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懇親会は和やかに
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パーティー会場のホールについた。テーブルには沢山の御馳走が並び、楽団までいる。
第三王子の周囲には人だかりができ、またその護衛の生徒達にも女子がわいわいと群がっていた。
私はひとまず会がスタートするのを壁際で待った。やがて第三王子をはじめ、生徒会の面々が壇上にあがり、挨拶をする。
「皆、楽しんでくれ」と王子が言い終わった途端、楽団がワルツの曲を奏で出した。男同士、女同士のグループは皆どこかへ声をかけるタイミングを狙っていた。
私はさっそく給仕から白いお皿を受け取り、お料理が並ぶエリアへと移動する。ビュッフェスタイルなので、気になるご馳走を山盛り取った後はそそくさとその場を逃げ出した。
座って会食できるエリアもあるが、テラスへと移動した。ここにもテーブルが置いてある。1人で座って、もぐもぐとご馳走を食べ出した。
ホールではシリウスを見つけた。彼もまた女生徒に囲まれていた。見目も麗しいし、背も高い。頭もいいのだ。このチャンスを女生徒達が放っておくはずもない。
かけているメガネの真ん中を指でそっと押さえて、ポジションを直す。またもぐもぐとご馳走を食べはじめた。
(関係ない)
彼には彼の世界がある。
モヤモヤする気持ちを抑えてグイッとドリンクを一気飲みした。
テラスに風が吹いた。ご馳走も堪能したし、もう帰ろうと席から立ち上がったところで、男子生徒に声をかけられた。
「メガネ、変えたんだね」
クラスメイトだ。優しい雰囲気で、決して悪い印象はない。
「あ…うん…」
「あの、よければダンス、どうかな?」
驚いて、瞬きを繰り返す。まさかダンスに誘われるとは思わなかったからだ。
「え…っと」
戸惑っていると、スッと手を差し伸べられる。まぁ、一度くらいなら、とその手にそっと触れようとした時だった。
突然横から手を力強く掴まれた。
びっくりして顔を上げると、シリウスが息を切らせながらそこにいた。
「ハァハァ…おまえな…」
「な、なに」
「ずっと俺のこと見てたくせに…」
「み、見てないです」
「ハァハァ…そういうことにしてやるよ…」
クラスメイトの男子は戸惑っていた。
「シリウス君、一体…」
「コイツはダメ。俺のだから!」
シリウスは私の手を掴んだまま会場を抜けた。庭園に出て誰もいないベンチまで歩き、私も引っ張られるがまま二人で座る。
困った。どうしてシリウスはここにいるんだろう。
「料理は美味しかったか?」
「えっ」
「ずっと食べてた」
「み、見てたの?」
「見てた」
シリウスが私を見る。
「ずっと見てた」
見つめ合う。どうしたらいいかわからない。なんで言えばいいのかわからないけど、握られた手が汗ばんでくる。
「シリウスは女の子に囲まれてたね」
「ああ」
「きっとみんな、待ってるよ…」
「フレナは?」
「え?」
「フレナは待ってなかった?俺のこと」
「私は……別に……」
しぼむ声。言葉に詰まる。
「俺はとっとと会話を終わらせて、フレナと話したかったよ。なのにさっさと居なくなろうとするし、男に声かけられてるし」
「そんな事言われても…約束してなかったし……」
突然シリウスが私を立ち上がらせる。
片手で腰をホールドし、もう片方の手で私の手を握り直した。パニックになる私。
「ほんと…お前は……」
微かに聞こえる楽団の音楽に合わせて、シリウスがゆらりとステップを踏みはじめる。私はそれに慌ててついていく。
シリウスが耳元でささやいた。
「俺の事避けだして…気がついたら医療の現場で働きだして…いつのまにか1人で俺の先を歩くようになって…全然俺の事、必要としてなくて…」
シリウスの言葉を、ダンスをしながら黙って聞いている。
「俺が女の子といても平気な顔して…もうフレナを諦めようと思って誰かと付き合っても…全然楽しくねーし…いつまでもフレナは俺のことを気にもしてないし…」
愚痴が止まらないらしい。
