Nature's Girlfriend

古波蔵くう

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Episode.2

〈4〉買い物

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 午前4時。俺はユニットバスの便器の蓋を閉じて、中学のジャージを置いて
『これ着て』
と。置き手紙を書いといた。俺は小窓を見る。まだ雷雨が降っていた。数分後、乙桜が風呂から上がった。
「上がりました」
乙桜が報告する。
「俺は源侑也だ……」
俺は自己紹介した。俺はジャージ姿の乙桜を見る。すると、ジャージのズボンの裾から、緑色のものがはみ出ていた。葉っぱみたいな。
「乙桜、嫌じゃないなら裾……めくってくれない?」
俺は乙桜が嫌がると思ったが、乙桜は易々とめくってくれた。乙桜の足には無数の葉っぱが生えていた。
「直に生えているのか?」
俺は乙桜の足に生えている葉っぱを1枚引っ張ると
「痛い!」
乙桜が痛みを訴えた。
「済まない……」
俺は謝罪する。
《服と、下着と、足の葉っぱを隠すためのタイツも必要だな……貯金足りるかな?》
俺は招き猫の貯金を確認する。
「8万円か……」
俺は不安に駆られた。
 実恋高等学校1年クラス(2学期最終日)。俺は睡魔と不安で授業の内容一言一句頭に入らなかった。ちなみにこの日は、徒然草の授業だったみたいだ。
 下校時、朝家団地。俺は悩みを抱えながら帰宅すると、瑞大さんが裸エプロン姿で、掃き掃除をしていた。俺に気づくと表情を伺って居た。
「侑也さん?何か悩んでいますか?」
瑞大さんの困った顔も美しい。
「実は、急遽中学の女友達が泊まりに来たんだけど、着替えをどうしようか悩んでいたんです……来月から転校もするし……」
俺は、乙桜を学校に通わせようとも考えていた。ちなみに、俺が女友達と言ったのは
《自然の世界から来たと言っても、信じないだろう》
と。思ったからだ。
「なんなら、私のモノを少し貸しましょうか?合うかわかりませんが……」
瑞大さんは、服を何着か貸してくれるみたいだ。
《俺は瑞大さんが裸エプロン以外の姿で、外に出たの、見たこと無いんだが……》
俺はせっかく貸してくれならと思い
「お願いします」
と。答えた。俺は自分の号室に入る。
「お帰りなさい、侑也さん」
乙桜が出迎えてくれた。俺は乙桜に挨拶を返す。
「ただいま」
と。頭では
《服を買う羽目は無くなったが、問題は下着だな……流石に下着を瑞大さんが貸してくれるわけ無いし……そもそも持っているのかも不明だし》
俺は財布を握りしめる。
「乙桜、必要なもの買いに行くぞ……」
俺は乙桜を連れて、大型ショッピングルームに向かった。
 大型ショッピングルーム2階、女性下着店。俺は乙桜にお金を渡し、店近くのベンチに腰を下ろし、スマホをいじるフリをしながら、乙桜を監視していた。すると、突然乙桜が両手を広げ立っていた。俺には、乙桜が草花や木が生い茂る森で、風を感じているように見えた。数分後に、乙桜は下着を購入した。そして、俺の元に戻ってきた。
「店の中で何してたの?」
俺が問うと
「『自然の声』を使いました……」
乙桜が答えた。俺はいくら存在しない女の子(妄想彼女)を書いたとしても、超能力を付けたりしない。
「え?」
俺は首を傾げる。
「木、風、草花は私にヒントをくれます……そこから、私は答えを導き出します」
と。乙桜は能力を説明した。
「そうか、次は足の葉っぱ隠すやつ買うぞ……」
俺は乙桜の手を引く。
 同じく2階。百均。俺は乙桜にお金を渡し、店近くのベンチに腰を下ろす。すると、乙桜はまた自然の声を聞き黒いタイツを購入した。
「買うもの買ったから帰るぞ……」
俺は乙桜を連れて、帰宅した。
 朝家団地。俺が帰ってくると、瑞大さんと会った。
「侑也さん、出かけてなさったの?」
瑞大さんは、相変わらず裸エプロン姿だった。
「はい、少し必要なものがあったので……」
俺は流石に『下着を買いに行った』なんて言えなかった。
「あ!そう言えば、服を貸す予定でしたね!」
瑞大さんは、自分の部屋に入る。俺と乙桜に背を向けた時、俺は乙桜の目を隠した。瑞大さんの尻を見せたくなかったからだ。
 数分後。瑞大さんは、紙袋と大きな箱をくれた。箱の中には、実恋高等学校の制服と体操着、ジャージが入っていた。
「制服後から買おうとしていたので、有り難いです……」
俺は頭を下げる。
「名前の刺繍は、制服店に行ってね!」
俺は乙桜を連れて、部屋に向かった。
「さっきの人は?」
乙桜が聞く。
「大家さんだよ」
俺は答える。すると、乙桜は目を見開く。
「嘘⁉︎看板娘かと思った」
乙桜は驚いていた。
「俺も初めて会った時、同じこと思ったさ……」
俺も同じこと思ったと、伝えた。
 源家。俺はクローゼットに入る。乙桜が今、着替えているから。俺がスマホを見ていると、乙桜がクローゼット越しに話しかけた。
「下着もタイツも穿くの?」
と。
「当たり前だ……」
俺は当たり前と答えた。
 数10分後。
ーーコンコン
乙桜が服を着替え終えたみたいだ。俺は、クローゼットを開ける。瑞大さんから貰った制服はサイズぴったりだった。
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