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5日目
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佐々野「髪、戻したんだ。」
俺「うん。やっぱりそのまんまの俺でいいかなって。」
従兄に無理を言って店の開店前に髪色を元に戻してもらった。
佐々野「うん、やっぱりこっちのほうが好きだ。」
そう言ってくれる気はしていた。
尊臣は俺を肯定してくれる。
自分を作る必要は無いと言ってもらえている気がする。
なんとなく、今日は尊臣の部屋へ行く事になった。
マンションに住んでるんだ…。
エントランスのあるマンション。
おじゃまする時はお部屋のナンバーを入力するマンション。
俺「俺、こんなマンション入るのはじめて。」
田舎にはこんなマンションなかったし。
高校も大学も寮だったし。
エレベーターで15階に登る。
部屋は、
俺「広っ。」
佐々野「もう荷物まとめちゃったから必要最低限の物しかないけど。」
俺「家具どうすんの?」
佐々野「ここも叔父の持ち物なんだ。
家具も備え付けで、春からは従妹が住むことになっている。」
俺「そうなんだ。」
急に、もうすぐ尊臣がいなくなる事を実感してしまった。
告白をされる前まではただの仲のいい友達。
卒業してもたまには東京にくるだろうし、その時はまた皆で飲んだりして、お互いに新しい出会いもあるだろうから疎遠になっても仕方ないくらいの軽い関係。
そんなただの友達だと思っていた。
俺「本当に卒業したらもう会えない?」
佐々野「…うん。」
俺「俺は会いたい。」
佐々野「ごめん、勝手で。
きっと俺、耐えられない。
友達とかもう無理だよ。」
俺「俺…俺は…。」
俺は何を言おうとしている?
尊臣を好き?
いや、まだはっきりとは言えない。
言葉に詰まっていると尊臣がぴたりと体を寄せてきた。
壁と尊臣に挟まれて、
俺「ちょ、何?」
佐々野「今だって耐えられないよ。」
息づかいが荒い。
佐々野「俺、勘違いするよ?アレンがそんな寂しそうにしてると。」
俺「ちょっと待って。」
佐々野「うん、少しだけ待つ。だから、嫌だったら逃げて。」
俺「え?」
壁に両手をついて俺を見つめる。
嫌?
…ではない。
…かもしれない。どっち?
顔が迫ってくる。
唇が俺の唇に軽く触れた。
佐々野「アレン…いい?」
返事が出来ない。
体が硬直する。
首筋に尊臣の唇と荒い息を感じる。
壁についていた両手はいつの間にかきつく俺の体を抱きしめて動けなくなっていた。
さらに下腹部には硬いものが押し付けられて。
頭がくらくらして冷や汗が吹き出す。
駄目だ。
嫌だ。
怖い。
俺「っ、離せっ!気持ち悪い…。」
突き放してトイレに駆け込み吐いた。
尊臣の気持ちなど考えている余裕などないくらい、とにかくこの場から逃げ出したかった。
どうやって自分の部屋に帰ったかわからないけれどすぐにシャワーをして体を洗った。
首筋についたねっとりとした感触が消えない。
髪を乾かすのもそこそこにベッドに潜りこんで膝を抱えた。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
震えが止まらない。
どれくらいたった頃だろう。
部屋はもう暗くなっていて、気持ちも落ち着いてきた。
そして押し寄せる自己嫌悪。
俺は尊臣になんて事言ってしまったんだ。
よりによって気持ち悪いだなんて。
部屋に人の気配がした。
林「あれ?いたんだ。
洗濯物とりにきたんだけど、真っ暗だから居ないんだと思ってた。
どうした?具合悪い?」
俺「俺って最低の最悪。」
林「何があった?」
俺「俺には勇気も覚悟も足りなかった。」
林「何に挑んだ?」
有木「おーい、どうした?」
林「魔王討伐に失敗したらしい。」
俺「せめてイクタ先輩に攻略法を聞いてから挑むべきだった。」
林「どのボス倒すの?」
俺「倒さないけど傷つけた。」
有木「佐々野かいな?せやから中途半端はやめとき言うたやないか。」
俺「でも俺、たぶん佐々野君が好きだ。
恋人と友達の違いって何?
