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いわゆる高校デビューとは違う、と思う。
彼方(かなた)と俺は双子だけあってかなり顔形が似通っているから、頻繁に間違えられてしまう。
しかし幼馴染の茜は見分けかたを心得ている。
茜は昔からの付き合いであるため、俺と彼方の違いは自然にわかるらしかった。どこで見分けているのかと聞いたことがあるが、「え? 声と顔と……動き方……」などと言われてわからなかった。他の人間は声と顔も動きもそっくりと言っているのだ。
茜は「似てるように見せかけてまったく似てない」と俺たち双子を評するが、客観的にみて俺たち双子はかなり双子らしい双子だ。
「……ずいぶん派手になって、まぁ」
彼方は昨日も夜遅くまで遊んでいたようだ。中学で軽音楽部に入ってから彼方は音楽に傾倒している。
たまに夜に駅前で歌っているらしい。酔っ払いやオネーサンがお金を入れてくれることもあるらしく、お金がないときには頻繁に夜の駅前に出かけている。両親からは危ないからやめなさいと言われているようだが、なかなかやめない。
なにかあってからじゃ遅いってわかっているんだろうか。
まだ寝ていたんだろう。寝巻きがわりにしている灰色のスウェットを着たままの彼方は、双子の兄である遥を見て心底おかしそうに笑った。
笑うと八重歯が見えるところまでそっくりでちょっとげんなりする。
見た目はそっくりでも中身はほとんど全部違う。
「俺と間違われるのそんなにイヤなのかよ」
言いながらふわ、とあくびをしながら寝癖がつき放題の髪をぼりぼりとかいた。
彼方は間違われることに関してあまり嫌悪感を抱かないらしい。
「双子だし親でも間違えるんだからさぁ。他人が見分けつかなくても仕方ないじゃん。てか、入れ替わりとか出来そうだし便利だと思えばいいんじゃないの?」
「お前に間違われて迷惑なのはオレだけだからそんなこと言えるんだろ。お前の行いの悪さがオレのせいにされるのはもうゴメンだ」
「んーまぁそうかもね。お前は真面目だもんなぁ。……けど入学早々金髪なんかにして大丈夫か?」
「あそこは校則が緩い。成績さえ良ければ髪を何色にしてもいいんだとさ」
「えーまじ? 知らんかった。まぁ俺はそこまで頭良くないからそんな目立つ色にはしないけど」
「これでオレとお前を間違えるやつなんか一人もいなくなるだろ」
「ほーん、よかったな。茜以外にもちゃんと認識されるってわけだ」
「……そういうこと」
華々しく金髪デビューしたんだし、さすがに茜も驚くだろう。かっこいいと一言でも言ってもらえれば嬉しいんだけどな。
少し浮き足だった気持ちで、待ち合わせ場所となっているマンションの玄関までエレベーターで降りた。
「おはようございます」
妙にバカ丁寧な挨拶をした茜は俺と彼方を交互に見つめる。
「お、さすがの茜も彼方の変身ぶりには開いた口が塞がらないってか?」
「………変身ぶり、ですか」
茜はなんだかいつもと様子が違う。いつもと同じ声なはずなのに与える印象がまるで違うというか……
「え、まさかわからないなんてことないよな? 昨日と今日で雲泥の差じゃん~?」
「いえ、その、そうですね。とてもいいと思います」
茜の取ってつけたようなその敬語はなんなんだ?
歩き方も動きもなんだかおかしい。楚々としている、というか歩幅が狭すぎる。
俺と彼方はお互いに目を合わせて顔を顰めた。
彼方(かなた)と俺は双子だけあってかなり顔形が似通っているから、頻繁に間違えられてしまう。
しかし幼馴染の茜は見分けかたを心得ている。
茜は昔からの付き合いであるため、俺と彼方の違いは自然にわかるらしかった。どこで見分けているのかと聞いたことがあるが、「え? 声と顔と……動き方……」などと言われてわからなかった。他の人間は声と顔も動きもそっくりと言っているのだ。
茜は「似てるように見せかけてまったく似てない」と俺たち双子を評するが、客観的にみて俺たち双子はかなり双子らしい双子だ。
「……ずいぶん派手になって、まぁ」
彼方は昨日も夜遅くまで遊んでいたようだ。中学で軽音楽部に入ってから彼方は音楽に傾倒している。
たまに夜に駅前で歌っているらしい。酔っ払いやオネーサンがお金を入れてくれることもあるらしく、お金がないときには頻繁に夜の駅前に出かけている。両親からは危ないからやめなさいと言われているようだが、なかなかやめない。
なにかあってからじゃ遅いってわかっているんだろうか。
まだ寝ていたんだろう。寝巻きがわりにしている灰色のスウェットを着たままの彼方は、双子の兄である遥を見て心底おかしそうに笑った。
笑うと八重歯が見えるところまでそっくりでちょっとげんなりする。
見た目はそっくりでも中身はほとんど全部違う。
「俺と間違われるのそんなにイヤなのかよ」
言いながらふわ、とあくびをしながら寝癖がつき放題の髪をぼりぼりとかいた。
彼方は間違われることに関してあまり嫌悪感を抱かないらしい。
「双子だし親でも間違えるんだからさぁ。他人が見分けつかなくても仕方ないじゃん。てか、入れ替わりとか出来そうだし便利だと思えばいいんじゃないの?」
「お前に間違われて迷惑なのはオレだけだからそんなこと言えるんだろ。お前の行いの悪さがオレのせいにされるのはもうゴメンだ」
「んーまぁそうかもね。お前は真面目だもんなぁ。……けど入学早々金髪なんかにして大丈夫か?」
「あそこは校則が緩い。成績さえ良ければ髪を何色にしてもいいんだとさ」
「えーまじ? 知らんかった。まぁ俺はそこまで頭良くないからそんな目立つ色にはしないけど」
「これでオレとお前を間違えるやつなんか一人もいなくなるだろ」
「ほーん、よかったな。茜以外にもちゃんと認識されるってわけだ」
「……そういうこと」
華々しく金髪デビューしたんだし、さすがに茜も驚くだろう。かっこいいと一言でも言ってもらえれば嬉しいんだけどな。
少し浮き足だった気持ちで、待ち合わせ場所となっているマンションの玄関までエレベーターで降りた。
「おはようございます」
妙にバカ丁寧な挨拶をした茜は俺と彼方を交互に見つめる。
「お、さすがの茜も彼方の変身ぶりには開いた口が塞がらないってか?」
「………変身ぶり、ですか」
茜はなんだかいつもと様子が違う。いつもと同じ声なはずなのに与える印象がまるで違うというか……
「え、まさかわからないなんてことないよな? 昨日と今日で雲泥の差じゃん~?」
「いえ、その、そうですね。とてもいいと思います」
茜の取ってつけたようなその敬語はなんなんだ?
歩き方も動きもなんだかおかしい。楚々としている、というか歩幅が狭すぎる。
俺と彼方はお互いに目を合わせて顔を顰めた。
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