彼女と結婚するまでに

藤沢ひろみ

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43.αfter <龍二>

「写真出来上がったら見においで」
 カメラを下ろして微笑んだ上級生に、高校一年生の龍二の胸は高鳴った。

 その時に一目惚れしたわけではない。
 中学を出たばかりのまだまだ少年らしさの抜けない龍二に、二歳年上の高校生というのはとても大人びて見えた。話をしたのも顔を合わせたのもそれが初めてだったくせに、上級生に声を掛けられたという緊張とともにその優しく大人びた雰囲気に魅了された。それが、高城だった。

 龍二は誘われるままに写真部を訪れ、写真というよりも高城に惹かれて写真部に入部した。そして、高城が卒業するまでの一年間、龍二は高城のことをまるで兄のように慕った。

 親の離婚で離れて暮らしているが、龍二には年の離れた姉がいる。柔らかな雰囲気の姉とも、可愛らしさのある龍二とも違う。逞しいわけではなかったが、高城には頼れる男らしさがあり、龍二を優しく包んでくれる存在だった。

 高城と過ごす毎日が楽しくて、甘やかされるのも甘えるのも大好きで、龍二のその気持ちはいつしか恋に変わっていた。

 しかし、再会した時には龍二の方が高城よりも少し背が高いくらいで、むしろ龍二の方が高城を包めるほどになっていたのだった。



 土曜日の朝、部屋の電気はつけずに遮光カーテンの隙間から差し込む程良い明るさの中で、龍二は高城を抱いていた。

 高城と付き合いだして、もうすぐひと月になる。
 日曜日は決まってセックスをする。生活リズムが異なる為、ゆっくり会えるのが互いの休みが重なる日曜日しかないからだ。

 必ずセックスという流れになってしまうのは、他ならぬ龍二自身が抑えられないせいである。
 会えばセックスばかりだと文句を言う高城も、結局は我儘を聞いてくれる。それを分かっているから龍二も甘えてしまう。

 高城も龍二も、自分の我儘は大抵通るというのを分かっているので、そういうところがタチが悪いと思う。互いにどこまでが許される範囲であるかということを熟知している為、悪く言えば弱みを握られているようなものだ。

 そして、高城が土曜日出勤でない今日は、龍二の仕事帰りに合わせて朝から高城が部屋に来ていた。
 龍二は寝るよりもまず、一週間ぶりの高城の体を味わっているというわけだ。

「ん……っ、あ……っ」

 シーツに頭を埋めるように、高城の声が絶え絶えに漏れる。高く突き出された尻に自身を打ち込み、龍二は全く日に焼けていない尻を激しく揺すった。

「んっ、うっ。あ……あっ」
 高城自身の先端からは、雫が零れていた。さっきまでそこも弄っていたのだが、すでに後ろだけでも感じるまでに、高城の体は龍二によって変えられていた。

「先輩……! 俺、もうイキそう……っ」
 最後にさらに激しく腰を打ち付けて、龍二は高城の暖かな肉に包まれて達した。

 長く続いた激しい行為に、高城はくったりとシーツに沈んだ。龍二は高城から自身を引き抜いた。高城を背中から抱き締めながら一緒にベッドに体重を預けると、高城自身に手を伸ばす。

 あまりに気持ちが良くて、一人で達してしまった。

 すでに二度もイカされている高城にしてみればもう十分だったかもしれないが、やはり最後に高城の気持ちよくなる姿を見て終わりにしないと気が済まない。
 龍二は高城を背中から包むように抱き締め、足を絡ませながら高城の耳朶を優しく噛み、胸とまだ硬さの残る高城自身に指で愛を囁いた。

「や、も……っ、終わ……っあ、っぁ」
 高城は龍二に包まれながら体を震わせた。高城を扱く指先に、濡れた感触を得た。

 セックスをしている時の高城はとても可愛い。

 昔は憧れていたからとてもカッコよく見えて、大学でもその気持ちは変わらなかった。龍二の見た目が男らしく変わると共に、高城の態度は以前のようにただ龍二を可愛いがるものではなくなり、ちゃんと男として扱ってくれるようになっていた。龍二の背が伸びて成長したせいもあったかもしれないが、その頃から高城に対し、なんとなく可愛いと思う気持ちが加味されてきたのだ。
 だが、セックスでこんなに可愛く変貌してしまうだなんて、もっと早くに知りたかった。

「先輩、好きですぅぅ」
 無性にぎゅっと抱き締めたくなり、龍二は全身で包み込んだ高城の体をさらに抱き締めた。

「なんだよ、うっとうしい!」
 絡んだ腕や足を引き剥がすように、腕の中の高城が暴れる。さっきまで可愛い声を上げていた高城が、現実を知らしめるような低い声に変わる。

「そんな可愛く呼んでも似合わないからな。いいから、お前はとっとと寝ろ」
「……はい」

 首だけを少し振り返らせた高城に返事すると、龍二は目を閉じた。それでも高城に絡ませた腕をそのままにしていると、高城が小さくぼやく声を聞いた。けれどそのまま高城が体を動かすことはなく、結局は何だかんだ言いながらも龍二のしたいようにさせてくれていることに、思わず口元が緩んだ。
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