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アオハルの通学路
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7時46分発車!
あと3分後!
昔は、遅刻寸前には食パン。今じゃゼリー飲料で行ける。家から爆走で『推し』の乗るバスを目指す。
『推し』の名前なんか知らない。
私は、彼の事を『殿下』と呼んだ。
殿下は若い会社員だ。整った顔立ちにスマートな体型。バスに不似合いな容姿の持ち主で、彼の周りには女性達が自然と群がっていく。
バスの運転手がアナウンスで混雑緩和の誘導をするが、聞く耳を持つのは殿下本人と、殿下の隣を陣取って女性を敵視している『デブ男』の存在だけ。
(今日こそデブ男を弾き飛ばして隣をゲットしてやる!)
飲み終わったゼリー飲料を鞄にしまい、ICカードを取り出す。
遅刻ギリギリはデブ男への手加減だ。
(待ってろー!)
決戦を前に身構えた。
でも、
対向車線に止まるバスを目の前に信号は赤だった。
乗れない!!
「あぁ~!王子ぃ!」
悔しがるのは私…ではない。
隣で息を切らせながら信号待ちをする女子高生。
彼女は地面に膝をついて嘆いていた。
「王子?」
通学にそぐわない言葉を反芻すると、彼女は頷く。
「あのバスに『推し』がいるの!乗れないと恋敵"憎きデブ"と戦えないのっ」
信号が青に変わる。
私は彼女の手を取った。
「一緒に走ろう!」
「えっ!?」
「私の殿下…『推し』も、あのバスなの」
「嘘…あなたも恋敵?」
「一時休戦だよ!私達のタイマンは"デブ男"を倒してから!」
私達は鼓舞しながらバスへと向かった。
すれ違いでバスは発車した。
* * *
ヘナヘナ…崩れ落ちる私達。
今日はデブ男に完敗だ。
遅刻も確定だ。
でも私達は「あはは」笑い声を上げた。
楽しくて仕方がない。
仲間意識が嬉しかった。
これから定期考査というピンチは何処へやらだ。
ただただ笑い合った。
「君達…バスに乗り遅れたのか?遅刻するつもり?」
突然ふわり
降って来た声に私達はドキッとする。
横の車道に停まった車から顔を覗かせたその人は…
「え、殿下?」
「王子?」
私達の『推し』だった。
端正な顔立ちなのに、破顔した様子は少年のように可愛らしい。彼は「困ったな…」と応じながらドアを開けた。
「ただのサラリーマンに大層な役割を与えないでくれよ。出社時間まで余裕があるから君達の最寄りのバス停まで送れるけど、どうする?」
* * *
見たか、デブ男よ!
私達の圧勝だ!
青春真っ盛りの女子高生は“最強”
負ける敵なし!!
私達は乱れた制服と精神を整え直し、慎ましやかに『推し』の招待を戴いた。
-fin-
あと3分後!
昔は、遅刻寸前には食パン。今じゃゼリー飲料で行ける。家から爆走で『推し』の乗るバスを目指す。
『推し』の名前なんか知らない。
私は、彼の事を『殿下』と呼んだ。
殿下は若い会社員だ。整った顔立ちにスマートな体型。バスに不似合いな容姿の持ち主で、彼の周りには女性達が自然と群がっていく。
バスの運転手がアナウンスで混雑緩和の誘導をするが、聞く耳を持つのは殿下本人と、殿下の隣を陣取って女性を敵視している『デブ男』の存在だけ。
(今日こそデブ男を弾き飛ばして隣をゲットしてやる!)
飲み終わったゼリー飲料を鞄にしまい、ICカードを取り出す。
遅刻ギリギリはデブ男への手加減だ。
(待ってろー!)
決戦を前に身構えた。
でも、
対向車線に止まるバスを目の前に信号は赤だった。
乗れない!!
「あぁ~!王子ぃ!」
悔しがるのは私…ではない。
隣で息を切らせながら信号待ちをする女子高生。
彼女は地面に膝をついて嘆いていた。
「王子?」
通学にそぐわない言葉を反芻すると、彼女は頷く。
「あのバスに『推し』がいるの!乗れないと恋敵"憎きデブ"と戦えないのっ」
信号が青に変わる。
私は彼女の手を取った。
「一緒に走ろう!」
「えっ!?」
「私の殿下…『推し』も、あのバスなの」
「嘘…あなたも恋敵?」
「一時休戦だよ!私達のタイマンは"デブ男"を倒してから!」
私達は鼓舞しながらバスへと向かった。
すれ違いでバスは発車した。
* * *
ヘナヘナ…崩れ落ちる私達。
今日はデブ男に完敗だ。
遅刻も確定だ。
でも私達は「あはは」笑い声を上げた。
楽しくて仕方がない。
仲間意識が嬉しかった。
これから定期考査というピンチは何処へやらだ。
ただただ笑い合った。
「君達…バスに乗り遅れたのか?遅刻するつもり?」
突然ふわり
降って来た声に私達はドキッとする。
横の車道に停まった車から顔を覗かせたその人は…
「え、殿下?」
「王子?」
私達の『推し』だった。
端正な顔立ちなのに、破顔した様子は少年のように可愛らしい。彼は「困ったな…」と応じながらドアを開けた。
「ただのサラリーマンに大層な役割を与えないでくれよ。出社時間まで余裕があるから君達の最寄りのバス停まで送れるけど、どうする?」
* * *
見たか、デブ男よ!
私達の圧勝だ!
青春真っ盛りの女子高生は“最強”
負ける敵なし!!
私達は乱れた制服と精神を整え直し、慎ましやかに『推し』の招待を戴いた。
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