アラカルトdiary

まぽわぽん

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"可愛い"余韻

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柔らかな頬にそっとキス。
匂いを嗅ぎ、優しく艶やかに指を肢体に這わせ
潤んだ瞳を見つめ、反応を確かる。

「好きだよ」

囁く甘美な声を、耳元で。
フワッとした“毛”に端正な顔を潜らせたところで僕は我慢の限界を越えた。

あー!
ムズムズするってぇぇぇ!

「やめて下さいよ、部長!!真っ昼間の動物病院で淫らな行為をしないでもらえます?」


* * *


「淫ら…だと?」

誰もが振り向くようなイケメンが、ブサ可愛い猫を抱きながら眉間に皺を寄せた。

「空気を読め、バカが。俺と“わたあめ”の愛を邪魔すんじゃねえよ。だから仕事でもミスが多いんだ。お前こそ、犬との接待をどうにかしろ!」

僕の腕の中では、隙あらば逃げ出そうとしている小型犬の“つぶあん”が暴れていた。

「く、くそぉ…」

年に一度のペットの予防接種の日。

上司と重なる不運の半休デーは…
蕁麻疹が出そうなくらいのむず痒さと、先制攻撃からの反撃カウンターが予定にない予定に組み込まれてしまった。


「終わったら遅めのランチ行くぞ」
「はぁ!?」
「接待してみろ。ペット同伴OKのカフェテラスは、もう見つけてある」
「えー。部長、ぼっちが嫌だったんじゃないですか?」

ピタッと部長は立ち止まる。出入り口のドアで振り返った彼は、少し照れた素ぶりを見せるも一瞬で余韻を消し去った。

「ほぉ…。明日から怒涛の仕事量を与えてやろうか。思い存分、ぼっちで楽しんでみろよ」

完璧な営業スマイルは、僕を無遠慮に射抜いた。
ざぁーっと血の気が引く。


* * *


手に抱く"つぶあん"がペロッと頬を舐める。

え、嘘、優しい。
気遣ってくれたの!?

まさかの思いは、つぶらな瞳が落ちていた『ワンコおやつ』の欠片に向いていることでアッサリ潰えた。
先方は、お腹が空いてごはんが食べたいだけかもしれない。

「カフェテラスは此処から5分だ。歩くぞ」

部長は僕を見ると口角を上げた。


-fin-
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