここに来る道のりで見た、無数の光が上へと噴き出されていて、恐らくこのタンクが元素フィーアが生まれ、噴き出されているのだろう、とわかる。そして、そのタンクの前にユーガ自身と同じ顔の『彼』がースウォーが、ユーガ達から見て右側に椅子を向けて、空に向かって手を伸ばして笑みを浮かべながら椅子に腰を下ろしていて、ユーガ達は何も言わずにスウォーの姿を見据えた。ーと、スウォーの手が下ろされ、その視線がーどす黒い黒と血の混ざったような瞳が、ユーガに向けられる。
「・・・なぁ、被験者オリジナル。世界に満ちた歪みは・・・どうすれば直ると思う?」
ユーガはスウォーのその問いに一息吐いてから、ゆっくりと眼を開けて、その口を開く。
「諦めずに、何度もぶつかれば・・・きっと、直せる。それに、俺には仲間がいるから・・・だから、諦めずに何度だってぶつかれる」
「・・・仲間がいるから・・・か、そりゃとんでもなくくだらなく、滑稽だな」
「くだらなくなんかない。仲間は・・・『絆』はすげぇ大切なもので、無くしちゃいけないものだ」
「・・・それが、『本当の絆』なのかもわからないのに、か?」
そのスウォーの言葉に、ネロがどこか馬鹿にしたような表情を浮かべて、腰に差した剣を握った。
「それは、お前が決める事じゃねぇ。俺達は、俺達だけの絆を信じて戦うんだ」
「そうですね」とルインが、ネロに続くように言葉を告げる。「私達には私達の絆がある。それをあなたに、とやかく言われるような筋合いはありません」
ルインが言葉を終えると、今度はミナがスウォーを見据えて、強い口調で口を開く。
「あなたは・・・この世界に何の未練もないんですか?あなたが大切だと思うものは、一つもないのですか?」
「・・・それがあるのなら、このような事はやめるべきであると判断」
「キミも、きっと何か大切な思い出とかがあるはずでしょ⁉︎それに、キミが戦おうとしてるのはキミ自身の被験者オリジナルだよ⁉︎」
シノが、リフィアが口々にスウォーに言葉を向けるが、スウォーは椅子から立ち上がってユーガ達をーユーガを睨み付けた。
「・・・大人しくしていれば、苦しまずに殺せてやれたのにな。どうあっても、俺と戦うのか」
「・・・ああ。・・・ホントはずっと嫌だった。いつかきっと分かり合えるんじゃないかって・・・そう思ってたけど・・・」
「・・・どこまでも甘い被験者オリジナルだな・・・。そんな事はあり得ない。俺は、昔約束したのさ」
「約束だと?」トビがそう耳ざとく聞きつけて、怪訝そうに眉を顰める。「・・・誰とのだ」
「お前達に答える義理はねぇ」
「・・・そうか。なら・・・お前の計画も、全てここで終わりにしてやるよ」
トビは銃を引き抜いてスウォーに向け、鋭い瞳でスウォーをまっすぐ見つめた。
「・・・スウォー・・・。お前が絆を信じなくても、俺は最後まで絆を信じ抜く!それが・・・揺らぐ事のない、『俺』だ!」
ユーガも剣を引き抜き、これまでのスウォーに対する迷いも、愚かな考えも何もかもを切り捨てるように振るった。
「・・・そうか」スウォーも腰の剣をゆっくり引き抜き、その鋒をユーガに向けた。「・・・お前達は俺の計画には邪魔だ。消えろ!」
ユーガとスウォーは、叫びながらほぼ同じフォームで剣を叩きつけあった。目の前で火花が散り、ユーガ達は互いに剣で弾きあって、ユーガとスウォーの間には僅かに隙間ができる。ーその隙を見て。
「これでどうだっ!瞬焔烈火斬!」
「地獄で後悔しろ。瞬焔獄炎破!」
ユーガとスウォーは剣に焔を纏って、激しい剣戟を互いに叩き付けるが、同じフォームの技のためそれらは全て相殺されてしまう。剣が再び交わり、スウォーの瞳が苛立ちを隠せない様子でユーガを睨みつける。
