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第6章 ミニーブルにて
第77話 夜景
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「うわっ、これ濃厚ですごく美味しいですっ」
エミリスは栗のペーストが乗ったケーキを一口食べると、頬を押さえて感動していた。
「だろ? 絶対気に入ると思ってたよ」
「はいっ! おいしすぎますー」
このケーキは美味しいが、重量感がある。空腹だとしても、常人では彼女の目の前のケーキを食べ切るのすら、なかなか大変だろう。
「さっきまでも、すごく食べてたわよね……?」
ナターシャは、エミリスがこれまで大量の肉を平然と食べ切ったのを見ている。
そのうえで今美味しそうにケーキを頬張る姿が信じられない。
「どこに入っていってるのか、俺も信じられないよ」
アティアスが言う。
エミリスのお腹を横から摘んでみると「ひゃあっ」と声を漏らしたが、不思議なことに膨らんでもいないのだ。
「ふふ、美味しいものがいっぱい食べられるの幸せですー」
◆
「じゃ、気をつけてねー」
「姉さんこそ」
ケーキがエミリスのお腹に格納されるのを見届けたあと、ナターシャ達と別れて宿に戻った。
「料理もケーキも最高でしたー。アティアス様、ありがとうございました」
部屋に着いてすぐ、彼女が笑顔でお礼を言ってきた。会計はかなり高く付いたが、彼女の笑顔が見られて良かった。
「今日は特別だぞ? 明日からは程々にな」
「はいっ」
左手を挙げて元気に返事をする。
素直に聞くと言うことは、今日の料理はよほど満足したらしい。
「じゃ、もうお風呂入って寝ますか?」
彼女が言いながら、立ち上がって服を脱ごうとする。
それを後ろから腕を回して抱き寄せた。
「ふぇ? 急にどうしたんですか?」
平静に言いながらも、彼の胸に頭を擦り寄せてくる。
「……ひとつ、お願いがあるんだが」
「はい。私にできることなら……どうぞ仰ってください」
抱きしめられる感触に身を委ねつつ、彼の言葉に返す。
「一度、空からこの街の灯りを見てみたい。綺麗なんじゃないかなって思って」
「……良いですよ。今日は月も無いし、暗めの服であれば周りから見えないと思いますから」
彼の提案に、エミリスは二つ返事で肯定する。
暗い服に着替えた2人は、そっとベランダに出る。
エミリスは自分だけ少し浮かび、彼の背中から脇の下に腕を回すようにして身体を密着させた。
ここまでぴったりくっつく必要はないのだが、彼女がそうしたかったのが本音だ。
「それじゃ行きますよ」
「ああ、頼む」
周りの気配をチェックし、付近に人がいないことを確認する。
そして、一気に高く飛び上がった。
ぐんぐんと高度を上げ、2人はあっという間に空の彼方にたどり着く。
下を見下ろすと、ミニーブルの街の明かりが眼下に広かった。
「下を見るのは少し怖いけど、綺麗だな」
「ですねー。自分で飛んでてなんですけど、これだけ高いとちょっとゾクゾクしちゃいますね……」
特にアティアスは、彼女が手を離すと落ちる。高いところが苦手な訳ではないが、それを考えるとぞくっとする感覚があった。
「山から見下ろすと綺麗なのは知ってたけど、こうして真上から見るのはそれ以上だな。……これをエミーにも見せたかったんだ」
「ありがとうございます。街の明かりってこんなに綺麗なんですね……」
あの光のひとつひとつに人の営みがあるというのが俄かには信じられない。ただ、それが星のようにきらきらと輝いて見えた。
ゆっくり街を周回するように空を駆けて、色々な角度から夜景を堪能する。
ふと、アティアスの首筋に冷たい感触があった。
不思議に思って振り返るが、真っ暗で彼女の顔は見えない。
