あなたが私を手に入れるまで

青猫

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第一章

15*

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 この行為はこんな熱をはらんだものだったろうかと、セリーナは頭の片隅でそう思った。
 レオンの手が肌を滑り、セリーナの呼吸を乱す。情熱に燻された彼の優しさに翻弄されて、理性が溶けていく。
「ここ……ですか」
「レ……オ……ぁ」
 彼の指がゆっくりセリーナのナカを探る。すでに一度欲を吐き出したせいか、レオンは多少は理性を取り戻したらしかった。しかし、こんなじっくりと身体を見られたり、少しずつ慎重に感じるところを探されると、今度はセリーナの方がまともでいられなくなる。
 無意識に膝をとじ合わせようとすると、「だめです」と諫める言葉とともに、彼はさらにセリーナの秘所を開いた。
「み、見ないで……」
「きれいです」
「だから……そ、ゆこと、言わない……ぁ、あ、あ」 
 指二本だけで、もう苦しい気がする。
「すごく、せまい」
 声をうわずらせてレオンが言う。セリーナは快楽に翻弄されながらも、若い夫の憧憬のような眼差しを感じていた。彼は片方の手で時々自身に触れて、同じ動きで密口へ挿れた指を抜き差しする。
「んぅっ……ぁ、だめ……」
「好く、ないですか?」
 セリーナの言葉に過敏に反応して、レオンは指での愛撫をやめてしまった。思わず焦れて、セリーナは唇を噛みしめる。
「ここも、きれい」
「ん……」
 胸をすっぽりと手で包まれて、壊れ物のようにゆっくりと触れられる。肌の感覚が鋭敏になって、彼の肉厚の指先が先端をかすめるだけで、セリーナは身をよじらせた。
 のしかかってきた彼の体躯は普段意識するより大きくて、お腹に当たる彼の欲望も、先ほどよりさらに質量を増している気がする。
「セリーナ……ずっと、ずっと好きでした……」
 突然の言葉に、セリーナはいったん瞬きを繰り返す。そして彼の真剣すぎるような告白を、微笑んで受け取った。
「うれしい……。でも、『好きでした』って、過去ではないでしょ?」
 頬を赤くして、彼は頷く。
「好きです。貴女のことが、とても」
 律儀に言い直す彼に、胸の奥のどこかが甘く引きつる。
 セリーナは彼の首に腕を回した。身体が密着する。
「ゆっくり……ね」
 そう囁くと、彼は一度固唾をのんで、セリーナの腰を抱えなおした。蜜口に先端があてがわれる。
 レオンはゆっくり腰を沈め、何か不明瞭な声を喉の奥で鳴らした。
「レオン……っぁあ……ま、待って。ちょっと……」
 大きすぎる。経験はあるのに、こじ開けられる感覚が怖い。
 けれどセリーナに覆い被さるレオンには、もう言葉は届かないようだった。必死に呼吸を抑え、セリーナが頭をのせている枕の端を握り込んでいる。
「……っリーナ……ぁ」
 せっぱ詰まった様子で、彼はさらに腰を進める。ナカを熱でなぞりあげられる感覚に、セリーナはきつく目を瞑った。
 信じられないくらい深く突き入れられ、許容量を越えた感覚の渦に飲み込まれ、ついに声が漏れる。
「あ、ぁあっ……んぅ――っ、……や、ぁ」
「セリーナ……ぁあ、こんな……」
 突然、首筋に彼が顔を埋める。ついに腰が密着し、最奥を押し上げるように剛直の先端が押し込まれた
「あ!ぁ、んっ……んぅっ」
「すごい。セリーナ……っ、セリ、ナ」
 初めは小刻みに腰をぶつける動きだったが、すぐにそれは荒々しい律動になった。レオンはうわ言のようにセリーナの名を呼んで、首筋に痛いほど吸い付き、そして唇を奪う。
 彼が動くたびに、苦しさと重い快楽が身体を穿つ。激しいキスは息継ぎもままならくなて、次第に頭が朦朧としてきた。  
「すき、です……っ、セリーナ、すき……」
「ぁ、あっ……レオ……っ」
 レオンはいっそう深くセリーナを貫き、そして突如動きを止めて、低く獣じみたうめき声を絞り出す。
 身体の奥に熱い奔流を感じ、また腰を揺すられ、息継ぎも無視したキスが繰り返される。快楽に追いやられたセリーナは、自分が果てにいき着いたのかどうかさえわからなかった。
「……っ、セリーナ?」
 そう何度も呼ばなくても、私はここにいるわよ、という言葉は声にならなかった。
 
 ++++++++++++

 瞼に朝日を感じて、ゆっくり覚醒する。次に感じたのは、身体にからみつく重い男の腕と脚。そしてうなじに吹きかかる、夫の寝息だ。
 セリーナはぼんやりと昨夜のことを反芻した。
――ああいうのは、ちょっと、想定してなかったというか……。
 若い夫の手を取って、ゆっくり段階的に進もうと思っていたのだが。
――なのに……あんな、好き好き言われたり、名前何度も呼ばれたり……。 
 昨夜のレオンの声や表情を思い出して、セリーナはカッと頬を熱くする。
「ん……せり、な?」
――ほら、今だってこうして。
「ああ、よかった。昨夜、あのまま目を覚まさないから、心配だったんです」 
 寝ぼけてもいない様子で、レオンはセリーナの顔をのぞき込んでくる。彼のむき出しの逞しい上半身が冬の白い朝日に照らされ、そこからわずかに彼の深い香りがする。
 セリーナは途端に恥ずかしくなって、上掛けに潜り込んだ。
「あ、あの……怒ってるんですか?セリーナ……俺、昨夜、すみません。我を忘れて、夢中になって……。幸せすぎて……」
――だから、どうしてそういうこと躊躇無く言うの?!
「どこか身体、つらいですか? 痛むところは?」
 おどおどとしながらも、彼の手が労わるようにセリーナのむき出しの肩を撫でた。
「レオン……」
「はい」
 兵士の習性か、いやにいい返事が返ってくる。
「あなた、ちょっとおかしいくらい、私が好きね」
「はい」
 自分のこのせりふも意味不明だが、それを一つの返事だけで肯定するこの夫の愛情は計り知れない。セリーナの経験なんて、彼のその気持ちの前には何の意味もない。そしてそれはきっと、良いことなのだ。
 シーツと上掛けの間で、セリーナは夫の手を捕まえた。隠していた顔をそっと出して、心配そうにこちらを見つめる彼と目を合わせる。
「レオン……あのね。私と結婚してくれて、ありがとう」
「……え」
 なんだか笑ってしまいそうになる。レオンは少年のようなあどけない表情で、目を見開いていた。
「それは、俺が毎日思ってることです」
 そう言って、レオンはセリーナの手をとって甲に口付けした。心があたたかくなる。
 セリーナは裸のまま、隣の夫に身を寄せて密着した。
「……あの、そういうのは、今、だめです。貴女に無理させたくないです」
「ぎゅってして?」
 彼には気の毒な要求だとわかっているが、セリーナはそれでもさらに脚を彼に絡ませた。
 レオンは何か覚悟したように一度呼吸を深くしてから、逞しい腕の中にセリーナを閉じこめてくれた。
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