「お前は・・・恵まれた環境で育ったから、何も知らずにのうのうと生きれている!それなのに、模造品クローンの俺は普通に生きる事すら許されないのか!」
「なら、諦めずに何度も話せばいい!普通に生きたいのなら、こんな風に俺達がいがみ合う必要なんてない筈だろ⁉︎考え直してくれ、スウォー!」
「もう遅い!何もかも、もう遅いんだよ!」
「そんな事ない!」
やはり、話しても駄目か、とトビは判断して、スウォーに向けて弾を一発放った。スウォーがユーガの目の前で舌打ちをして飛び退き、トビの前に着地してトビの腹に肘を打ち込む。く、とトビは背後に吹き飛びながら、顔を顰めて魔法の詠唱に入る。地面に着くまでに詠唱できるかー?いや、してみせる。
「大地よ隆起せよ、吼えろ」
トビが魔法を詠唱している最中、ルインがそれを受け止めるような形で位置につき、他の仲間達でスウォーに猛攻を仕掛ける。
「喰らえ!瞬速の雷よ、駆け抜ける力を持ち、無塵と散り行け!閃牙鳳塵翔‼︎」
ネロの固有能力スキル、『神速』を利用した奥義ー目にも止まらぬ速さで敵を斬り裂く奥義を、スウォーは難なく避けるーその先に。
「てやぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
ミナ、シノ、リフィアの三人がそれぞれスウォー目がけて同時に攻撃を仕掛ける。その直後、トビが地面に着くよりも早く詠唱した魔法が、スウォーに突き刺さる。
「アースランス」
大地から隆起した無数の岩が、スウォーに襲いかかって彼の体を串刺しにしようとする。がー。
「どけ」
スウォーは剣を一振りしてミナ達だけでなく、トビの魔法までも払いのけ、その瞬間をついてスウォーは魔法を唱える。
「万物を灰燼と化せ!イグニッション!」
その魔法の範囲内にいたユーガ、トビ、ルインは咄嗟にその魔法を防ぐために防御を高めーユーガは髪が焼ける匂いを感じて、熱さを感じながら気をしっかりと持つために首を振ってー目の前にスウォーがいて、横凪ぎに剣を振るっている事にユーガは気付いて慌てて剣を立てて防御したが、完全に防ぎきれずにユーガは横へと転がった。やはりー強い。
「スウォーさんっ‼︎」
ミナが声をあげながら短剣でスウォーに斬りかかり、さらにネロも剣でスウォーにミナと共に襲いかかる。僅かに手応えがあったが、その一瞬後にはミナとネロは先程同様にスウォーに吹き飛ばされた。ーさらに。
「来い、『ノーム』!」
その名は、仲間達全員を戦慄させるには十分すぎる言葉だった。その名は、『地の精霊』の名だ。スウォーがそう叫ぶと同時に、激しい地震がユーガ達を襲い、それはまるで世界全てが揺れているようでもあった。
(ユーガ、まずいぞ!)
ユーガは立ち上がりながらイフリートの声を聞き、どうしたんだ、と呟く。イフリートの声はこれまでにないほど焦りを見せていて、ユーガも思わず身構えてしまう程だった。それ程に、イフリートの声からは焦りを感じさせたのだ。
(このままでは、世界の地盤が崩れかねん!急いで奴を倒せ!)
「・・・わかった!皆、急いでスウォーを倒さないと、世界が・・・滅んじまう‼︎」
仲間達の表情がさらに引き締まるのがわかり、ユーガは剣を持ってスウォーに突っ込んだ。ーだが、その凄まじい程の元素フィーアの地震に、思わず体勢を崩しー。
「ユーガ!『緋眼』を使って、ケリをつけろ!」
トビの声がそう聞こえてきて、ユーガは言われるがままに『緋眼』を解放させて、体内の元素フィーアを高める。ルインのような、『必殺技』という名目かはわからないが、ユーガの今持つ、全てをこの剣に込めてー!
