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第一章
第12話
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時刻は深夜。
バロック王国・王都バロック。
王城の近くに位置する貴族館の一室で1人の貴族と騎士が密会していた。
「報告を読んだ。リンシア様が戻られたそうだ」
「ケイン殿ぉ、それは本当ですか? こちらは手配したとおりオークジェネラルを用意したんですよぉ?」
ケインは顔を歪めた。この計画を遂行するために数ヶ月も準備してきたからだ。
そしてうまくいけば、今の侯爵の地位から公爵への王手がかかっていたのだ。
ただでさえ計画がぶち壊されたのに問題がまだある。
「さらに、国王の病が治るかも知れないとも書いてある」
「っ!!『ロストガーゴイルドッグス』の毒ですよぉ?」
「そうだ、不死の狂犬と言われた伝説の魔物。その毒をついに手に入れたというのに……」
「何かの間違いじゃないんですかねぇ?」
騎士の表情からは半信半疑な感情が伝わった。『ロストガーゴイルドッグス』の毒は知る者がほとんどいない不死の病の現況でまだ詳しく解明はされていない。
その毒が血液に入れば数ヵ月後に死ぬ。そしてこの事実を知る者がほとんどいないことが解明されていない理由だ。
ケインやこの騎士が知っているのは、この情報は隣国からもたらされたもので、死刑囚で実験を行ったからだ。
どんな回復術でもSポーションでも治らなかったあの病気が治るかもしれないと言われたのだ。信じられるわけがない。
「1%未満の確率と書いてある。そして報告書はここまでしか書かれていない」
ケインの1%未満という言葉に騎士は少し安堵したようだった。だけどリンシアの暗殺計画は失敗に終わっていることを思い出しすぐに表情を戻す。
「ということはぁ……」
「そうだ。つまりはこのクレイという少年を始末しなければならない。出来ればリンシアと護衛メイドもだ。そして騎士サナス、お前にも裏で動いてもらわねばならない」
「そういうことですかぁ」
サナスと呼ばれた騎士はめんどくさそうに笑みを浮かべた。
サナスはケインに雇われて騎士になったのだが、地位としては下級騎士になる。それは裏の仕事をやるために実力を隠して目立たないように行動を心がけていたからである。
本当の実力ならオークジェネラルぐらいは無傷で倒せるのだ。
そんなサナスにケインは今回の計画を伝えていく。
大まかに言うと、リンシアは隣国に奴隷として売るために誘拐、クレイと護衛メイドは暗殺するということだった。
「いいですねぇ奴隷! あれはかなり高く売れますよ~」
「誘拐が目的ではなく国から消すことだ。もしものときは殺しても構わない」
そう彼らはあくまでもあの方が有利になるように動いているからだ。
そしてケインは続けて言った。
「今回はザックも使う」
「ザックをですかぁ?」
王都では知る人ぞ知る裏ギルド。
窃盗や奴隷売買、他国へ情報を漏らしたりと指名手配されているものが集まった組織。
そこの幹部であるAランクの元冒険者ザック。実力はサナス同等と認識していた。
ザックとのコネクションをここで使うとは思っていなかったのだろう。サナスは顔を歪めた。
「念には念をだ。お前も表の仕事がある。自由には動けないだろう」
「騎士団がありますからねぇ……了解ですぅ。ザックのやつに計画を伝えときますよぉ」
「依頼料はかなり弾んでおけ。あとお前なら心配ないが、感づかれないように頼むぞ」
「任せてくださいよぇ。何回こういうのやってきたと思っているんですかぁ。それにザックを使うなら俺は高みの見物ですよぉ」
「今回はお前もなるべく参戦しろ」
「念には念をですかぁ、わかりましたぁ」
サナスは悪い笑みをこぼす。自分への依頼料も増えるからである。
それに釣られてケインもまた悪い笑みをこぼした。
「では行ってこい」
「了解ですぅ」
サナスが出て行った後の部屋でケインはグラスにワインを注いだ。