「す、すみません……。……涙が……」
エミリスは泣いていた。
手が使えないので、頬を濡らした涙がそのまま彼に落ちてきたのだった。
「どうした? 大丈夫か?」
「いえ……、ちょっと感動してしまって。……この前は慌てていて、周りを見る余裕なんてなかったのですけど。……こうしていると、本当に飛んでるんだなーって実感が」
彼の問いに、彼女が答える。
こうして空から下を見下ろすと、自由に飛べることに感動してつい涙が出てきてしまったのだ。
「そうだな。俺もこんな体験ができるとは、考えたこともなかったよ。……今日はありがとう。寒いし、そろそろ降りるか?」
「そうですね。……またいつでもお連れしますよ」
そう言って、彼女はアティアスを抱く腕に少し力を入れて、更に耳元で囁く。
「……次は、私のお願いも聞いていただけますか?」
「俺にできることなら構わないぞ?」
「ふふ、冗談です。アティアス様からは貰いすぎるくらい、幸せを貰ってますから。……このままずっと、アティアス様のお側に置いて頂ければそれで充分です」
何を今更と思わなくもないが、改めて宣言する。
「結婚式でも言っただろ? 生涯共に過ごすって。一度結んだ約束は破らないと誓うよ」
「そうでしたね。……これからもよろしくお願いしますっ」
◆
「おはようございます。アティアス様」
翌朝、ゆっくりと目が覚めると、先に起きていたエミリスとベッドで目が合う。
「ああ、おはよう。よく寝られたか?」
「はい。だいぶ涼しくなってきたので、ぐっすりですー」
秋になりだいぶ夜の気温は下がってきた。
暑さが苦手な彼女は、夏場は彼に抱きついて寝られないのを残念がっていたが、ようやく心置きなく密着できることに喜んでいた。
「今日はどうする?」
アティアスが聞く。
招待されている誕生日パーティーは4日後で、それまでは暇だった。
「うーん、とりあえずはもう少しゆっくりしたいですー」
そう言って彼女はアティアスに抱きついて、彼の胸に顔を埋める。
先に目が覚めてからずっと、こうしたかったのだが、起こしてしまうので我慢していたのだった。
彼が頭を撫でると、エミリスは機嫌良く呟いた。
「むふー。幸せすぎますー」
そんな彼女の耳元で囁く。
「……朝からだけど構わないか?」
「……私をもっと幸せにしてくださる気ですね? ……喜んでお受けしますよ」
そう返して、彼女はアティアスの顔を見つめた。
◆
「そうだ、新しいドレスでも買うか?」
結局その後二度寝し、いつもに比べてもかなり遅めに起きた2人は、今日の予定を相談する。
ゼバーシュから出発する時、一応荷物にドレスも入れてはきたのだが、出発が夏だったこともあり薄手のものしか持ってきてはいなかった。
まだパーティまで日があることもあって、折角ならば新しいものを買ってもいいかと考えたのだ。
「うーん、それは嬉しいのですが、後々荷物になるし、レンタルでもいいかなぁと思うのですけど」
彼女はパーティの後のことを考えて、悩んでいた。
「それならいい手があるぞ。夏服はナターシャに預けてゼバーシュに持って帰って貰えばいい。向こうは馬車だからな」
「なるほどですー。……でもいいんですか? それ……」
「ま、大した量でもないし大丈夫だろ。ダメならギルド経由で送るさ」
「はい。それなら安心ですね」
起きるのが遅かったこともあり、朝食はまだ取っていなかった。
昼食までの時間を考えて、衣装店に向かう道の途中の露店で、バーガーを買って歩きながら食べることにした。
「シンプルですけど美味しいですね、これ」
単純にハンバーグと野菜をパンで挟んでソースをかけただけのものだが、それぞれ別々に食べるのとは異なりなかなか美味しい。
昼が近いこともあって、流石に今回はエミリスも1個だけにした。
「だろ? たまにはこういうのも悪くない」