「頬を叩かれた時もキョトンとして…あの時俺めちゃくちゃ頭にきて…なんで俺ばっかりフレナの事考えてるんだろうって…」
言われてることに驚き、目を見開く私。
その間もダンスは続く。
「ブサイクなんて言ってごめん」
しょんぼりしているシリウスを見上げながら、彼のリードに身を任せる。
「ようやくフレナとまた話せるようになったのに、他の男とダンスはないだろ…」
シリウスはダンスを止めて、私の肩口に顔をうずめた。
「なぁ、あとどれくらい俺頑張ればいい?」
切なげに問われた質問の意味を考える。
「私のこと、好きってこと?」
そう言うと、シリウスはガバッと顔を上げた。
「10歳の時からそう言ってただろ!」
「10歳の頃なんて、そういう『好き』じゃないって思ってた」
「10歳の時から本気の『好き』だったし!」
「そ、そうだったんだ…」
あれから8年も変わらず好きでいてくれたということらしい。
「はぁ、もう本当俺ばっかり好きなんだな…」
「そ、そんなことない…よ?」
「なに、気ぃ遣ってんの?」
「さっきも、女の子に囲まれてたシリウスを見たら、ちょっとモヤモヤしたっていうか…」
シリウスがジッと私を見つめる。
顔が熱くなってきた。
そっと視線をずらすと、きつく抱きしめられた。シリウスはとても嬉しそうだ。
「俺、明日にでもフレナのご両親に婚約をお願いしたいと思っているから」
「えええっ!」
展開が早すぎる!
「もう、もう何年も初恋をこじらせてるから。無理。お願い。受け入れて。それにもともと親同士、俺たちは婚約予定だっただろ」
「ええええええ!」
知らなかった!
シリウスは翌日、私の親に向けて本当に手紙を書いた。正式に婚約をしたい、ご挨拶に伺いたいと。
シリウスのご両親はシリウスが私と疎遠になって心配していたのだとか。
私の親も「相手がシリウス君に決まって良かった」と喜んだ。
同じ貴族同士、仲も良い。
もともと親同士でご縁を結びたがっていたのだ。婚約になんの問題も生じなかった。
晴れて二人は婚約者となり、学園内でも周知されることとなった。
放課後図書館で待ち合わせることが当たり前になり、私はもうぼっちではなくなったのだった。
Fin.
第三王子の周囲には人だかりができ、またその護衛の生徒達にも女子がわいわいと群がっていた。
私はひとまず会がスタートするのを壁際で待った。やがて第三王子をはじめ、生徒会の面々が壇上にあがり、挨拶をする。
「皆、楽しんでくれ」と王子が言い終わった途端、楽団がワルツの曲を奏で出した。男同士、女同士のグループは皆どこかへ声をかけるタイミングを狙っていた。
私はさっそく給仕から白いお皿を受け取り、お料理が並ぶエリアへと移動する。ビュッフェスタイルなので、気になるご馳走を山盛り取った後はそそくさとその場を逃げ出した。
座って会食できるエリアもあるが、テラスへと移動した。ここにもテーブルが置いてある。1人で座って、もぐもぐとご馳走を食べ出した。
ホールではシリウスを見つけた。彼もまた女生徒に囲まれていた。見目も麗しいし、背も高い。頭もいいのだ。このチャンスを女生徒達が放っておくはずもない。
かけているメガネの真ん中を指でそっと押さえて、ポジションを直す。またもぐもぐとご馳走を食べはじめた。
(関係ない)
彼には彼の世界がある。
モヤモヤする気持ちを抑えてグイッとドリンクを一気飲みした。
テラスに風が吹いた。ご馳走も堪能したし、もう帰ろうと席から立ち上がったところで、男子生徒に声をかけられた。
「メガネ、変えたんだね」
クラスメイトだ。優しい雰囲気で、決して悪い印象はない。
「あ…うん…」
「あの、よければダンス、どうかな?」
驚いて、瞬きを繰り返す。まさかダンスに誘われるとは思わなかったからだ。
「え…っと」
戸惑っていると、スッと手を差し伸べられる。まぁ、一度くらいなら、とその手にそっと触れようとした時だった。
突然横から手を力強く掴まれた。
びっくりして顔を上げると、シリウスが息を切らせながらそこにいた。
「ハァハァ…おまえな…」
「な、なに」
「ずっと俺のこと見てたくせに…」
「み、見てないです」