「やってやるっ‼︎焔の剣閃、絆を信じる刃となれ!」
スウォーに突進しながら『緋眼』の力でスウォーの放出する地属性の元素フィーアを分解させながら、ユーガはスウォーの体へと剣を叩き込んでいく。一度大きく振りかぶって剣を振り下ろし、そのまま斬り上げてスウォーの体が僅かに揺らいだ、その瞬間ーユーガの緋色に輝く瞳が、さらに輝きを増して、剣を振り上げた状態から両手で剣の柄を握り締めて思い切り振りかざしー。
「緋焔、天翔・・・斬っっ‼︎」
全ての力を込めて、振り翳した状態からユーガはスウォーの体に向けて思い切り剣を振り下ろし、その一撃は間違いなく、スウォーの体へと刻まれた。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」
スウォーは雄叫びを上げながら、左手に持った剣を地面に突き刺して体を支えて、苦しげな表情と共にー笑みを、確かに浮かべた。
「・・・こんな、生ぬるい奴に・・・俺が、やられるだと・・・⁉︎」
スウォーは笑みを消して、ユーガに憎しげな表情を浮かべた。
「・・・認めねぇ。俺は、お前なんかに倒されるわけがねぇ・・・!俺、は・・・‼︎」
そこで、スウォーは手から剣を離してーぐらり、と前屈みに倒れ、その体はーもはや動かぬ物となり、そこから血がどくどくと流れ出している。
「・・・スウォー・・・」
ユーガは、スウォーの体を見てそう呟いてー異変に気付いた。スウォーが剣を突き刺した部分から中心に地面に、ピシ、ピシ、という音と共にひびが広がっていくのが見えて、まずいです、とルインも気付いて仲間達全員に告げた。
「このままではここは崩れます!脱出しましょう!」
ユーガ達は全員頷いて、ユーガは振り向こうとしてーユーガの体全くに力が入らない事に気づいて、ユーガもスウォー同様に前屈みに倒れかけー。
「・・・何こんなとこで寝かけてんだよ」
目の前に、紺色の服が現れてユーガの体を受け止めた。それは、紛れもなくトビのー『相棒』の背中で、ユーガは力の入らない口を何とか動かして、ごめん、と小さく呟いた。
「・・・このままユーガは俺が運ぶ。お前らは道を先導しろ」
トビの指示が背中に担がれた状態でユーガの耳に聞こえてきて、ネロがトビをいじるような声が聞こえたが、体に力が入らない。瞼にも、力が入らない。ユーガはトビ達のー仲間達の声を聞きながら、瞼をゆっくりと閉じた。

「・・・ユーガ!起きろ!」
頬に走った痛みと共に、ユーガは瞼を開けて飛び起きた。顔を上げると、トビが呆れたような視線をユーガに向けていて、すぐに辺りを見渡した。そこは、制上の門の入り口手前であり、恐らくトビ達がここまで運んでくれたのだろう、とわかる。ユーガはまだ重だるい体に鞭を打って立ち上がり、仲間達を一瞥した。
「・・・ご、ごめん・・・」
「全くだ」
トビがそう呟くと、ユーガ、トビ、ルイン、シノのそれぞれの体から、イフリート、シャドウ、シルフ、セルシウスが現れて、ユーガ達を見据えた。
『・・・どうやら、スウォーとやらと行動していたノームも無事のようだ。奴から離れ、既にボロボロの地盤を直している』
「ホントか⁉︎良かった・・・!」
「お前らは」とトビが精霊達を一瞥して、尋ねる。「これからどうすんだ?」
『我等はお前達と契約した身。これからも貴様らと共に行動を共にするであろう』
そうか、とトビはぶっきらぼうにセルシウスの言葉に頷いた。さて、とネロが明るい声で、どこかわざとそうしているような声を仲間達へと向けた。
「スウォーを倒したって事を、皆に伝えないとな」
「そうですね」とルインも笑みを浮かべる。「ケインシルヴァも、クィーリアも、ミヨジネアの人々も・・・きっと不安だったでしょうが、何とかなりましたからね」
「スウォー・・・」
ユーガがそう呟くのが聞こえ、トビはユーガを振り返って呆れたような視線を向けた。
「・・・おい、ユーガ」
「・・・うん、わかってるよ。・・・これで、終わったんだ」
どこか、ユーガは自分に言い聞かせるように言って、仲間達を一瞥した。スウォーとの激戦の証が、仲間達の体に刻み込まれている。服はずたずたに引き裂かれ、無数の傷と泥で酷いものとなっている。だがー世界を救った、その歓喜のためだろうか、どこか仲間達の顔はートビの顔もー明るい。ユーガはスウォーとの過去の決別を示すように、右手を握って天に翳して仲間達に向けて口を開いた。

「帰ろう、皆!まだまだ俺達には、やる事があるんだから!」


ーそれから、一ヶ月が経ちー。

コンコン、と部屋がノックされた。既に目を覚まして窓の外を眺めていた『彼』は、はい、と答えて扉を開ける。すると、そこには見慣れない女性のメイドが立っていた。
「あ、あの・・・ユーガさん・・・クィーリアのトビさん、という方がいらしてますが・・・」