「ですねー」
そのうち、衣装店に着いた。
アティアスも初めて来る店だが、宿で聞いたところ、そこそこ有名な店のようだった。
「さ、また着せ替え人形をさせてもらえ」
「はいっ、わかりました」
エミリスは栗のペーストが乗ったケーキを一口食べると、頬を押さえて感動していた。
「だろ? 絶対気に入ると思ってたよ」
「はいっ! おいしすぎますー」
このケーキは美味しいが、重量感がある。空腹だとしても、常人では彼女の目の前のケーキを食べ切るのすら、なかなか大変だろう。
「さっきまでも、すごく食べてたわよね……?」
ナターシャは、エミリスがこれまで大量の肉を平然と食べ切ったのを見ている。
そのうえで今美味しそうにケーキを頬張る姿が信じられない。
「どこに入っていってるのか、俺も信じられないよ」
アティアスが言う。
エミリスのお腹を横から摘んでみると「ひゃあっ」と声を漏らしたが、不思議なことに膨らんでもいないのだ。
「ふふ、美味しいものがいっぱい食べられるの幸せですー」
◆
「じゃ、気をつけてねー」
「姉さんこそ」
ケーキがエミリスのお腹に格納されるのを見届けたあと、ナターシャ達と別れて宿に戻った。
「料理もケーキも最高でしたー。アティアス様、ありがとうございました」
部屋に着いてすぐ、彼女が笑顔でお礼を言ってきた。会計はかなり高く付いたが、彼女の笑顔が見られて良かった。
「今日は特別だぞ? 明日からは程々にな」
「はいっ」
左手を挙げて元気に返事をする。
素直に聞くと言うことは、今日の料理はよほど満足したらしい。
「じゃ、もうお風呂入って寝ますか?」
彼女が言いながら、立ち上がって服を脱ごうとする。
それを後ろから腕を回して抱き寄せた。
「ふぇ? 急にどうしたんですか?」
平静に言いながらも、彼の胸に頭を擦り寄せてくる。
「……ひとつ、お願いがあるんだが」
「はい。私にできることなら……どうぞ仰ってください」
抱きしめられる感触に身を委ねつつ、彼の言葉に返す。
「一度、空からこの街の灯りを見てみたい。綺麗なんじゃないかなって思って」
「……良いですよ。今日は月も無いし、暗めの服であれば周りから見えないと思いますから」
彼の提案に、エミリスは二つ返事で肯定する。
暗い服に着替えた2人は、そっとベランダに出る。
エミリスは自分だけ少し浮かび、彼の背中から脇の下に腕を回すようにして身体を密着させた。
ここまでぴったりくっつく必要はないのだが、彼女がそうしたかったのが本音だ。
「それじゃ行きますよ」
「ああ、頼む」
周りの気配をチェックし、付近に人がいないことを確認する。
そして、一気に高く飛び上がった。
ぐんぐんと高度を上げ、2人はあっという間に空の彼方にたどり着く。
下を見下ろすと、ミニーブルの街の明かりが眼下に広かった。
「下を見るのは少し怖いけど、綺麗だな」
「ですねー。自分で飛んでてなんですけど、これだけ高いとちょっとゾクゾクしちゃいますね……」
特にアティアスは、彼女が手を離すと落ちる。高いところが苦手な訳ではないが、それを考えるとぞくっとする感覚があった。
「山から見下ろすと綺麗なのは知ってたけど、こうして真上から見るのはそれ以上だな。……これをエミーにも見せたかったんだ」
「ありがとうございます。街の明かりってこんなに綺麗なんですね……」
あの光のひとつひとつに人の営みがあるというのが俄かには信じられない。ただ、それが星のようにきらきらと輝いて見えた。
ゆっくり街を周回するように空を駆けて、色々な角度から夜景を堪能する。
ふと、アティアスの首筋に冷たい感触があった。
不思議に思って振り返るが、真っ暗で彼女の顔は見えない。
「す、すみません……。……涙が……」
エミリスは泣いていた。
手が使えないので、頬を濡らした涙がそのまま彼に落ちてきたのだった。