「ハァハァ…そういうことにしてやるよ…」
クラスメイトの男子は戸惑っていた。
「シリウス君、一体…」
「コイツはダメ。俺のだから!」
シリウスは私の手を掴んだまま会場を抜けた。庭園に出て誰もいないベンチまで歩き、私も引っ張られるがまま二人で座る。
困った。どうしてシリウスはここにいるんだろう。
「料理は美味しかったか?」
「えっ」
「ずっと食べてた」
「み、見てたの?」
「見てた」
シリウスが私を見る。
「ずっと見てた」
見つめ合う。どうしたらいいかわからない。なんで言えばいいのかわからないけど、握られた手が汗ばんでくる。
「シリウスは女の子に囲まれてたね」
「ああ」
「きっとみんな、待ってるよ…」
「フレナは?」
「え?」
「フレナは待ってなかった?俺のこと」
「私は……別に……」
しぼむ声。言葉に詰まる。
「俺はとっとと会話を終わらせて、フレナと話したかったよ。なのにさっさと居なくなろうとするし、男に声かけられてるし」
「そんな事言われても…約束してなかったし……」
突然シリウスが私を立ち上がらせる。
片手で腰をホールドし、もう片方の手で私の手を握り直した。パニックになる私。
「ほんと…お前は……」
微かに聞こえる楽団の音楽に合わせて、シリウスがゆらりとステップを踏みはじめる。私はそれに慌ててついていく。
シリウスが耳元でささやいた。
「俺の事避けだして…気がついたら医療の現場で働きだして…いつのまにか1人で俺の先を歩くようになって…全然俺の事、必要としてなくて…」
シリウスの言葉を、ダンスをしながら黙って聞いている。
「俺が女の子といても平気な顔して…もうフレナを諦めようと思って誰かと付き合っても…全然楽しくねーし…いつまでもフレナは俺のことを気にもしてないし…」
愚痴が止まらないらしい。
「頬を叩かれた時もキョトンとして…あの時俺めちゃくちゃ頭にきて…なんで俺ばっかりフレナの事考えてるんだろうって…」
言われてることに驚き、目を見開く私。
その間もダンスは続く。
「ブサイクなんて言ってごめん」
しょんぼりしているシリウスを見上げながら、彼のリードに身を任せる。
「ようやくフレナとまた話せるようになったのに、他の男とダンスはないだろ…」
シリウスはダンスを止めて、私の肩口に顔をうずめた。
「なぁ、あとどれくらい俺頑張ればいい?」
切なげに問われた質問の意味を考える。
「私のこと、好きってこと?」
そう言うと、シリウスはガバッと顔を上げた。
「10歳の時からそう言ってただろ!」
「10歳の頃なんて、そういう『好き』じゃないって思ってた」
「10歳の時から本気の『好き』だったし!」
「そ、そうだったんだ…」
あれから8年も変わらず好きでいてくれたということらしい。
「はぁ、もう本当俺ばっかり好きなんだな…」
「そ、そんなことない…よ?」
「なに、気ぃ遣ってんの?」
「さっきも、女の子に囲まれてたシリウスを見たら、ちょっとモヤモヤしたっていうか…」
シリウスがジッと私を見つめる。
顔が熱くなってきた。
そっと視線をずらすと、きつく抱きしめられた。シリウスはとても嬉しそうだ。
「俺、明日にでもフレナのご両親に婚約をお願いしたいと思っているから」
「えええっ!」
展開が早すぎる!
「もう、もう何年も初恋をこじらせてるから。無理。お願い。受け入れて。それにもともと親同士、俺たちは婚約予定だっただろ」
「ええええええ!」
知らなかった!
シリウスは翌日、私の親に向けて本当に手紙を書いた。正式に婚約をしたい、ご挨拶に伺いたいと。
シリウスのご両親はシリウスが私と疎遠になって心配していたのだとか。
私の親も「相手がシリウス君に決まって良かった」と喜んだ。
同じ貴族同士、仲も良い。
もともと親同士でご縁を結びたがっていたのだ。婚約になんの問題も生じなかった。
晴れて二人は婚約者となり、学園内でも周知されることとなった。
放課後図書館で待ち合わせることが当たり前になり、私はもうぼっちではなくなったのだった。
Fin.
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