セックスするかしないかなら俺一生恋人なんか出来ない。」
林「アレン、そういうの嫌いだもんね。」
俺「知ってた?」
林「なんとなくね。
同室になった最初の頃は絶対肌を見せなかったし。
エロゲだって甘酸っぱくて抜けそうもないのしかしないし。何より抜いてる気配がまったく無いし。」
俺「俺、恋人なんかいなくてもイクタがいればそれでよかったのに。」
林「ごめんな。」
俺「いつまでも一緒にはいられない事くらいわかってた。
けど、ユウキが相手ならそのうち愛想つかして別れるだろうから、女と付き合うよりはいいかなって応援してたんだ。」
有木「おい。」
林「うん、ノゾムと破局する事はあってもアレンとはずっと友達だよ。」
有木「おいっ。」
俺「かわいそうなユウキとは俺がずっと友達でいてやるよ。」
有木「何があったんや?ちゃかしとらんと話せや。」
俺「…。」
林「聞いちゃいけないよ。」
有木「なんでや?」
林「早くも愛想つかしそうだよ。」
有木「悩みくらい聞いてやるっちゅうのに。」
林「セカンドレイプって聞いた事ないの?」
有木「佐々野にひどい事されたんか?」
俺「違うよ。佐々野君の名誉のために話すけど…。」
林「無理に話さなくていいよ。」
俺「自分でも、もう大丈夫だと思ってたんだけどさ、駄目だった。
俺、中学の頃イジメられてて、その時服脱がされて写真撮られたんだ。
上級生の男子三人に押さえ付けられて、女子は四人見てたな。
その時は訳もわからずただ怖かったけど、あの時のあいつら全員、興奮してたんだ。
押さえ付けられた手も、荒い息も、視線も全部気持ち悪くて。
それから俺、エッチな事全部苦手になっちゃって。
佐々野君に触れられて、フラッシュバックしちゃったんだよね。気持ち悪いって言っちゃったんだ。
で、吐いた。」
有木「そら傷つくわ。」
林「佐々野君には話せる?」
俺「無理。本当は思いだして今も吐きそう。」
林「じゃあ違う話しよ?」
俺「うん。」
林「四年間楽しかった。俺、アレンと同室でよかったよ。」
俺「俺も。」
林「ちょくちょく東京には来るからさ、また遊ぼ?」
俺「ユウキに会いに来るんだろ。」
林「そうだけど、アレンにも会いたいよ?」
俺「やっぱり俺、イクタと離れるのつらい。」
林「結婚する?」
俺「する。」
有木「おいっ!」
俺「イクタはさ、小さくてかわいいけど、本当は頼りになるんだよね。駄目な俺を受け入れて普通に友達でいてくれた。
ユウキもわかりにくいけど、優しいって知ってるよ。
二人ともありがとう。」
有木「おう。でもイクタはやらんよ。」
俺「うん。俺じゃエッチなイクタは幸せにできないから。」
林「そうだね。俺じゃアレンを壊しちゃうかもだし。」
俺「…あれ?」
有木「なんや?」
俺「俺、なんか今まで勘違いしてたかも。」
林「そだね。俺、尻は無理って言っただろ?」
俺「そっか…そうだよね、イクタ意外とオスだもんね。」
有木「…(汗)」
林「って事で攻略法はノゾムに聞いてね。」
有木「なんの?」
林「ダメージの少ない受け止め方?」
俺「エクスカリバーの受け入れ方?」
俺「うん。やっぱりそのまんまの俺でいいかなって。」
従兄に無理を言って店の開店前に髪色を元に戻してもらった。
佐々野「うん、やっぱりこっちのほうが好きだ。」
そう言ってくれる気はしていた。
尊臣は俺を肯定してくれる。
自分を作る必要は無いと言ってもらえている気がする。
なんとなく、今日は尊臣の部屋へ行く事になった。
マンションに住んでるんだ…。
エントランスのあるマンション。
おじゃまする時はお部屋のナンバーを入力するマンション。
俺「俺、こんなマンション入るのはじめて。」
田舎にはこんなマンションなかったし。
高校も大学も寮だったし。
エレベーターで15階に登る。
部屋は、
俺「広っ。」
佐々野「もう荷物まとめちゃったから必要最低限の物しかないけど。」
俺「家具どうすんの?」
佐々野「ここも叔父の持ち物なんだ。
家具も備え付けで、春からは従妹が住むことになっている。」
俺「そうなんだ。」
急に、もうすぐ尊臣がいなくなる事を実感してしまった。
告白をされる前まではただの仲のいい友達。
卒業してもたまには東京にくるだろうし、その時はまた皆で飲んだりして、お互いに新しい出会いもあるだろうから疎遠になっても仕方ないくらいの軽い関係。
そんなただの友達だと思っていた。
俺「本当に卒業したらもう会えない?」
佐々野「…うん。」
俺「俺は会いたい。」
佐々野「ごめん、勝手で。
きっと俺、耐えられない。
友達とかもう無理だよ。」
俺「俺…俺は…。」
俺は何を言おうとしている?
尊臣を好き?
いや、まだはっきりとは言えない。
言葉に詰まっていると尊臣がぴたりと体を寄せてきた。
壁と尊臣に挟まれて、
俺「ちょ、何?」
佐々野「今だって耐えられないよ。」
息づかいが荒い。
佐々野「俺、勘違いするよ?アレンがそんな寂しそうにしてると。」
俺「ちょっと待って。」
佐々野「うん、少しだけ待つ。だから、嫌だったら逃げて。」
俺「え?」
壁に両手をついて俺を見つめる。
嫌?
…ではない。
…かもしれない。どっち?