「どうした? 大丈夫か?」
「いえ……、ちょっと感動してしまって。……この前は慌てていて、周りを見る余裕なんてなかったのですけど。……こうしていると、本当に飛んでるんだなーって実感が」
彼の問いに、彼女が答える。
こうして空から下を見下ろすと、自由に飛べることに感動してつい涙が出てきてしまったのだ。
「そうだな。俺もこんな体験ができるとは、考えたこともなかったよ。……今日はありがとう。寒いし、そろそろ降りるか?」
「そうですね。……またいつでもお連れしますよ」
そう言って、彼女はアティアスを抱く腕に少し力を入れて、更に耳元で囁く。
「……次は、私のお願いも聞いていただけますか?」
「俺にできることなら構わないぞ?」
「ふふ、冗談です。アティアス様からは貰いすぎるくらい、幸せを貰ってますから。……このままずっと、アティアス様のお側に置いて頂ければそれで充分です」
何を今更と思わなくもないが、改めて宣言する。
「結婚式でも言っただろ? 生涯共に過ごすって。一度結んだ約束は破らないと誓うよ」
「そうでしたね。……これからもよろしくお願いしますっ」
◆
「おはようございます。アティアス様」
翌朝、ゆっくりと目が覚めると、先に起きていたエミリスとベッドで目が合う。
「ああ、おはよう。よく寝られたか?」
「はい。だいぶ涼しくなってきたので、ぐっすりですー」
秋になりだいぶ夜の気温は下がってきた。
暑さが苦手な彼女は、夏場は彼に抱きついて寝られないのを残念がっていたが、ようやく心置きなく密着できることに喜んでいた。
「今日はどうする?」
アティアスが聞く。
招待されている誕生日パーティーは4日後で、それまでは暇だった。
「うーん、とりあえずはもう少しゆっくりしたいですー」
そう言って彼女はアティアスに抱きついて、彼の胸に顔を埋める。
先に目が覚めてからずっと、こうしたかったのだが、起こしてしまうので我慢していたのだった。
彼が頭を撫でると、エミリスは機嫌良く呟いた。
「むふー。幸せすぎますー」
そんな彼女の耳元で囁く。
「……朝からだけど構わないか?」
「……私をもっと幸せにしてくださる気ですね? ……喜んでお受けしますよ」
そう返して、彼女はアティアスの顔を見つめた。
◆
「そうだ、新しいドレスでも買うか?」
結局その後二度寝し、いつもに比べてもかなり遅めに起きた2人は、今日の予定を相談する。
ゼバーシュから出発する時、一応荷物にドレスも入れてはきたのだが、出発が夏だったこともあり薄手のものしか持ってきてはいなかった。
まだパーティまで日があることもあって、折角ならば新しいものを買ってもいいかと考えたのだ。
「うーん、それは嬉しいのですが、後々荷物になるし、レンタルでもいいかなぁと思うのですけど」
彼女はパーティの後のことを考えて、悩んでいた。
「それならいい手があるぞ。夏服はナターシャに預けてゼバーシュに持って帰って貰えばいい。向こうは馬車だからな」
「なるほどですー。……でもいいんですか? それ……」
「ま、大した量でもないし大丈夫だろ。ダメならギルド経由で送るさ」
「はい。それなら安心ですね」
起きるのが遅かったこともあり、朝食はまだ取っていなかった。
昼食までの時間を考えて、衣装店に向かう道の途中の露店で、バーガーを買って歩きながら食べることにした。
「シンプルですけど美味しいですね、これ」
単純にハンバーグと野菜をパンで挟んでソースをかけただけのものだが、それぞれ別々に食べるのとは異なりなかなか美味しい。
昼が近いこともあって、流石に今回はエミリスも1個だけにした。
「だろ? たまにはこういうのも悪くない」
「ですねー」
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