転生辺境伯次男はチートが過ぎる

如月 満月

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子供時代

第13話 シルフィ、初めての旅行編⑤

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「美味しかったけど何でかな……疲れた」

夕食のバイキングで出されていた海産物を使った料理はどれも美味しかった。
特に『一角鮫のフカヒレ煮』は絶品で3つもおかわりしてしまった。

だがしかしである。
バイキングなので自分で料理を取りに行ったのだが、料理が入った器の手前に置かれてるPOPに書かれてる食材の説明文がいちいち物騒すぎて、本当に食べていいものかビビってしまい取るのに躊躇してしまった。
すると俺の後ろにいたガイナス様がトングを掴んでひょいひょいと俺の皿に料理を乗せていくので、止める間もなく俺の皿は海産物の料理で埋め尽くされてしまった。

幸い好き嫌いはほとんど無いので結局はどれも美味しく頂いたのだが、案の定人目もはばからず俺を膝に乗せて給餌し始めたガイナス様が、俺の口に料理を運ぶ前にその料理に使われている食材について良かれと思ってなのかは不明だがいちいち説明してくるのだ。
その度に「え、その魚食べても大丈夫?」「え?これ毒入ってないよね!?」と内心キョドりながらも口に入るとどれも美味しいので結局は全部食べてしまった。

だが何故だろう、美味しかったはずなのに精神的にとても疲れた。
あと周囲の視線がやっぱり気になる……。


「坊っちゃま、気を強く持ってください」
「ロッゾ……たまには助けて」
「私に竜王様をお止めする権限はございません」

大変いさぎよい返事である。
着替えなどは基本的にロッゾに手伝ってもらうのだが、それすらもガイナス様がやると言われた時はさすがにロッゾが「これは私の仕事ですので」と言って突っぱねた。
マッケンさんも「あんまりベッタリしすぎると鬱陶しがられますよ」と言ってガイナス様に釘をさしていた。
そのせいか、この食事の際の給餌に関しては2人とも生温い目で見守る事にしたらしい。
曰く、“竜人の番に対する愛情表現”なので邪魔する方が野暮なのだそう。





──────────────





お腹も膨れて満足した俺たちはそろそろ寝ようかという事で3階の客室に向かった。
ロッゾに寝巻きに着替えさせられ、他は大丈夫そうだという事で自分の部屋に戻ってもらった。
そうしていざ寝ようとベッドに座った時に部屋の扉がノックされた。

「今いいかな?」

ノックの主はガイナス様だった。
今まで日中は俺にストーカーのようにベッタリと張り付く事はあっても夜寝る時は部屋にまで来る事が無かったので少し緊張したが扉を開けた。


「シルフィにお願いがあるんだ」
「……僕に?」

ベッドの端に腰掛けた俺の横に座ったガイナス様はこちらに顔を向けて俺を見つめてくる。

「嫌なら嫌だって言ってもらって良い。でも出来たら番である俺には隠したままでいてほしくない。シルフィの事なら例え俺に不利になるような事だとしても何でも知っておきたいからね」

そう言うとガイナス様は俺から視線を外して少しの間沈黙した後、再度俺に視線を合わせて閉じていた口を開いた。

「……俺は物以外に人も鑑定出来るスキルを持っているんだが、シルフィの事を鑑定しようとすると何か・・に弾かれて見えないんだ。これはあくまで俺の予想だが、例えば神のような・・・・・とても大きな力を持つ存在によって他者から見えないように秘匿されているんじゃないのかな?」
「………………。」

ガイナス様の言葉に俺は分からないどころか心当たり・・・・がある。ありまくる。

“創造神の愛し子”という俺の称号。
それがどんな効果をもたらすのかいまだに理解出来ていないが、ガイナス様の言う『とても大きな存在によって他者から見えないように秘匿されている』というのは恐らくこの称号……と言うか創造神サマが十中八九関わっていると思われる。

「それでさっき言った“お願い”の話に戻るんだが、俺がシルフィを鑑定出来るようシルフィが俺に鑑定する許可を出してくれないか?」
「……え?許可?」

それは俺のステータス画面を見れるよう、ガイナス様に俺から鑑定する許可を出すって事だろうか。
でも創造神サマが俺のステータス画面を見えないようにしてるって事は、創造神サマの許可を取らないとどっちにしろ見えないんじゃないのかな?

「これはあくまで俺の今までの経験と予想だが、秘匿されているシルフィ本人が“この人なら見せても良い”と考えて許可を与えた人物ならその人物だけには見えるようになると思うんだ。それにこれから先、シルフィの事を真に理解出来ておらず大事な部分を知らないままでは、番としてちゃんと守る事が出来ないのではないか……守る事が困難になる場合が出てくるのではないか、と。俺はそれが一番怖いんだ。やっと見つけた番を、シルフィを失う事が何よりも怖い」

そう言うとガイナス様は顔を寄せて俺のおでこに触れるだけのキスをした。

「竜人族は基本的に生涯に1人、番だけを愛する種族だ。だからちゃんと番うと寿命は夫婦で共有され、寿命が長い方の相手と同じになる。どちらかが竜人族以外の場合は基本的に長命である竜人族の寿命と同じになる。じゃないと番と死に別れた竜人族の末路は悲惨なんだ。……残されてしまった孤独に耐えきれず狂っていき、最期は自分の喉を鋭い爪で掻き切り自死する」

竜人族は番に対する想いが他の種族に比べて強いというのは知っていたが、まさか番と死に別れたらそんな壮絶な最期を迎えるとは知らなかった。
そして自分を番だと、伴侶にしたいと言っているのがその竜人族の王様・・
今までは“竜人族ってちょっと重い”くらいの軽い考えで接していたのだが、これは竜人族に対して真面目に一度接し方などを考え直す必要があるかもしれない……。


「とりあえず「許可する」って言えばいいんですかね?僕はどうしたらいいんでしょうか」
「シルフィが“心からガイナスになら見せても良い”と思ってくれるなら……「許可する」と言えば俺にも見えるようになると思うよ」


ガイナス様の言葉に俺は目を閉じる。

ーー俺の秘密。

思いつく秘密ならわりとある。
転生者である事、創造神サマに気に入られて称号を貰った事、何が出来るのかまだまだ把握出来ていないがたぶんその称号の影響でチート能力を授かっている事。
あとは魔法適性も全属性使えてこれだけでも充分チートだ。

(会ってすぐのガイナス様に俺の秘密を開示してもいいのだろうか?)

迷いがない訳では無い。
むしろ見かけの年齢と違い中身は純粋な子供では無いので、大人としての思考で色々と考えてしまう分、不安は常にある。
だけど俺を“唯一”だと言い、家族とは違う愛を与えてくれて、真摯に俺自身を見てくれる人を信じてもいいのかもしれない。

(俺は俺の『彼なら信じられる』という“直感”を信じよう)

そして目を開けた。



「僕を鑑定する事、僕の秘密を知る事、ガイナス様だけに“許可します”」
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