顔が迫ってくる。
唇が俺の唇に軽く触れた。
佐々野「アレン…いい?」
返事が出来ない。
体が硬直する。
首筋に尊臣の唇と荒い息を感じる。
壁についていた両手はいつの間にかきつく俺の体を抱きしめて動けなくなっていた。
さらに下腹部には硬いものが押し付けられて。
頭がくらくらして冷や汗が吹き出す。
駄目だ。
嫌だ。
怖い。
俺「っ、離せっ!気持ち悪い…。」
突き放してトイレに駆け込み吐いた。
尊臣の気持ちなど考えている余裕などないくらい、とにかくこの場から逃げ出したかった。
どうやって自分の部屋に帰ったかわからないけれどすぐにシャワーをして体を洗った。
首筋についたねっとりとした感触が消えない。
髪を乾かすのもそこそこにベッドに潜りこんで膝を抱えた。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
震えが止まらない。
どれくらいたった頃だろう。
部屋はもう暗くなっていて、気持ちも落ち着いてきた。
そして押し寄せる自己嫌悪。
俺は尊臣になんて事言ってしまったんだ。
よりによって気持ち悪いだなんて。
部屋に人の気配がした。
林「あれ?いたんだ。
洗濯物とりにきたんだけど、真っ暗だから居ないんだと思ってた。
どうした?具合悪い?」
俺「俺って最低の最悪。」
林「何があった?」
俺「俺には勇気も覚悟も足りなかった。」
林「何に挑んだ?」
有木「おーい、どうした?」
林「魔王討伐に失敗したらしい。」
俺「せめてイクタ先輩に攻略法を聞いてから挑むべきだった。」
林「どのボス倒すの?」
俺「倒さないけど傷つけた。」
有木「佐々野かいな?せやから中途半端はやめとき言うたやないか。」
俺「でも俺、たぶん佐々野君が好きだ。
恋人と友達の違いって何?
セックスするかしないかなら俺一生恋人なんか出来ない。」
林「アレン、そういうの嫌いだもんね。」
俺「知ってた?」
林「なんとなくね。
同室になった最初の頃は絶対肌を見せなかったし。
エロゲだって甘酸っぱくて抜けそうもないのしかしないし。何より抜いてる気配がまったく無いし。」
俺「俺、恋人なんかいなくてもイクタがいればそれでよかったのに。」
林「ごめんな。」
俺「いつまでも一緒にはいられない事くらいわかってた。
けど、ユウキが相手ならそのうち愛想つかして別れるだろうから、女と付き合うよりはいいかなって応援してたんだ。」
有木「おい。」
林「うん、ノゾムと破局する事はあってもアレンとはずっと友達だよ。」
有木「おいっ。」
俺「かわいそうなユウキとは俺がずっと友達でいてやるよ。」
有木「何があったんや?ちゃかしとらんと話せや。」
俺「…。」
林「聞いちゃいけないよ。」
有木「なんでや?」
林「早くも愛想つかしそうだよ。」
有木「悩みくらい聞いてやるっちゅうのに。」
林「セカンドレイプって聞いた事ないの?」
有木「佐々野にひどい事されたんか?」
俺「違うよ。佐々野君の名誉のために話すけど…。」
林「無理に話さなくていいよ。」
俺「自分でも、もう大丈夫だと思ってたんだけどさ、駄目だった。
俺、中学の頃イジメられてて、その時服脱がされて写真撮られたんだ。
上級生の男子三人に押さえ付けられて、女子は四人見てたな。
その時は訳もわからずただ怖かったけど、あの時のあいつら全員、興奮してたんだ。
押さえ付けられた手も、荒い息も、視線も全部気持ち悪くて。
それから俺、エッチな事全部苦手になっちゃって。
佐々野君に触れられて、フラッシュバックしちゃったんだよね。気持ち悪いって言っちゃったんだ。
で、吐いた。」
有木「そら傷つくわ。」
林「佐々野君には話せる?」
俺「無理。本当は思いだして今も吐きそう。」
林「じゃあ違う話しよ?」
俺「うん。」
林「四年間楽しかった。俺、アレンと同室でよかったよ。」
俺「俺も。」
林「ちょくちょく東京には来るからさ、また遊ぼ?」
俺「ユウキに会いに来るんだろ。」
林「そうだけど、アレンにも会いたいよ?」
俺「やっぱり俺、イクタと離れるのつらい。」
林「結婚する?」
俺「する。」
有木「おいっ!」
俺「イクタはさ、小さくてかわいいけど、本当は頼りになるんだよね。駄目な俺を受け入れて普通に友達でいてくれた。
ユウキもわかりにくいけど、優しいって知ってるよ。
二人ともありがとう。」
有木「おう。でもイクタはやらんよ。」
俺「うん。俺じゃエッチなイクタは幸せにできないから。」
林「そうだね。俺じゃアレンを壊しちゃうかもだし。」
俺「…あれ?」
有木「なんや?」
俺「俺、なんか今まで勘違いしてたかも。」
林「そだね。俺、尻は無理って言っただろ?」
俺「そっか…そうだよね、イクタ意外とオスだもんね。」
有木「…(汗)」
林「って事で攻略法はノゾムに聞いてね。」
有木「なんの?」
林「ダメージの少ない受け止め方?」
俺「エクスカリバーの受け入れ方?」
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