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5.一回目④
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みどりが絵を描いている間、休み休みで三十分ほどその行為は続いたが、伊沢はほんの少し形を変えかけただけで、それ以上勃つこともなく終わった。
伊沢が感じてくれたら気分は違ったが、何も変化がないままではただ顎が疲れただけだった。
大樹がキッチンで口をすすぎソファへと戻ると、伊沢は早々に服を着ていた。
「弟が面倒かけてごめんなさいね」
みどりが強制させた行為なので、面倒をかけたという言葉が適切なのかは分からないが、大樹は首を横に振った。
みどりから報酬の入った封筒が大樹に手渡される。
「あなたのこと気に入ったわ。良かったらまた来て下さらないかしら」
「えっ。いいんですか?」
みどりの思いがけない言葉に、大樹は驚く。正直に嬉しかった。
決して楽ではなかったが、また憧れの伊沢に会えるという喜びが、伊沢への罪悪感よりも勝った。
ちらりと伊沢を見ると、予想通り不服そうな顔をしている。
大樹は、次の土曜日の同じ時間に来ることを、みどりと約束した。
「あお。イツキくんをお見送りして差し上げて」
部屋を出てすぐに玄関なのでそんな気を遣ってもらわなくても良かったのが、大樹は素直に甘んじた。
みどりは部屋の中から笑顔で大樹を見送った。
依頼内容はともかくとして、普通にしていたら優しい美人の姉だった。
大樹は上がり框に座るとスニーカーを履いた。
見送りで後ろに立つ伊沢から、背中に刺々しい視線が注がれるのが分かる。
「……どういうつもりだ」
顔を見ずとも、伊沢が機嫌悪いことが声で分かる。出迎えてくれた時とは大違いだ。
大樹は振り返ることなく靴紐を結び続けた。
「高校生のくせに、こんな援助交際のようなことして。校則違反だぞ」
真面目な生徒会長らしい小言だと思いながら、大樹は小さく溜め息をついた。
腕を組み、大樹を見下ろしていそうな気がした。
「別に舐めただけで、援交って言えるほどのことしてないと思いますけど。それに、そんなこと言うなら、会長のお姉さんが援交で女子高生に金出してるおっさんと同じことしてるって言ってるようなもんです」
まるで大樹だけを非難するような言葉に少し不満が生じ、返す言葉に表れる。
「……」
みどりへの批判に伊沢が言葉を詰まらせた。
あれだけのことをさせられて文句を言わないくらいなのだから、伊沢にとって姉は大事な存在なのだ。姉の立場を悪くすることを、もう言えないはずだ。
靴紐を結び終え、大樹は立ち上がった。
くるりと伊沢を振り返る。勢いよく振り返ったせいか、少し驚いたような伊沢と目が合う。
最初に掲示板で応募した時は、まさかこんなことになるとは思いもしなかった。
ただ遠くから眺めていた憧れの生徒会長と、こんな関係になるなんて。
大樹は強く息を吐いた。伊沢をしっかりと見つめ、宣言する。
「言っとくけど、次は絶対イカす!」
「は!?」
ぽかんと呆気にとられた様子の伊沢を残し、言い逃げするように大樹は伊沢家を後にした。
これは宣戦布告だ。
まったく感じてもらえないなんて、納得がいかない。男としては、リベンジしたくなる。
運良く、みどりがその機会を与えてくれた。
拳を握り締め、大樹は心の中で次こそはと強く誓った。
伊沢が感じてくれたら気分は違ったが、何も変化がないままではただ顎が疲れただけだった。
大樹がキッチンで口をすすぎソファへと戻ると、伊沢は早々に服を着ていた。
「弟が面倒かけてごめんなさいね」
みどりが強制させた行為なので、面倒をかけたという言葉が適切なのかは分からないが、大樹は首を横に振った。
みどりから報酬の入った封筒が大樹に手渡される。
「あなたのこと気に入ったわ。良かったらまた来て下さらないかしら」
「えっ。いいんですか?」
みどりの思いがけない言葉に、大樹は驚く。正直に嬉しかった。
決して楽ではなかったが、また憧れの伊沢に会えるという喜びが、伊沢への罪悪感よりも勝った。
ちらりと伊沢を見ると、予想通り不服そうな顔をしている。
大樹は、次の土曜日の同じ時間に来ることを、みどりと約束した。
「あお。イツキくんをお見送りして差し上げて」
部屋を出てすぐに玄関なのでそんな気を遣ってもらわなくても良かったのが、大樹は素直に甘んじた。
みどりは部屋の中から笑顔で大樹を見送った。
依頼内容はともかくとして、普通にしていたら優しい美人の姉だった。
大樹は上がり框に座るとスニーカーを履いた。
見送りで後ろに立つ伊沢から、背中に刺々しい視線が注がれるのが分かる。
「……どういうつもりだ」
顔を見ずとも、伊沢が機嫌悪いことが声で分かる。出迎えてくれた時とは大違いだ。
大樹は振り返ることなく靴紐を結び続けた。
「高校生のくせに、こんな援助交際のようなことして。校則違反だぞ」
真面目な生徒会長らしい小言だと思いながら、大樹は小さく溜め息をついた。
腕を組み、大樹を見下ろしていそうな気がした。
「別に舐めただけで、援交って言えるほどのことしてないと思いますけど。それに、そんなこと言うなら、会長のお姉さんが援交で女子高生に金出してるおっさんと同じことしてるって言ってるようなもんです」
まるで大樹だけを非難するような言葉に少し不満が生じ、返す言葉に表れる。
「……」
みどりへの批判に伊沢が言葉を詰まらせた。
あれだけのことをさせられて文句を言わないくらいなのだから、伊沢にとって姉は大事な存在なのだ。姉の立場を悪くすることを、もう言えないはずだ。
靴紐を結び終え、大樹は立ち上がった。
くるりと伊沢を振り返る。勢いよく振り返ったせいか、少し驚いたような伊沢と目が合う。
最初に掲示板で応募した時は、まさかこんなことになるとは思いもしなかった。
ただ遠くから眺めていた憧れの生徒会長と、こんな関係になるなんて。
大樹は強く息を吐いた。伊沢をしっかりと見つめ、宣言する。
「言っとくけど、次は絶対イカす!」
「は!?」
ぽかんと呆気にとられた様子の伊沢を残し、言い逃げするように大樹は伊沢家を後にした。
これは宣戦布告だ。
まったく感じてもらえないなんて、納得がいかない。男としては、リベンジしたくなる。
運良く、みどりがその機会を与えてくれた。
拳を握り締め、大樹は心の中で次こそはと強く誓った。
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