ねぇ…私じゃダメですか?

アイネ

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真っ赤なキミと真っ黒な僕の話

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「本当にその大学でいいの?」


「…ユミと離れ離れになるの、嫌じゃないの?」



「…」



リョウさんの言葉に、しばらく僕は何も言えなかった


僕は志望する大学に行きたい

だって、第一志望なのだから

そこに行くために一生懸命勉強してきたのだから


でも…

ユミさんやリョウさんとも離れたくない…


「……」


僕は…


どうしたいのだろう…

どうしたらいいのだろう…



「リョウさん…」



「僕は…」


「僕は…っ」



その時だった

大きな音を立てて、閉ざされていた扉が空いたのだ



「あっ、二人ともやっぱり屋上にいた」


「「!」」



屋上にユミさんがやって来たのだ



ユミさんは慌ただしく「もう下校時刻過ぎてるよ」と僕らの方に駆け寄ってくる


そして、腰掛けていた僕らの手を引いて、半ば無理やり立ち上がらせる



…手のひら、あったかい

なんて思ってると、ユミさんは僕らを見てニヤリと微笑んたんだ



「あのさ、今日三人で一緒に帰らない?」



そう言って微笑むユミさんの顔が、夕焼けの赤に染まった


光に照らされた笑顔がものすごく眩しく見えた


綺麗に見えた


儚く見えた



夕焼けのせいかな?

それとも…



「ほら、二人とも早く!先行っちゃうよ!」

「…うん」


ユミさんはそう言ってスカートを翻すと屋上を後にした

僕はただそっと、ユミさんの背中を黙って見つめていた


「なぁ」

「…?」


ユミさんの背中が完全に見えなくなったあと、リョウさんが僕の傍でそっと囁いたんだ


「俺、卒業する前にユミに告白しようと思う」

「………え?」



一瞬頭が真っ白になる

思考がフリーズする



「…」

「…」



「好き…なんですか?ユミさんのこと」

「ん、ずっと前から、好きだった」



即答だった

一切の迷いも見えなかった



「…」

「…」



「そっか…」

「そうだったんですね」



僕はなんの疑問もなくすんなりと受け入れていた

納得していた

だって、お似合いだったから



「…」



二人は僕と出会う前からの仲らしい

だからきっと、二人の思い出、たくさんある

僕の知らない二人の時間がたくさんあるんだ



僕の入り込む隙間なんて、どこにもないんだ



「…応援、してます」



僕は、そう言って笑った

ちゃんと、笑えていたかな



「ありがとな、じゃあ、俺、先に行ってるから」



そう言ってリョウさんは屋上を後にする

僕は屋上にひとりぼっちになった



「…」



真っ赤だった空はだんだんと色を失い暗くなっていく

周りはだんだんと黒に染まっていき、僕を余計孤独にさせた



あぁ…なんで…


どうして…




こんなに胸が痛むのだろう


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