窓から見える星を見ながら、またも笑うのだった。
バロック王国・王都バロック。
王城の近くに位置する貴族館の一室で1人の貴族と騎士が密会していた。
「報告を読んだ。リンシア様が戻られたそうだ」
「ケイン殿ぉ、それは本当ですか? こちらは手配したとおりオークジェネラルを用意したんですよぉ?」
ケインは顔を歪めた。この計画を遂行するために数ヶ月も準備してきたからだ。
そしてうまくいけば、今の侯爵の地位から公爵への王手がかかっていたのだ。
ただでさえ計画がぶち壊されたのに問題がまだある。
「さらに、国王の病が治るかも知れないとも書いてある」
「っ!!『ロストガーゴイルドッグス』の毒ですよぉ?」
「そうだ、不死の狂犬と言われた伝説の魔物。その毒をついに手に入れたというのに……」
「何かの間違いじゃないんですかねぇ?」
騎士の表情からは半信半疑な感情が伝わった。『ロストガーゴイルドッグス』の毒は知る者がほとんどいない不死の病の現況でまだ詳しく解明はされていない。
その毒が血液に入れば数ヵ月後に死ぬ。そしてこの事実を知る者がほとんどいないことが解明されていない理由だ。
ケインやこの騎士が知っているのは、この情報は隣国からもたらされたもので、死刑囚で実験を行ったからだ。
どんな回復術でもSポーションでも治らなかったあの病気が治るかもしれないと言われたのだ。信じられるわけがない。
「1%未満の確率と書いてある。そして報告書はここまでしか書かれていない」
ケインの1%未満という言葉に騎士は少し安堵したようだった。だけどリンシアの暗殺計画は失敗に終わっていることを思い出しすぐに表情を戻す。
「ということはぁ……」
「そうだ。つまりはこのクレイという少年を始末しなければならない。出来ればリンシアと護衛メイドもだ。そして騎士サナス、お前にも裏で動いてもらわねばならない」
「そういうことですかぁ」
サナスと呼ばれた騎士はめんどくさそうに笑みを浮かべた。
サナスはケインに雇われて騎士になったのだが、地位としては下級騎士になる。それは裏の仕事をやるために実力を隠して目立たないように行動を心がけていたからである。
本当の実力ならオークジェネラルぐらいは無傷で倒せるのだ。
そんなサナスにケインは今回の計画を伝えていく。
大まかに言うと、リンシアは隣国に奴隷として売るために誘拐、クレイと護衛メイドは暗殺するということだった。
「いいですねぇ奴隷! あれはかなり高く売れますよ~」
「誘拐が目的ではなく国から消すことだ。もしものときは殺しても構わない」
そう彼らはあくまでもあの方が有利になるように動いているからだ。
そしてケインは続けて言った。
「今回はザックも使う」
「ザックをですかぁ?」
王都では知る人ぞ知る裏ギルド。
窃盗や奴隷売買、他国へ情報を漏らしたりと指名手配されているものが集まった組織。
そこの幹部であるAランクの元冒険者ザック。実力はサナス同等と認識していた。
ザックとのコネクションをここで使うとは思っていなかったのだろう。サナスは顔を歪めた。
「念には念をだ。お前も表の仕事がある。自由には動けないだろう」
「騎士団がありますからねぇ……了解ですぅ。ザックのやつに計画を伝えときますよぉ」
「依頼料はかなり弾んでおけ。あとお前なら心配ないが、感づかれないように頼むぞ」
「任せてくださいよぇ。何回こういうのやってきたと思っているんですかぁ。それにザックを使うなら俺は高みの見物ですよぉ」
「今回はお前もなるべく参戦しろ」
「念には念をですかぁ、わかりましたぁ」
サナスは悪い笑みをこぼす。自分への依頼料も増えるからである。
それに釣られてケインもまた悪い笑みをこぼした。
「では行ってこい」
「了解ですぅ」
サナスが出て行った後の部屋でケインはグラスにワインを注いだ。
窓から見える星を見ながら、またも笑うのだった。
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