『彼』はーユーガは、やべ、と呟いて焦った様子でぼさぼさの頭を掻いた。
「あ、えと・・・そのトビは今どこにいますか⁉︎」
「え、ええと・・・玄関に・・・」
「わかりました、ありがとうございます!」
部屋に僅かな風を残して走り去ったユーガの背中を見つめて、メイドは首を傾げた。ユーガは走りながら、どう言い訳しようかな、と考えつつ玄関へと繋がっている扉を勢いよく開ける。そこには、よく見慣れた紺の軍服を見に纏った、右眼が前髪によって隠れている少年ートビが、この家の家主の末裔でもあり、ユーガの親友でもあるネロと話をしているところだった。トビはユーガを見るなり目を細めて呆れたような声を口にした。
「・・・お前な、今日からだっつったろうが」
「ご、ごめんごめん!すっかり忘れてた・・・」
ユーガの言葉にトビはわかりやすく嘆息し、いーから、とユーガから視線を逸らして頭を押さえる。
「・・・早く準備してこいよ。おっせーな」
「わ、わかった!ありがとう!」
ユーガはそう言い残してトビとネロの前から走り去っていき、トビとネロは顔を見合わせた。
「・・・あいつは変わんねぇな。ちっとは成長したかと思ったんだが」
「ははは、まぁ昔と比べりゃ変わったは変わっただろ?」
「・・・さぁな」
「そういや、今日から行くんだったよな」
先程から言っている、今日から、というのは、ユーガとトビは二人で世界を旅し、世界各地でまだ収まっていないスウォーが引き起こした異変を収束させるための活動旅、の事だ。
「・・・ああ」
「いーなー、俺も行きてえなぁ!」
「・・・ガイアがどうなってもいいなら着いてくればいいんじゃねーか」
元より貴族のネロは、それなりに仕事もある。以前の旅ではそれらを全てほっぽり出していたのだから、当然の如くとんでもない量の資料が溜まっているのだ。
「・・・ちぇ、まぁ終わらせたら着いてかせてもらうかな」
「あーあー早く終わるとイイデスネ」
明らかにそうとは思っていないトビの言葉にネロは苦笑しー先程ユーガが消えた扉が勢いよく開き、身支度を整えたユーガが息を切らして、お待たせ、と呟いて現れ、さらにその顔に苦笑を深めた。
「・・・行くぞ」
「え、あ、うん!じ、じゃあ・・・ネロ、行ってくる!お土産待ってて!」
「はいよ、行ってらっしゃい」
ネロは笑顔で玄関から出ていくユーガ達を見つめ、その後ろ姿が扉の奥へ消えたのを確認してから、小さく呟いた。
「・・・・・・いつでも帰ってこいよ、二人とも」
その呟きを聞いた者は誰もおらず、ネロは玄関へ慈しむような笑顔を向けてから、その扉へ背を向けた。その呟きを二人は知らぬまま、ガイアの街を船で出るために港へと向かっていた。ユーガはウキウキしながら、まるで旅行に行くかのようなテンションを見せている。
「・・・呑気な旅じゃねぇぞ」
念のためトビがユーガにそう言っておくと、ユーガは笑顔を消す事なく、わかってるよ、と頷いて隣のトビを見た。
「けど、トビと旅って・・・楽しいなーって思ってさ!」
「・・・へー、そうかよ」
「ああ、そうだよ!どんな事が起こるかわからないけど、トビが一緒なら大丈夫だと思うし!」
「頼り切りにすんなよ。てめぇにも無理を押し付けてやるからな」
そんな毒舌を吐きながらも、トビはユーガから離れはしない。そう、ユーガも信じているし、トビもまたユーガが隣から離れはしないと信じているのだろう。だから、こうして二人で旅をする、という、本来のトビなら嫌がる事を彼は承諾してくれたのだ。
「・・・ああ!・・・よーし、行こうぜトビ!冒険の始まりだ!」
「・・・俺の足を引っ張るなよ」
見えてきた港を見て、ユーガは笑顔で手を上げてトビを見た。トビもまた、僅かに笑みを浮かべて口こそ悪いもののユーガに視線を向けた。太陽が、さんさんと蒼い海を照らしていて、全てを包み込むような優しい風がユーガ達の間を通り抜け、髪がぱたぱたと揺れた。それをユーガ達は感じながら、優しい風が吹く中、ガイア発の連絡船へと乗り込んだ。行き先はトビはわかっているらしいが、ユーガはまだ知る由もない。それでも、不思議と安心だった。隣には、頼りになる仲間がいるから。ユーガは微笑んで、これから何が起こるのか想像して、胸の高まりを抑えきれずにその顔に笑みをさらに深めてー、ポケットの中にある、一ヶ月前に兄から渡された棒状の何かー鍵のような物が入ったままになっており、それを見つめて一抹の寂しさを覚えたがそれを振り切るようにポケットにそれをしまい、ぐっ、と胸の前で拳を握り締めた。

二人は互いを見合い笑い合う。お前は光となり、俺がそれを支える影になるのだと。こんな約束でも、きっと途切れることのない『絆』を信じて。よく晴れた、優しい風が通り抜ける船の甲板で、彼等は拙い約束を交わした。
しおりを挟む

処理中です...