アラカルトdiary

まぽわぽん

文字の大きさ
3 / 5

アオハルの通学路

しおりを挟む
7時46分発車!
あと3分後!

昔は、遅刻寸前には食パン。今じゃゼリー飲料で行ける。家から爆走で『推し』の乗るバスを目指す。

『推し』の名前なんか知らない。
私は、彼の事を『殿下』と呼んだ。

殿下は若い会社員だ。整った顔立ちにスマートな体型。バスに不似合いな容姿の持ち主で、彼の周りには女性達が自然と群がっていく。

バスの運転手がアナウンスで混雑緩和の誘導をするが、聞く耳を持つのは殿下本人と、殿下の隣を陣取って女性を敵視している『デブ男』の存在だけ。

(今日こそデブ男を弾き飛ばして隣をゲットしてやる!)

飲み終わったゼリー飲料を鞄にしまい、ICカードを取り出す。

遅刻ギリギリはデブ男への手加減だ。

(待ってろー!)

決戦を前に身構えた。
でも、
対向車線に止まるバスを目の前に信号は赤だった。
乗れない!!

「あぁ~!王子ぃ!」

悔しがるのは私…ではない。
隣で息を切らせながら信号待ちをする女子高生。
彼女は地面に膝をついて嘆いていた。

「王子?」

通学にそぐわない言葉を反芻すると、彼女は頷く。

「あのバスに『推し』がいるの!乗れないと恋敵"憎きデブ"と戦えないのっ」

信号が青に変わる。
私は彼女の手を取った。

「一緒に走ろう!」
「えっ!?」
「私の殿下…『推し』も、あのバスなの」
「嘘…あなたも恋敵?」
「一時休戦だよ!私達のタイマンは"デブ男"を倒してから!」

私達は鼓舞しながらバスへと向かった。
すれ違いでバスは発車した。


* * *


ヘナヘナ…崩れ落ちる私達。
今日はデブ男に完敗だ。
遅刻も確定だ。

でも私達は「あはは」笑い声を上げた。

楽しくて仕方がない。
仲間意識が嬉しかった。
これから定期考査というピンチは何処へやらだ。

ただただ笑い合った。


「君達…バスに乗り遅れたのか?遅刻するつもり?」


突然ふわり
降って来た声に私達はドキッとする。

横の車道に停まった車から顔を覗かせたその人は…

「え、殿下?」
「王子?」

私達の『推し』だった。

端正な顔立ちなのに、破顔した様子は少年のように可愛らしい。彼は「困ったな…」と応じながらドアを開けた。

「ただのサラリーマンに大層な役割を与えないでくれよ。出社時間まで余裕があるから君達の最寄りのバス停まで送れるけど、どうする?」


* * *


見たか、デブ男よ!
私達の圧勝だ!
青春真っ盛りの女子高生は“最強”
負ける敵なし!!

私達は乱れた制服と精神を整え直し、慎ましやかに『推し』の招待を戴いた。


-fin-
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?

中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。 殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。 入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。 そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが…… ※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です ※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...