あなたに聞いてほしい

チャコ

文字の大きさ
10 / 15

9

しおりを挟む
  

  いきなり生徒会長でこの国の第2王子でもあるシリウス殿下が現れたことで、教室中の視線は私達(ほとんどがシリウス殿下へなのだけど)に集中したままだ。

  シリウス殿下に婚約者がいることは周知されていても私がその相手だとは思い至らないようで、ましてや今朝の校門前でシリウス殿下とマーガレット様の親しげな様子を目撃していたならなおさらだろう。
第2王子の婚約者にしては普通すぎる見た目だし(なぜか制服は誰よりも着こなしているよ)、ずっと領地で祖父母と暮らしていたため知り合いもいない。
シリウス殿下でさえ「ソフィア嬢で合ってるよね。」と確認をとるくらいだし。
そんな得体の知れない私とシリウス殿下の組み合わせは疑問でしかないだろう。


「じゃあ、私はここで。」

「あっ、ありがとうございました。」

私は多忙な殿下をこんなことで煩わせてしまったことが申し訳なくついつい俯きがちで殿下を見送っていると行きかけた殿下が

「あぁそうだ、ソフィア嬢」

「はい」

「入学おめでとう。」

「えっ、......ありがとうございます。」

突然の言葉にじわじわとうれしさがこみあげてきてついつい顔も心もゆるんでしまう。なんてチョロい私。

「シリウス殿下」

「うんっ?」

「とてもかわいらしいお花のお見舞いありがとうご 
ざいます。」

「あぁ、気に入ってもらえたようでよかった。」

「それと......」

「......申し訳ない。もう行かないと......」

「あっ、おひき止めして申し訳ありませんでし 
た。」

やっぱり手紙の件は謝罪できなかった。このままなかったことにしていいかな?

  シリウス殿下を見送り、ざわつく教室に入ると刺すような女子学生の眼差しがちらほら......これからの学園生活が思いやられるようだ。



  自分の席につき、もの思いにふける。帰る前にもう一度ピアノ弾きたいな。やっぱりお父様に話してピアノを買ってもらおう。でも、どこから話す?......などと考えているうちに先生の話しも終わりみんなが帰り支度をしていると教室の外から


「入学式に出席しないで何をしていらしたのかしら」


「早速、上級生の方と空き教室で二人きりでいらしたみたいよ。」

「そのあと、なに食わぬ顔で第二殿下に教室に案内させるなんて。」

「えっ、もしかしてあの方がシリウス殿下の婚約者なの?マーガレット様がお似合いなのに......」

  
  明らかに私のことだよね。
クラスの子達も私のことだと気がついているので遠巻きに見る感じになる。
正確には音楽室は三人だけど......言っていることは間違っていない。


  「貴方達、そうゆう詮索はおやめなさい。」

凛とした声に振り向くと、そこにはとりまきの令嬢達を引き連れたマーガレット様が立っていた。












しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

処理中です...